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タイトルタイトル: 「瀕死の兵士にハエがたかる」 番組名番組名: [証言記録 兵士たちの戦争] ガダルカナル島 最後の部隊 繰り返された失敗 ~名古屋・歩兵第228連隊~
名前名前: 榊原 義一さん(名古屋・歩兵第228連隊 戦地戦地: ガダルカナル島  収録年月日収録年月日: 2009年6月23日

チャプター

[1]1 チャプター1 ガダルカナル島へ  02:48
[2]2 チャプター2 奪われた糧まつ  02:36
[3]3 チャプター3 砲撃  02:02
[4]4 チャプター4 尽きていく食糧  04:31
[5]5 チャプター5 死に近づいていく兵士たち  04:00
[6]6 チャプター6 「餓島」  03:21
[7]7 チャプター7 戦友の死  03:55
[8]8 チャプター8 届かなかった撤退命令  03:15
[9]9 チャプター9 突撃命令  06:20
[10]10 チャプター10 突撃を予測していた米軍  07:17
[11]11 チャプター11 捕虜  04:02
[12]12 チャプター12 戦場で生死を分けたのは何だったのか  02:49

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駆逐艦で上陸してね。その時に海軍さんがね、にぎり飯を2個くれたよね。これと、それから自分ら個人個人の食糧がまあ、雑嚢(のう)って、こう革ばみたいな袋へ入れたり背嚢に入れたりね。

俺、体格よかったもんね。実際自慢するじゃないけどね。隊長、俺より重かったけど、俺もね、80キロぐらいあって、まあ元々力あったほうだったから。ほいで大きなやつを背負って、ほいで隊長の分と俺の分とそこへ食糧を入れて。ほいで上陸してね、まあ手渡しでこう食糧、駆逐艦から舟艇の大発みたいな小舟で上陸してね、送って。ほいで案内に来とった兵隊が、あの爆撃の大きな穴があったよね、この穴の中に入れなさいっていうもんだ。そこらに置いてもし空襲受けると吹っ飛んじゃうって話で。

哨戒機が飛んで来て、照明弾をバッ、バッ、ババッと落とすんだよ。そうするともう、瞬間昼中みたいに明るくなっちゃうんだって。ほだから、その時は、絶対動くんじゃないと。

もし敵の目に入ると、もうその辺を、もう集中的に射撃を受けちゃうんだ。ほなんだ、この辺のヤシの木はもう鉄砲の弾の跡だらけだったね。
それで、そうこうしとるうちに、だいたい全部降ろしたかどうか知らんけど、荷物降ろして時間が来たんで、「時間が来た」ってことで、(自分たちを乗せてきた海軍の)駆逐艦すぐ帰っちゃったね。そうしとったらやっぱり哨戒機が飛んできた。
ワーン。そいで敵の探照灯が、あれっと。探照灯が動きが活発に。そしてそのうちに照明弾がパッパッパッってやられた。いや、さっきの話の照明弾だわ。もうどこにおっても絶対動けん。みんなじーっ止まっとる、ヤシの木陰。木陰って木の蔭だね、木の蔭ジーッとへばりついていて。今度、照明弾がね、またや、あと点いとるだ。あれがシャアーと、もう昼中ぐらい明るくなっちゃってね。

下士官だと思ったけどね、隊長のところへ一人の人間がやって来てね。今、あの前線でね敵の逆襲を受けてね、命令が来たわけ。ほいでただ「上陸した新鋭部隊はただちに応援に駆けつけよ」って命令が来とる。隊長のところへそう言ってきやんの。へえーって・・で隊長、まあ隊長から離れちゃいかんもんだからね。ああそうか。ほいで隊長はその糧まつのところへ何人か知らんけど、番しとる兵隊を置いて。ほいであと、とにかくこういう命令だから、現地に出発するで、持てるだけの食糧持てっちゅうんだ。

このぐらいの南京袋へ米が入ってね。ほいで、それをなんとかして持っていこうってことになって。ほいでおら、いくらなんでも大隊長と2人も載らんかったけど、まあ1個とにかく載せてね、それで出発したんやね。
ほいで、ジャングルのとこもあったど、まあだいたい海岸線、ヤシの木のあるさを。暗がりだもんだから道が分からへんだね。まあともかく前のやつの後を、こう、はぐれんようにしてついて行って。ほいで夜光虫をつけるといいだろうって。夜光虫がそこら辺いっぱい。木のくさったようなんかね。あいつを背嚢のここへつけよって命令で、なんとかして取ってこうつけて。ほしたらそれを見ながら、それであとをついてね。

