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scene 01イギリスとの結びつきが強かった国
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カンガルー、コアラ…。今回の舞台は、日本から飛行機でおよそ10時間。南半球のオーストラリアです。1770年、キャプテン・クックの上陸から主にイギリスの移民によって開拓が進められ、イギリスの植民地となりました。そのため街並みにはイギリスの影響が色濃く残っています。公用語は英語。国旗もイギリスと似ていて、お札にはイギリスのエリザベス女王が描かれています。オーストラリアとイギリスは強い結びつきがあるのです。しかし近年、アジア人が増え、異なる文化同士の交流が進み、多文化社会へと変化してきています。そこで今回の疑問、『なぜオーストラリアはアジアとの結びつきが強くなったの?』。

scene 02国土の3分の2が砂漠や荒地
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広大な大地が広がるオーストラリア。平原に見える大きな山は、オーストラリア先住民の聖地、ウルル。山のように見えますが、世界で2番目に大きいといわれる一枚岩です。あたり一面は見わたす限りの荒野。実は、オーストラリアの国土の3分の2は砂漠や荒地。気温は高く、乾燥し、人が住むのも植物を育てるのも厳しい大地です。そこで育てられたのが、羊。乾燥地帯でもよく育ち、環境適応能力の高い動物です。全土でおよそ7200万頭の羊が飼われていて、その数はオーストラリアの人口の3倍以上にもなります。

scene 03羊毛の輸出量が世界第1位
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羊を飼う理由は、毛。オーストラリアは羊毛の輸出量が世界第1位。羊毛は、1970年半ばころまでは主にイギリスへ輸出されていました。イギリスは毛織物が盛んな国。セーターはイギリス発祥といわれ、カーディガンに至っては、それを考案したカーディガン伯爵までいます。緯度が高く寒いイギリスでは、羊毛の需要が高かったのです。そんなオーストラリアとイギリスの貿易関係は、20世紀半ばまで緊密に続いていました。しかし、貿易相手国は今、1位中国、2位日本と、アジア圏に変わっています。なぜなのでしょう。

scene 04地理的に近いアジアとの貿易へ
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まず、地理上の「位置」から各国との関係を見てみましょう。南半球にあるオーストラリア。イギリスは地球のほぼ真裏と、かなり遠い国です。それでも、オーストラリアはかつてイギリスの植民地であったことから、遠い親戚のような関係が1973年まで続いていました。1973年…。それはイギリスのEC加盟です。イギリスは地理的に近いヨーロッパ諸国との経済の結びつきを強くしました。そこでオーストラリアも、地理的に近いアジアへ貿易をシフトしていきました。距離が近いと、物を輸送する時間やコストが少なくてすみます。そこでアジアとの貿易が増えていったのです。では、どんなものを輸出しているのでしょう。

scene 05鉱産資源が豊富
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オーストラリアの灼熱の大地を走る鉄道。車両は682両。全長はなんと7kmにも及びます。運んでいるのは鉄鉱石です。鉱産資源が豊富なオーストラリア。羊毛に代わって、今や鉄鉱石は輸出品の第1位。大規模な露天掘りで採掘された鉄鉱石は、車や家電、電子機器の工場がある日本や中国に輸出されています。そしてほかにも、アジアに輸出されているものがあります。

scene 06北半球と反対になる気候を生かした農作物
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それは…さくらんぼです。日本では6月に収穫されるさくらんぼ。一方、オーストラリアでは12月に収穫を迎えます。南半球のオーストラリアは季節が日本とほぼ反対。日本の春は、オーストラリアでは秋。季節がちょうど半年ずつずれることになります。そこで、北半球と反対になる気候を生かし、収穫期が重ならない農作物を作ってアジアの国々へ輸出しています。オーストラリアとアジア。距離が近いことがメリットとなり、結びつきが強くなるのです。

scene 07働く人の30%が移民
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次は、「労働人口」という見方から考えていきましょう。オーストラリアで2番目に人口が多いメルボルン。『世界で最も住みやすい都市』ランキング第1位に、7年連続で選ばれている人気の都市です。街にはベトナムコーヒーのスタンドがありました。オーナーがベトナム出身だそうです。実は、オーストラリアで働く人の30%が移民です。メルボルンの町には、100か国以上の国の人々が住んでいます。それにはこんな理由がありました…。

scene 08白豪主義からの脱却
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オーストラリアの国土面積は、日本のおよそ20倍と、とても広い国です。しかし人口は2500万人ほどと、日本のほぼ4分の1しかいません。国土の面積の割に、人口が少ないのです。さらにオーストラリアは、1970年代初めまで、ヨーロッパ以外の国からの移民を制限する「白豪(はくごう)主義」の政策をとり、閉鎖的な国でした。その結果、人口不足、労働者不足になりました。そこで、アジアから若くて優秀な移民を積極的に受け入れるようになりました。政府は、移民が暮らしやすいよう、多言語や多文化を尊重する支援を行ってきました。

scene 09移民への積極的な支援と経済成長
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その一つ、オーストラリア政府が運営するサービス「TIS」は、24時間対応の通訳サービスです。なんと160か国以上の言語に対応。しかも、かかるのは電話代のみの無料サービスです。さらに、学校では異文化理解のために英語以外の言語を積極的に教えています。日本の昔話を教える学校もあります。住みやすく、仕事があるオーストラリアに、近くのアジア諸国からたくさんの移民が渡ってきました。その結果、人口が減り続ける日本と比べ、オーストラリアの人口は右肩上がり。人が増えると、物が売れ、消費が増えます。そのためオーストラリアは、先進国のなかでは長期にわたる経済成長が続いています。

scene 10オセアニア州のほかの国は?
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今回の疑問、「なぜオーストラリアはアジアとの結びつきが強くなったの?」。「位置」や「労働人口」などさまざまな見方から、その理由が見えてきました。では、オセアニア州のほかの国々はどうなのでしょう。オーストラリアの隣国ニュージーランドにも羊がたくさんいます。でもその使いみちは…主にお肉。特に最近、サウジアラビアなど中近東で羊肉の需要が増え、人気があるそうです。なぜ羊の肉が中近東に輸出されるのでしょうか。みんなで調べてみましょう。

10min.ボックス  地理
なぜオーストラリアはアジアとの結びつきが強くなったの?~オセアニア州~
近年、アジアとの結びつきが強くなったオーストラリア。これまではイギリスとの結びつきが強かったが、なぜ変化したのか、「位置」や「労働人口」の「見方」をもとに探る。