スーホーの白い馬

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scene 01 まずしいヒツジかいの少年

むかし、モンゴルの草原に、スーホーというまずしいヒツジかいの少年が、おばあさんと二人でくらしていました。スーホーの仕事(しごと)は、毎朝早くおきて、かっているたくさんのヒツジたちを、えさの草がある草原につれていくことでした。〔語り:木南晴夏(きなみ・はるか)さん〕

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scene 02 白い子馬との出会い

ある日のこと。スーホーが、もう日がくれるのに帰ってきません。おばあさんが心配(しんぱい)していると、何か白いものをだきかかえたスーホーが帰ってきました。それは、生まれたばかりの、雪のようにまっ白い子馬でした。「ひとりぼっちでたおれていたんだ。母馬もいなかったから、オオカミに食べられたらかわいそうだと思って、つれて帰ってきたんだよ」とスーホーがわけを話しました。そして、「おまえの名前は、ツァスにしよう」と言いました。「ツァス」というのは、モンゴル語で『雪』という意味(いみ)でした。

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scene 03 「ぼくとおまえは、ずっといっしょだよ」

子馬だったツァスは、うつくしい白馬にそだっていきました。スーホーとツァスはとてもなかよしで、スーホーが出かけるときはかならずツァスもついてくるのでした。ある夜のことです。けたたましい馬の鳴き声でスーホーは目をさましました。「ツァスの声だ。何があったんだ?!」。外へとびだしてみると、ツァスが大きなオオカミから大切なヒツジたちをまもろうと、ひっしにたたかっていたのです。スーホーはぼうをふりまわしてオオカミをおいはらうと、ツァスの首をだきしめてこう言いました。「ありがとう、ツァス。これからも、ぼくとおまえはずっといっしょだよ」。

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scene 04 王さまの競馬大会

ある年の春、王さまが競馬(けいば)の大会をひらく、という知らせがとどきました。1等(とう)になったら、おひめさまとけっこんできるというのです。「ツァスならきっと1等になるよ!」といわれ、スーホーも出ることにしました。いよいよスタートです。何十頭もの馬がいっせいに緑(みどり)の草原を走り出しました。はじめはうしろのほうを走っていた白い馬が、ぐんぐんとほかの馬をおいぬいていきました。スーホーがのったツァスです。もうおいつける馬は一頭もいません。白いたてがみをうつくしくなびかせて、風のようなはやさでゴールまでかけぬけていきました。

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scene 05 ツァスをとりあげられてしまった

ところが王さまは、まずしいみなりのスーホーを見るなり言いました。「おまえのようなみすぼらしいヒツジかいと、わがむすめをけっこんさせるわけにはいかん」。そして銀貨(ぎんか)を3まいなげてよこすと、「その白い馬をおいて、さっさと帰れ」と言いました。「ツァスはわたしのだいじな馬です。お金なんていりません。さあ、ツァス、帰ろう」とスーホーは答えました。「なに? わしにさからうのか。こいつに思い知らせてやれ!」。スーホーはおおぜいの家来(けらい)になぐられ、けとばされ、気をうしなってしまいました。ツァスはスーホーのほうをふりむきふりむき、手綱(たづな)を引かれていきました。

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scene 06 にげだしたツァス

すばらしい白馬ツァスを手に入れた王さまはごきげんでした。その日は白馬を客(きゃく)たちにじまんするために、酒(さか)もりをひらいていました。王さまがとくい顔でツァスにまたがったとたん、ツァスはとつぜんあばれだし、王さまをふりおとしました。ツァスは風のようにかけだします。「あの馬をつかまえろ! にげられるくらいならころしてしまえ!」。家来(けらい)たちのはなった矢が、何本もツァスにささります。それでもツァスは休むことなく、大すきなスーホーに会いたくて、ただただ走りつづけました。

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scene 07 ツァスはスーホーのうでの中で…

その夜、スーホーはあやしい物音(ものおと)で目をさましました。外に出てみると、赤い馬が立っていました。それは、血(ち)まみれになったツァスでした。「ツァス! 帰ってきてくれたんだね。こんな目にあいながら、本当に会いにきてくれたんだね!」。スーホーはツァスの体にささった矢をなきながらぬきました。「ツァス、しなないでおくれ。ツァス! ツァス!」。けれどもつぎの朝、ツァスはスーホーにだかれながらしんでしまいました。

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scene 08 ゆめにあらわれたツァス

スーホーは一日中なきつづけました。すると、なきつかれてねむってしまったスーホーのゆめの中に、ツァスがあらわれ、こう言いました。「どうかかなしまないでください。わたしの心はいつもあなたといっしょです。わたしのほねや皮(かわ)やしっぽで、楽器(がっき)を作ってください。そうすれば、わたしはいつまでも、あなたのそばにいられます」。

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scene 09 うつくしい音色の「馬頭琴」に

スーホーは何日もかけてその楽器(がっき)を作り上げました。スーホーがこの楽器をひくと、ツァスのいななきの声や、ツァスの走るひづめの音がしました。その音色(ねいろ)を聞くと、ツァスにのって草原をかけまわった楽しさや、ツァスとわかれたかなしさを思い出しました。スーホーは、ツァスがすぐそばにいるような気がしました。そして、その楽器のうつくしい音色は、モンゴルの草原にくらすすべての人々の心をいやし、なぐさめてくれるのでした。これが、モンゴルにつたわる楽器「馬頭琴(ばとうきん)」のおはなしです。