稲垣大隊長が「一線からこういうこと(命令)があるって、まあ馳せ着きました」とかなんとか言っとったからね。「うーん、そんな命令は出しておらん。いや、実はな、嘘を言ってね、あの上陸した兵隊を移動させてその間にその持って来た、お前らが持ってきた食料をね、ぶんどる作戦なんだ」と。

Q:実際食べ物は盗られたんですか。

ああ、全部盗られちゃった。

そしたらもう何にもなかったの。ほいで番しとった兵隊もおれへんかったの。こういう報告は受けたね。

向こうはあんた、もういっぱいあるだもんね、弾。ほうだもんでジャンジャンジャンジャン撃つと。もうこっちの陣地やなんかもう無茶苦茶になっちゃう。

まあ、例えば大砲のあった地点なんか、大砲が吹っ飛んじゃう。陣地がもうがらっと変わっちゃうぐらい。

おらの陣地ね、あのいっさいの陣地。一番、ガ島の一番大きなのがね、アウステン山の陣地について1週間か10日くらい、1週間ぐらいやったかな、10日ぐらい居たんやかな。何しろね、行った当時はね、こんな大きなもう木がこうあったりね。それからまあ、こんなようなツルがだーっとあって、まあ茂っておったとこなんか、昼中でもなんか薄暗いような日の当たんないようなとこだったよね、陣地が。ほいつがあんた、あの、あれ確か艦砲射撃やなかったかと思うけど、はっきり分からんけどね、とにかく陣地撃たれちゃったんよ。1時間ぐらい。最初ちょっと勘定してたけども、しまいには勘定できんで、まあ壕ん中じっとしとったけどね。まあ、きっと千発ぐらい撃たれたんじゃない。

砲撃が終わって外へ出てみたら、「やい、これどうなっちゃったの?」って。陣地がもうほんとうに。

もうその1時間ぐらいの射撃で陣地がころっと変わっちゃった。ね、明るくなっちゃった。そのぐらいの物量をやつらはこう使うわけね。日本なんか、あんた知れとるじゃん。あんなんちょっとやりゃ、そのお釣りが恐ろしくて、むしろ撃たんでくれた方がええかも。

ビンロウジュっていう、まあ、こんな太い頭は切れへんから。ほいでまあ、これぐらいだったね、ツゥーっといってクーっと曲げるとね。ほいでこっちからいって、帯剣でピッピッピッと切るとね、ポロンと落ちる。ああ、やれやれと。そういうのを集めるのが一番早い。それからまあ、アリの巣とかね、ああいうのはまあ下から生えとるのね。ツルからこうやって、こうやって引っ張ると、ポトンと落ちてくれるとありがたーいってね、なもんでね。まあ骨が折れたね、あれもね。
それでまあ、ちょっと食べれそうだとね、「これはどうでしょう」ってね。「いやいや渋いな、これー」っていうようなもんが多いんやね、なんかね。
それから、上見たり横見たり。下にトカゲがおるからね。トカゲ速いんだよね。うん、それでもうしょっちゅう、こう、このぐらいのムチを持ってね、「やっやっ、ちょっ」。上手なんだよ、それが狙いどおり。そいで、ヤアーとちょっとこうやってね。あれが蛋白源でね。最初たくさんおったけどね、まあしまいごろにはめったに見かけんこって。そいで、ある時あんた、大きな1メーター50くらいのね、なんていうのか知らないけど、まあトカゲの親玉みないな奴がおってね。ほいで、あいつひとつ、一発やるとずいぶんこれは食べれると思ってね、はよー隊長のところ飛んで行ってね。あそこにこういうもんがおるが、あれはバーンってやって捕らえたらずいぶん助かるよって言ったらね、隊長に怒られちゃってね。「だめだ」ってね。「どうしてですか」って言ったら、「弾が欲しいですか」って言ったら、「そうじゃない。俺達はね、戦争やりに来たんじゃないんだ。現在地を死守せよって命令で来とるんだから。もしこっちが、まあほんなバーンってやったら、絶対敵の耳に入る」と。そうするとそのお釣りがじゃんじゃんと、まあたとえば迫撃砲とかでね。ほいで、敵もあっこで銃声がしたらなんだろうとかね、「敵の関心をかうような行為は絶対いかん」。最初のうちだな、俺怒られちゃったよ。

