体育…それは運動を経験(けいけん)することで、生涯(しょうがい)にわたってスポーツを楽しむ力を育てるもの。つまり…、体育ができると、人生がより楽しくなる!! そして今、一人の超人(ちょうじん)サイボーグが開発された。その名は、体育ノ介。
ここは、博士博士(はくし・ひろし)博士(はかせ)、略して博士3(はかせさん)の研究室。「わたしが開発した超人(ちょうじん)サイボーグ、体育ノ介。なんとも美しいこのボディ。愛らしいこのフェイス。しかし、この体育ノ介に、ある大切なものを入れわすれてしまった。それは、体をスムーズに動かす力、すなわち『体育の力』じゃ。だが、まだおそくはない。これから彼(かれ)に『体育の力』をプログラミングし、体育ノ介がどうかわっていくのかを研究すればよいのだ。さっそく、きょうのミッション。さかあがりに挑戦(ちょうせん)だ!」。
「さかあがり、実行!」。しかし体育ノ介、何度もさかあがりにチャレンジしますが、できません。
「やはりむりか…。そうか、体育ノ介もくやしいか。よし、さかあがりの技(わざ)をプログラミングだ。何かよいお手本をさがさねば…」。パソコンで検索(けんさく)してさがす博士3。すると、「おお、あった! なんと美しい演技(えんぎ)なんじゃ。冨田洋之(とみた・ひろゆき)…アテネ五輪で“栄光(えいこう)のかけ橋”をわたったあの体操選手(たいそうせんしゅ)、冨田洋之さんか! さっそくこの選手のさかあがりデータ、ダウンロード!」。
冨田洋之さんの、さかあがりのお手本です。「さかあがりが、『できるポイント』。
けり足は鉄棒(てつぼう)の真下か、少し前!」。
「かた足をふり上げ、もう一方は地面をける!」。
「ひじは曲げ、おなかを鉄棒にひきつける! 足は真上!」。
つづいて、体育ノ介の『できないポイント』分析(ぶんせき)です。「さかあがりが、『できないポイント』。ける足がうしろすぎて、ダメ! 今度は前すぎで、ダメ!」。
「けり上げる足が前方では、ダメダメ!」。
「うでがのびきっとる。あごも上に向いとーる!」。ここで、博士3は体育ノ介に『できるポイント』をインストールしました。
さかあがりができるポイントをチェック。「けり足は鉄棒(てつぼう)の真下か、少し前! 完了(かんりょう)! かた足をふり上げ、もう一方は地面をける! 完了! ひじを曲げ、おなかを鉄棒にひきつける! 完了! 足は真上! オール、オッケー! なんと美しい演技(えんぎ)なのじゃ…。おお、体育ノ介がよろこんでおる。やはり、体育ができると人生がより楽しくなる! わしの研究は、今花開いたのじゃ!」。
冨田さんが教えてくれる、さかあがりのコツ。「さかあがりのいちばんのポイントは、足の動きと、うでの動きを合わせることです。最初(さいしょ)から完璧(かんぺき)にできなくてもだいじょうぶです。ポイントを一つひとつクリアしながら、鉄棒(てつぼう)を楽しみましょう!」(冨田さん)。
みんなもやってみよう。さかあがりができないときは、タブレットでお手本を見て、『できるポイント』をつかむといいのです。自分とどこがちがうのかが、わかります。あごをひいて、もう一度。『できるポイント』を一つひとつクリアしていけば、きっとさかあがりができるようになります。ところで、なぜ博士3はここまでさかあがりにこだわるのでしょう。その秘密(ひみつ)は…。
400年以上前に画家ブリューゲルによってえがかれた絵画『子どもの遊戯(ゆうぎ)』。子どもたちが木の棒(ぼう)に元気にぶら下がっています。なんとも幸せそうな笑顔(えがお)。そんな鉄棒競技(きょうぎ)の原型(げんけい)は19世紀(せいき)。ドイツでヤーンという人が始めたといわれています。当時は、いろいろな形で木の棒にぶら下がる、これが競技でした。ヤーンのもとには熱気(ねっき)ある若者(わかもの)たちが集い、日々、自分の身体能力(のうりょく)を向上させることを楽しんでいたのです。「なんともおく深い。さかあがりこそ、人生の栄光(えいこう)のかけ橋だー!」。