あらすじ一覧
オープニングタイトル
厨房(ちゅうぼう)で、なべのソースをかきまぜていたシェフが、味見をして「トレビアン!(おいしい!)」と言いました。シェフは、前から体の具合がよくなく、弟子がシェフを心配して「先生、そろそろ休まないと、体に毒ですよ」と言い、シェフはいすにこしを下ろしました。「あのソースがあれば、ぜったいコンクールで優勝(ゆうしょう)できますよ」と言われ、うなずいたシェフですが、とつぜん苦しそうにむねをおさえました。「先生、先生! 救急車!」とあわてるコック。ものかげからもう一人のコックがその様子を見ていました。
さんすう課で、ゼロとイチがお昼のおにぎりを食べようとしています。「たまにはゆっくりとレストランで食事したいなぁ」とイチ。そこへ、主任(しゅにん)からの指令です。「ゼロ、イチ、事件(じけん)よ。フランス料理店『ラ・メール』の厨房(ちゅうぼう)から、秘伝(ひでん)のソースがぬすまれたの。料理長ベルナールさんとその弟子の鳥山さんは、明日、料理コンクールに出場する予定よ。だけどコンクールに出す料理は、このソースがないと作れないそうなの。早く犯人(はんにん)を見つけ出して!」。
ゼロとイチが、『ラ・メール』の厨房(ちゅうぼう)で鳥山に話を聞いています。ソースがなくなったとき店にいたのは、鳥山とアシスタントの牟田(むた)だけでした。牟田は、「ぼ、ぼくじゃないですよ。ぼくの荷物これだけですもん」と、カバンの中身を全部出して見せました。おかしやジュースのペットボトルです。そして、「あのソース、けっこうな量あったと思うなー。ぜったい持ち歩けませんよ」と言います。どれぐらいの量があったのかゼロが鳥山にたずねると、「コンクールに出す料理のレシピに書いてあったはずです」と、鳥山がメモをゼロに見せました。
メモには、『ソース・スペシャル 50cL』とあります。“50cL”とは何でしょう。「500リットル?」とイチ。すると、「500リットルは1リットルの牛乳(ぎゅうにゅう)パック500本分だぞ。このなべには入らんだろう」とゼロが言いました。「じゃあ、この“c”は“d”なんじゃないですか。“50dL(デシリットル)”ですよ。1デシリットルが10分の1リットルだから…50デシリットルは5リットルです!」。そこで、みんなで手分けして5リットルのソースをさがします。でも見つかりません。「店の外に持ち去られたんですかねえ」とイチ。すると、「こまったことになってるみたいだねぇ」という声が…。
声がした店内へ行ってみると、男がすわっています。「ボンジュール!」。コンクールで戦うレストラン『ソレイユ』のシェフ、牛尾(うしお)でした。「聞いたよ。あのソース、なくなっちゃったんだって?」と鳥山に言います。「まさか、あのソースをぬすんだのは…」と鳥山。ゼロは、ずっと自分の店にいたと言う牛尾の荷物を調べます。1リットルのオイル、250ミリリットルのビネガー…。ソースはありません。「買い出しが残ってるから失礼するよ」。帰りかけた牛尾は、「明日のコンクール、楽しみだねぇ」と言って、意味ありげに牟田をチラッと見て帰っていきました。
牟田は、「あ、そうだ。修理(しゅうり)に出してたなべつかみ、とどいてましたよ」と鳥山になべつかみをわたすと、厨房(ちゅうぼう)に行ってしまいました。ゼロが修理伝票を見ると、『皮代金 10cm×10cm(1デシ)…』と書いてあります。「10センチメートルかける10センチメートルかっこ1デシ…。デシって何ですかね?」とイチ。すると鳥山が、「皮をあつかう業者さんは、一辺の長さが10cmの皮を『1デシ』とよぶそうです」と言いました。「1デシ…そうか!」。ゼロが何かに気づいたようです。
ゼロがタブレットで説明します。「昔はメートル(m)とセンチメートル(cm)のあいだに、デシメートル(dm)という単位が使われていたんだ」。1デシメートルの長さは10センチメートル。1メートルの10分の1です。「つまり『デシ』とは、10分の1という意味なんだ」。イチが、「じゃあ、1デシリットルの『デシ』も同じ意味ですか」と聞くと、「1デシリットルは1リットルの10分の1だから、同じだな」と、タブレットに書きながら答えるゼロ。するとゼロがひらめきました。「なるほど! なぞがとけたぞ!」。
牛尾がこっそり『ラ・メール』の店内に入ってきました。そして、牟田からペットボトルを受け取ります。そのとき、ゼロたちがあらわれました。「そのペットボトル、調べてもよろしいですか」。牟田は、「ソースは5リットルですよね。こんな小さいペットボトルに入るわけないじゃないですか」と言いのがれようとします。ゼロは、「われわれは最初、ソースは5リットルだと思いました。ですが、それはちがったんです」と言って、ワインのボトルを見せました。「これはフランス産のワインです。ここに“cL”と書かれています。これは、『センチリットル』と読むんです」。
イチがタブレットを見せて説明します。「1cmは1mの100分の1。『センチ』とは、100分の1という意味です」。ゼロが続けます。「つまり、1cL(センチリットル)は100分の1リットルなんです。そして、1ミリリットルは1リットルの1000分の1。よって、1センチリットルは10ミリリットルです。レシピに記された“50cL(シーエル)”とは、50センチリットル。すなわち500ミリリットル。つまり、そのペットボトルと同じ容量(ようりょう)なんです!」。
イチは牛尾からペットボトルを取り上げ、その中身をなべにあけました。中に入っていたのはベルナールさんの秘伝(ひでん)のソースでした。「牟田くん、どうして…」。鳥山に聞かれた牟田は、「ソースをわたせば、うちのメインシェフにしてやるからって…」と牛尾を見ました。「こんなことして勝っても、何の意味もありませんよ」と鳥山。ゼロは、牛尾と牟田に向かって、「あなたたちにかれの10分の1、いや100分の1でも料理を愛する心があれば、こんなことはしなかったでしょうな」と言ったのでした。