まあ食糧はまあ、たまたま来よったよね。たまたま。しょっちゅうっていうわけにはいかんけどが、食糧受領に兵隊が出よってね。あの、決まっては来やへんわけね。ある時は大変、大変とはないけど、ある時はわずか来る。ある時はまあまあ、そんな十分なんていっぺんもないもんね。

で、ガ島に上陸して満腹感を得たことは一回もないね。もう上陸地点からずーっと節約節約。いかに節約を上手に行うかということに頭がもういっぱいなっちゃう。ほういう状態やった。

ほんだけど、一線へ行ったらまあ、それこそまあ食糧なんてまあ、えらい縁遠くなっちゃうね。うん、みんな近くのものは取りつくしちゃうから。それで探しに行くっていってもお互い任務があるから、自由はあらへんから。食べたくても取るもんも取れず、まあ要するに痩せていくより仕方ないかな。それから痩せたからっていって誰も保護もしてくれへんし、任務の命令は遠慮なしに来るしね。「お前、今日あそこへ行け」。ほんだでみんなあの、まあ四苦八苦っていうのだかな。まあ口では言いようがない状態だね。まあ地獄の手前でうろうろしとると言った方が早いかな。

脚気ね。今はないね。そういう聞いたこともない。脚気ってこう足が腫れてだるーなって、脚気とかね、それから変なもの食べちゃうからどうしても、胃が悪なったりね。それから、まあ肺病じゃないかと思う顔が青白いなってきてね、肺結核とかああいうのがもう、じゃないか分からんよ。肺病みたいな、要するに栄養失調っていうのかな、そういうのが出てね。ほいでそういう病気が出やるとね、進行が早いじゃんね。栄養取ってないから。もう2~3日でガタガタ弱わうなっちゃうよね。ほんだもんだ、病院っていったって、薬もとられちゃったしね、上陸地点で。まあ衛生兵のことはよく分からんけどが。

まあほいだで、病気にかかったらまず、近々死ぬって言うほうが必然でね。病気になったら、回復に向かうってことは絶対ないよね。かかったら最後。もう短期間で悪くなって死を迎える。そういう状態やね。いや、かわいそうだよ。

けがするとまず治らんね。ほいで化膿しちゃうじゃん、すぐ。もう早いんだ、またその化膿がね。要するにね、そういう我々行く前からその戦場は地獄だもんね。きっと死骸はそこら中にいけてあると思うがよ。そうするとハエが多くてね。もうなんかちょっと匂いがするもんが、ハエがまずウォンウォンと飛んでくるのね。ほんで怪我してもね、まず怪我して、傷口に包帯するまでにハエがたかるじゃんね。

まあ三角巾やっとっても血がにじんでくると、ハエがたかってきてね。ほいでハエが三角巾の切り口の血の上、卵を産んできよるよね。ほんで知らんどると、1日か2日ではげちゃうでしょ。ほいで夜寝とるうちに、ざわざわと中へ入り込んでさ。それで傷口入っちゃって傷口が腐っちゃって。まず傷したら終わりやね。またあそこのね、ハエ、ハエとアリ。ハエの多かったこと、いろんな種類のハエが。多いわけだよね、死骸がどこにあるかさえ、一応は埋めてもね、土の上にハエがいっぱいおると分かるわな。ほんな深く埋めてへんしね。そりゃまあ、いやえらい地獄へ来たなーと思ったよ、わしはね。上陸して。
上陸するとすぐ、なんかそんなような感じがしたな。これほんとの、これ、ガ島と地獄とね。なんだか、人間のおれるところじゃないなっていうような予感はしとったよね。絶えず。ここはまあ、たぶんここで餓死か戦死かいずれか近いうちになるだろうと予感はまあ絶えず毎日持っとったね。だけど、恐ろしさとかそういうこと感じなんだよ。まあみんな一緒だでいいわとかね、要するに諦めムードっちゅうのだかな。なんかそんなような一種の諦めムードちゅうのだろうね。

食べるもん食べんと体力もみるみる落ちてくやんね。ほいで、病気になりゃもう絶対治らん。怪我すれば治らん。食べ物はない。治療もしてくれん。ほいで餓っていうもんが、“食”へんに“我”。俺、ほんときに、ああこれ餓島ってやこの字を使うといいなと思って、あのパイプに字彫ったよね。餓の島って書いて、「餓島」と書いたよ。俺。

あるやつなんかね、ハエをたたいてね、ハエを食ったやつもいたもんな。うん、動けん人やったね。動けんどるとハエがいっぱいたかってくるやん。叩くだろう。ほいで食っちまう。

とにかく口がさみしいんやね。さりとて自分の体が動けんから何でもいいから口入れたかったって感覚じゃないかね。まあよう分からんね、あのぐらいになると。まあきっと、人間の普通の状態じゃないわけね。餓鬼って言うだから、ああいうの餓鬼っていうんやないかな。

ほれである時、歩いとってさ、兵隊が休んどるじゃね。何かやっとるじゃん。「お前何食べとるだ」。そしたら、このここへ薬盒(やくごう)っていう弾入れる薬盒っていうのが持っとるね。ほれで「これだ」って。「何んや」って。「元をただせば、これは牛だ」って言うだ。皮だからね。牛の牛皮だもんね。まあ馬の皮か牛皮か、よう分からんけど、ともかくこれは動物のってことだな。ほんだから噛むと、噛んどると唾が出るし、この牛の肉を感じ・・噛んどると思えば、なんか楽しいっていうだか、紛れるっつうだか、そんなことやったことある。
それ真似する気にもなれなんだけどね、そういうのがあったね。
そんなのいっぺん出くわしただけでようなかったけどね。あんまり口動かしてやんので、なんだそりゃっと思ってさ。

なんでも、なんでも口もってきゃよかったっていうか、なんていうか、ちょうど赤ん坊が生まれてね、そこにあるものを口持っていっちゃうっていう時期があるだろう。あんな感覚やねえかな。なんにも分からんっていう感覚。

まあ俺、食糧集めやっとったけどね。まあとり尽くした。食べれる物は食べつくした。すべてやり遂げた。どうしようもなかった。まあそんな表現やない。ないものはとれんね、実際に。

隊長のすぐ下でハヤシって言うのがね、これは軍医さんのね、コマツ軍医って言って軍医さんの当番やった。俺は大隊長の当番。ほいで2人でその壕に入っていてね。それであの俺いっぺんそこでマラリアにかかっちゃってね。ほいでハヤシが・・いやいや俺は、マラリアが出ちゃったっつてね、ポッポポッポ熱が出て。それでハヤシがね、そうか、それじゃって言ってね、もう一生懸命冷やしてくれて俺治った。
それからちょっとしばらくするとね、こんどハヤシが寝込んじゃったよね。

それである朝、ひょっと行ったら、どうも様子がおかしいやんね。「いや、ハヤシ!」。目をパチパチー。こう瞬きするんだけど目を開けんのね。これはおかしいと思ってね。それから軍医さん飛んでいった。そしたら軍医さん、「そうか」って、やっぱり急いで来てね。ほいで20分か30分か、よう分からんけど、軍医さん出て来へんかった。それでおらまあ、普通だったら食糧取りいかんならんだけども、そんな状態なもんだから俺も表で待っとった。そしたら、軍医さんが出てきて、こうやって頭振って。まあ駄目だってことだね。ほいで、軍医さん出てきて行っちゃった。ほいで俺すぐ入っていったらね、「ハヤシ・・」ってこうやって手を合わせた。ああ、とうとう死んじゃったな。ほいで一回も、かゆいもなんも愚痴をいっぺんも聞かんかったよね。うん、これは寝込んでしまいごろ。まあ話、最初のうちはね「しっかりせえよ」。「うんうん」っていうぐらいで。もうなっちゅったらいいからな。眠るがごとくっつうか、自然消滅ってゆうだかね。まあ消滅ってゆうとちょっとおかしいけどね。あれが本当の自然死ってゆうのかな、自然に死んじゃうじゃんね。
んだもんだ、もっとも、慣れとるせいかね、兵隊で死ぬ人をいちいち同情をしとったらきりがないよね。ああ彼も逝っちゃったかと思うだけで、さほど悲しいとか可哀そうだとかそういう感情が出んじゃんね。まあ我々ちょっとなんか、ちょっと人間的におかしいけどね。しょっちゅうああいう話を聞き見るし、人間がなんかこう、なんちゅうかな、自然とそういう方向に向いて行っちゃうっていうか、一つの諦めが強くなるっつうだか、そのうちにもうそうなるかという諦めが湧いてくるっていうんだかね。

あまり申し訳ない話だけど。ほんでハヤシをなんとかしていけてやりたいが、

かづいて歩けへんもんね、俺だって。引きづって。途中のこう広場になって、そこの蔭にずっとこう連れていってね。そこいくと落ち葉がいっぱいあってね、落ち葉を一生懸命かき集めて、そうしてハエがたからんだろうと思ってね、まあほやけ、葬ってやったつもりでおるんだけどね。

全然、もう敵に囲まれちゃったもの。それで、一番最初、今の連絡の稜線の、ここを最初封鎖されちゃったのよ。敵が感づいたんやね。後方と断ち切れということじゃない。だから、ここのこの道、これは工兵隊を呼んで作った道なんだよね。道と言っても、そんな、あんたたちが想像するような道じゃないよ。山の岩だらけのところを何となく、あれはツルがこうなっているものだから、ツルを切って開いて、それでちょっとした水の流れたところがあったものだから、橋を作って、こういう道なんだね。それだものだから、距離で、直線距離だったらものすごく近いと思うよ。直線距離なら、こうなって急なところだもので、ここからこれで測ったらほんのわずかだと思うけど、あの当時の足で30分、40分かかるんだね。

Q:撤退の命令は榊原さんの陣地には届いたんですか。

届かない。うちの陣地だけ。下まで来ておるんだけど、同じ稲垣隊の下に予備隊というのがあって、それでアウステン山のふもとに本隊がある。それで下まではちょっと遅まきながら、ちょうど話に聞くと、おれたちが夜襲をやった日ぐらいに下の部隊までは命令が来たらしいね。ニワ兵長とか、あれらは下の部隊だったのね。あれの本をおれは読んで、下の部隊までは命令が来たんだなと。それで、おれたちに連絡しようと思っても、オダキという副官が、何とかして連絡しようと思って骨を折ったらしいけど、敵に囲まれちゃっておるからどうしても連絡がつかんで、それで帰って行っちゃったんだね、連絡できんなりにしちゃったんだよね。

それはガダルカナルで一番ひどかったのがおれのところの隊だもんね。最後まで置き去りをくっちゃって。それで、もう大隊長が思いきられたおかげで、何人か知らんけどわずかの兵隊だけは、おれもその1人だけどね、運の強い人間ばかり、わずかな人間が生きれたものね。隊長には感謝せないかんわな。

(隊長が)「あと2~3日で手の打ちようがなくなってしまう。それで、みんなには昼と言わず夜と言わず苦労してここまで来たけど、もう手の打ちよう、施しようがなくなってしまうから、現在地を死守という命令をもらっておるけど、放棄することに決めた」と。

「われわれが参加できるのは102名。参加できない者には手りゅう弾を1個ずつ与えて、『最期、われわれが立ち去ったあとは、必ず敵が自分の近辺に来るから、そのときに有効に使え』と伝えよ」と。
それから指揮官あるいは下士官で、「重要な書類等があったら全部穴を掘って埋めよ」と。そのときに言われた「立つ鳥あとを濁さん」と。先のときに生きて虜囚の辱めを受けんというのは渡されたんだけど、だけど、各中隊でそれを話したか話さないかは、それは分からん問題だけどね、隊長はそれを言われたね。

隊長が壕の入口に来て、「おまえ、ちょっとここへ腰をおろせ、まあ」みたいなことで、隣に腰をおろして、「苦労するな」と、「ハハハ」と言った。「おまえにも心配かけたけどな、おまえは比較的元気だしな、今夜、夜襲をやるけど、何としてでも抜けて後方まで骨だけでもたどり着いて、稲垣決死隊の最期を何とかして後方に伝えてくれ」と。「これはおれの最後の命令だよな」と言われた。そして握手してもらった。「世話になったな、頑張れよ」と。わたしは泣けました。


大隊長は、死守という命令を自分から放棄しちゃったわけ、ね。要するに撤退命令が出たってこと知らんで死んじゃったやんね。ほいで隊長の心にすると、その決定をするにはね、もう自分が死ぬよりしょうがないよね。それで最後、突撃をして、たとえ1人でも2人でも3人でもいいから助かるものなら助けてやって、俺は責任を負って死んでしまえばことは収まる。そういう気持ちで死なれたと思うんだよね。それでその死なれる時の心を察するとね、要するにね、すごい不名誉な話やね。それで俺とすると、ようかわいがってくれた隊長のその名誉をね、少しでも復活できるようなことだったら、今しゃべっておかないかんなと思ってよ。

それで、隊長が練った作戦が、「現地へ着いたら、まず着剣をせよ」、着剣というのは銃剣の先に剣をつけろと、剣をここへぶら下げておるね。それで、剣を銃へパッと差すと、まず着剣をせよと。そして、着いたところから、要するに散開したわけね、散ったわけね。それでどこへでも自分の所定位置へ着いたところからすぐに行動に入れと。というのは、鉄条挟を持ってきたから、鉄条網が何重か知らんけど張ってあるものだから、それをまず着いたらすぐに切れと。敵に気づかれると撃たれるに決まっているものだから、とにかく着いたらすぐに切れと。

だけど、敵のすぐ前。敵までどうだ25メーター、30メーター、手りゅう弾が届くので、これはよく分からんけど、30メーター足らずだと思うよ。

それで、鉄条鋏を持った人が杭と杭の中央へ進んで、それでポツンとハサミを入れて、こうやれというんだね。そうすると、プチン、バーッ、パーン、パーンと鉄条網が、鋼鉄製なものだから両方へ散ると、そこだけ進む道ができる。3重に張ってあると、3重、それをやらなならんだろう、それだからたくさんの鉄条鋏をあるだけ持ってこいと言ったんだ。

だけど、隊長が一生懸命練られた作戦だけど、そう思うとおりにいかなんだ。現地へ着くと敵は待っておったか待っておらんか、その辺は分からんけど、すぐ撃った。

わしらが現地へ大体散ったかなと思ったころに、バリバリバリバリ、もうものすごく撃たれた。また兵隊が着剣する間があったかなかったか、それは分からん。もうその撃たれようといったら、さっきもそう言ったように、ちょっとやると10発から15発、30発、50発と弾が出るから、それで鉄条網のあと1メーター50か2メーターぐらいのところにみんな伏せてね。ちょっとでも体を低く、低いところを探してこうやって体を下げて、それであごを道路へつけて。弾がピピピーッ、またそれだけ飛んでくると、何て言ったからいいかな、口では表現できんな。

それはどうしようもないと言ったらいいな、おる場がないけれども、ほんだけど行くところもない、立てば必ず弾が当たるね。動けば必ず当たる。それで伏せておるよりしょうがない。 それだけ撃たれると、弾は必ずだれかに当たるわね。それで、悲鳴がいっぱい聞こえるじゃん。黙って死ぬなんてしんどいのか知らんけれども、ギャーッと、ウエッとか、要するに悲鳴だね。あんな右やら左で悲鳴がいっぱい聞こえる。もう何しろ胸が痛いというか、頭に響くというか、大体耳が、30メートルぐらいで撃たれると耳が痛いね。われわれは今までずいぶん戦闘をやってきて、敵の銃口が自分のほうに向いたときには、すごい音が違うんだ。機銃掃射なんかでも何回か、2回かやられたことがある。えらい音がする。それだものだから、30メートルぐらいで撃たれると、こうやりながら耳を押さえたくなるんだ。弾は目には見えんけど、シューッって、それは生きた心地がないというのはあのことだな。弾の当たるのを待っておると言うほうがいいかもしれんけど。そんだけど、できたら敵の弾に当たりたくないもので、一生懸命こうやってがまんして地面にへばりついている。

今度は手りゅう弾が、弾は減ったけど手りゅう弾が飛んでくいるようになった。手りゅう弾が飛んできたら、これは頭の上から降ってくるものね。それで、あごはひっつけておったけど、鉄帽をかぶっておると手りゅう弾が見えへんじゃ。ややあみだにかぶって、それで目を右にやったり左にやったりして、さっきは 寝ぶっとってもよかったけど、今度は手りゅう弾を一生懸命こうやって見ておった。

隊長は要するに時を見計らって、要するに弾が減って手りゅう弾に切り替わったよね。手りゅう弾はどうしようもないじゃん、上から来るものだから。それで、待っていれば手りゅう弾はあちこちに落ちる。今度は伏せておるやつがまた死んじゃうから、ある程度、早いところ突っ込まないと何に来ておるか分からんから。
それで、要するに、これは隊長の腹だけれども、時を見計らってか、突撃命令を出したんや。そんだけど、ろくに突っ込まへんじゃん。ということは、隊長の声がまだ弾が飛んでくるし、聞こえなんだからということなるけど、それでまたちょっと間を置いて、
今度は隊長は上半身を膝から立っちゃって、おれは見ておって、「あっ、姿勢が高い」なと思ったら、そうしたら今度は大きな声で、「突撃、進めー」と言った。今度は全部聞こえたらしいよ、大きな声をだし。今まではこうやっておると姿勢が低いものだから、大きな声も出んし、それから声が遮へいされちゃうから、今度はこうやったものだから声が響いて聞こえたらしいわ。そうしたら、左のほう、これは6中隊がワーッと突っ込んだ。あっ、突っ込んだなと思ったわけ。
そうしたら隊長が「ワーッ」と言って倒れちゃったよね。ワーッという声が聞こえたものだから、それでおれはぐるっと体をひと回り巻いて、三角巾をおれは4つか5つ持っていたから出して、「どこをやられたんですか」と言ったら、「おれはいい、おれはいい、6へ行け、早く行け」と言って、おれを押しつけるじゃん。
「ハッハッ」と言っておったら、おれは伏せて、こうやって隊長を・・困ったなと思っておったときに、何かおれの前で人影が動くのを感じたの。そうしておったら、何かおれの前まで来たときに、ギャーッという声が聞こえたの。えっと思って、ほんとの瞬間にバーンとおれの、おれは頭に鉄帽をかぶっていたけど、首筋から背中からお尻のへんまで生温かい、要するに血だね。彼がおれのちょうど、鉄条網がまだあるものだから、鉄条網とおれが伏せておるこの中間に来たときに弾に当たっちゃったんやな。それで、どこへ当たったかそれも分からんけど、ギャーッと言って、おれはその血を浴びて、ほんの瞬間の間で、こんなものは口でしゃべっておるんでなく瞬間。それで、彼はどういう状態で、すべて闇夜で分からんけど、おれの頭の上にクシャンと来たみたいだな。それで、おれは血を浴びてこうやっておったところへ、頭へピシャンと何かでたたかれたような感じで、おれは意識を失っちゃったよ。

気を失っておるものだから何も分からんわけね。それで、何か最初、こう、こうなっていたわけね。何か最初地響きを感じたな、何か。あれ、足音がするなというような、頭がボーッとしちゃったから分からへんのだよね。何をやっておったんだろうな、おかしいな、寝ておった、待てよ、何をやっておるのだなと、一生懸命考えるけど分からへんのやね。おれは寝ておるのかな、夢かなと。それで、そうこうしておったら、何かガヤガヤと声が聞こえてきた。「えっ、何じゃこりゃ、英語じゃないか」と。あれ、待てよ、まだ戦闘をやっておったことが頭に浮んでこやしない、寝ておると思ったよね。何だ、アメリカ兵の夢かな、待てよ、何かおかしいなと思っておった。そのときに米兵が、おれはこうなっておると、腹の辺に足を突っ込んで、パーンと蹴ったというか、持ち上げたというか。それで、体が宙に浮いたじゃんね。それでハッと上向きになっちゃった。そのときに初めて目を開いたら、「あれ、しまった、おれは捕虜になっちゃった」。しまったと思ったけど、もうどうしようもないね。
それで、5人やったな。4人のやつがおれの手足を2つ下げて、下げちゃう。それで、下げて歩き出した。

それから、そこを下げられて通って、ジープの上に乗せられて、それで着ておるものが血だらけだから、きっとえらい重傷を負っていると思ったんやね。ピピピーッと全部取って素っ裸にされちゃったよ。それで、目が覚めた時分何か寒くてね。これはマラリア、昔、マラリアをやったことがあるんだよね。ガ島でもマラリア、みんなが出よったんや。それで、寒くて、おれは何で震えがきた。米兵がおそろしくて震えるというようなことはないし、何か寒いしおかしいなと思ったら、それで素っ裸にしちゃって、ジープの上に寝かせて、それでここら辺を治療してくれた。

それからおれはすぐその病院からほかへ移されたんやね。そうしたら、やっぱり天幕が張ってあって、そこは何人ぐらいおったかな、やっぱり20人以上、30人、20人以上おったと思うけどね。大きな水の袋がぶら下げてあって、それから食糧は何かあれは海軍のものじゃないかと思うけど、えらい大変山積みになって天幕がかぶせてあるわけね。その中にとらやの羊かんが入っておったんや。それで、おれはとらやの羊かんを知っておるから、東京都何とか書いてあったものね。だけどカビておった。それで、ほかのやつが「これはカビておるけど、皮をはがして、カビだけこうやってこすると、結構、うまいぞ」と言われたんだな。

こうやりながらね。♪~「東洋平和の為ならば 何の命が惜しかろを」~。
これが記憶に残る歌。まだほかにもこういう、要するに軍人が国のために死ぬのがあたりまえというような教育とともにその歌までも歌わすという。それだから、われわれのお国に対する心というものは、そうした繰り返しによって洗脳されちゃったのよ。それだから、ガダルカナルであれだけひどい境遇に陥っても愚痴一つ言わなんだね、だれも。聞いたことない。こんな・・ただ、喜んで死ぬというほどではなかったけど、歌はまだいくらもあるんだよ。♪~「夢に出てきた父上に 死んで帰れと励まされ 覚めてにらむは敵の空」~とね、こんな歌もあったしね。おれは歌が好きだからさ。

人間、それぞれ自分に運勢によって支配されてるよね。それはあんたたちにも分かるか。それで、おれはおれなりに、あるいは戦友は戦友なりに、その当時に生まれ、そしていろいろなことに激化し、そして自分が亡くなるまですべて運勢によって支配される。

だけど、勝手な考えと言えばそうだけど、そういうふうに考えにゃ、恨みとか遺恨とかいろいろなものが残るじゃん。残したからって、恨んだって、国のやった政策で、だれを恨む人もおらんから。

これはすべて運勢に支配されてこれはこうなっちゃったからしょうがない。要するにあきらめだ、おれは。ほかの人は違うか知らんよ。おれはそういうふうに判断した。一番あきらめが早い。運勢を利用せると、すべてがあきらめが簡単につく。

出来事の背景出来事の背景

【ガダルカナル島 最後の部隊 繰り返された失敗 ~名古屋・歩兵第228連隊~】

出来事の背景 写真半年間の戦闘で2万人もの犠牲を出し日本軍の大敗北に終わったガダルカナル島の戦い。名古屋歩兵第228連隊は、日本軍が三度に渡る総攻撃に敗れた後、最終段階に投入された。補給においても、戦力においても、緒戦段階に比べ遙かに不利になった状態で上陸させられた228連隊、2500人中、生還できたのはわずか300人だった。 
 
太平洋戦争開戦以来、攻勢を続けていた日本陸軍は、昭和17年8月にガダルカナル島で、米軍との初めての本格的な地上戦に突入。

日本軍は米軍を「すぐに勝てる弱腰の敵」と見ていたが、実は火力・兵力・戦略ともに日本軍を凌駕していた。作戦が失敗しても、戦訓の見直しをせず兵力の逐次投入を繰り返し、現地将校からの撤退の進言も軍司令部は無視。228連隊を待っていたのは、激しい米軍の集中攻撃と飢餓地獄だった。上陸から2ヶ月で、6割の兵士が命を落とした。

12月31日、ようやく大本営が「ガダルカナル撤退」を正式決定した後も、228連隊には更なる悲劇が待ち受けていた。「撤退命令」が前線に届くまでに16日を要し、その間に多くの兵士たちが命を落としたのだ。最後まで「撤退命令」が届かず、玉砕する大隊もあった。
さらに、餓死の恐怖に直面した兵士たちの中には、生きるために死体の肉に手を出したものもいた。飢えに苦しんだ陸軍将兵は、ガダルカナル島を「餓島」と呼ぶようになった。

ガダルカナル島に投入された日本軍、3万1000人のうち、戦闘による死者はおよそ5000人、1万5000人以上が飢えと病で命を落としたとみられる。

証言者プロフィール証言者プロフィール

1940年
12月、歩兵第6連隊に入隊
1941年
歩兵第228連隊に編入
1942年
ガダルカナル島に上陸
1943年
1月、突入攻撃を行った際に負傷、米軍の捕虜となる
1943年
ニュージーランド捕虜収容所に収容
1946年
復員、農業に従事

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ガダルカナル島

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