一覧に戻る

50音から探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
わ行
津川雅彦 津川雅彦

津川雅彦俳優つがわまさひこ

1940年生まれ、京都府出身。56年、『狂った果実』で映画デビュー。以後、映画、テレビなどで活躍。近作は、映画『HIGH&LOW THE MOVIE』、ドラマ『アガサクリスティー そして誰もいなくなった』『やすらぎの郷』など。またマキノ雅彦として映画『寝ずの番』『次郎長三国志』『旭山動物園物語 ペンギンが空を飛ぶ』を監督。NHKでは、大河ドラマ『葵 徳川三代』など。『大岡越前』シリーズは大岡忠相の父・忠高役で出演。

土曜ドラマ 蛇蠍のごとく(1981)

石沢役

土曜ドラマ 蛇蠍のごとく

インタビュー

 これは向田邦子さんの書き下ろしドラマですが、向田さんはなぜか役者・津川雅彦を気に入ってくれたようで、何度か一緒に仕事をさせていただき友だちのような間柄でした。『蛇蠍のごとく』は直木賞受賞後に書き下ろされた作品で、脚本を読んですぐに興味を持ちましたし、面白いドラマだったことを覚えています。ただ、さすがに年月も経っているので、撮影中の出来事や役柄についての詳細は覚えていません。

石沢は38歳のイラストレーター
不倫相手のOL・塩子(池上季実子)の父親に関係がばれ…

 『蛇蠍のごとく』というタイトルが指し示すように、蛇と蠍(サソリ、毒虫)のようにお互いにいがみ合う男たちが徐々に親しみを感じるようになるという物語で、その相手役は小林桂樹さんでした。小林さんとは古くからのおなじみで、いろいろなことを教えていただいた存在であり、なおかつ遊び仲間でもあったんです。そういう意味では面白いコンビを組んでいただいたなという印象があります。

塩子の父・修司(小林桂樹)は仕事一筋の真面目な男

 向田さんは、このドラマが放送された年に飛行機事故で亡くなられてしまい、本当に残念でなりません。とてもきれいな方で、誘惑したくなるような魅力を持った女性でした。

連続テレビ小説 澪つくし(1985)

板東久兵衛役

連続テレビ小説 澪つくし

インタビュー

 『澪つくし』は脚本家のジェームス三木先生が初めて手がけられた“朝ドラ”で、ずいぶん評判になり視聴率も良かったですね。僕がジェームス先生の芝居に出させていただいたのもこれが初めてでした。それまでに何度かお話はいただいていたのですが、なかなか成立しなかったんです。そんなとき、僕が出演していた舞台の楽屋をわざわざ訪ねてくださり、「津川さんのファンなので、今度の朝ドラにぜひ出演してほしい」と、ラブコールをくださった。それで実現しました。

九兵衛は銚子の醤油醸造元「入兆」の11代目当主

 結局、ヒロインの沢口靖子ちゃんが良かったね。最初は正直、あまりに大根(役者)で驚きましたが(笑)。まったくの新人でしたからね。ところがその大根ぶりに魅力があった。とにかく素直で一生懸命で、ガタ(緒形拳)じゃないけどけっこうな直球を投げてくる。そんな彼女の周りをテクニックのある役者で固めるという絶妙なキャスティングが成功したと思います。

ヒロイン・かをる(沢口靖子)

 そのときの僕もある意味、役者として調子にのっていたころで、いま見ると若いせいかいい顔してますよ。誰でも一生懸命の時期ってのは魅力があるんだね。靖子ちゃんとは最近も共演する機会があったけれど、あのまま真っ直ぐに伸びていて、いい顔になっていました。未だに成長しているところが沢口靖子という俳優が持っている素質であり魅力ですね。

 また、ジェームス先生とは、この後、大河ドラマをはじめ何作もご一緒していますが、そのたびに僕の意外な一面を取り上げてくださいました。今日津川雅彦があるのも、ジェームス先生のおかげだと思ってます。この作品ではドラマを成功させるのは、脚本の力が第一だとつくづく感心させられました。そしてキャスティングがいかに大事かということも同時に思わせてくれたのが『澪つくし』でした。

長女・律子(桜田淳子)は奔放な性格で九兵衛を悩ませる

ドラマ・スペシャル 破獄(1985)

鈴江圭三郎役

ドラマ・スペシャル 破獄

インタビュー

 何度も脱獄を繰り返す男と、彼を追いかけ捕まえる男の対決を描いたドラマで、脱獄犯を演じたのが緒形拳。僕が看守の役でした。以前から“ガタ”“マサ”と呼び合うような親友でしたが、共演回数は少なかったんです。しかしこの作品を撮り終わるころには、役者・緒形拳のこともコイツにはかなわないなと尊敬するようになりましたね。『破獄』の撮影当初の彼には、役者としてやや違和感を覚えていました。彼と僕とでは芝居に対する向き合い方がずいぶん違っていたからです。

刑務官の鈴江と脱獄犯の佐久間(緒形拳)との間にいつしか友情が生まれてゆく

 たとえば、彼が看守の僕に殴りかかるシーンがあったのですが、ガタはリハーサルの段階から本気で殴ってくるんですよ。僕が「芝居というのは嘘を演じるもので、本気で力ずくでやるもんじゃない」と説教したんだが聞くそぶりがない。本番になると案の定、本当に殴ってきたから、二人とも顔がぼこぼこに腫れて次のシーンが撮れなくなってしまった(笑)。どちらかといえば柔軟な芝居を心がけていた僕は、直球で力任せに押してくるガタのやり方に腹が立っていました。だからその後、後ろ手に手錠をかけられた彼に飯を食わせるシーンでは、わざと手錠をつけたままお椀を板の間に置いてやったんです。そしたら、かがみこんで口をお椀に近づけて食べようとしたから、さらにお椀を蹴ったらセットの床にこぼれた。どうするかなと思ったら、彼はその汚い床の飯を這いつくばってなめはじめたんです。そのとき感じたのは、野球にたとえれば、剛速球を投げるピッチャーの球を捕って手が痛くなるキャッチャーの心境でしたね。改めてすごい速球を投げてくるガタに惚れてしまいましたね。

 真冬の新潟で行われたロケーションのときも、膝まで雪に埋もれてしまうような状況でした。僕ら警察側の役者は重装備の衣装で豪雪に臨んだんだけれど、ガタは脱獄したときのままの格好なので軽装な上に裸足。それでもおかまいなしに雪の中で頑張っていました。「凍傷になるぞ」と注意したのですがね……。さすがに大した覚悟だと驚きました。

 印象に残ったのは、脱獄した彼が看守である僕のところを訪ねてくるというシーン。追う側と追われる側でありながら、その頃はお互いに愛情のようなものを感じていたんだという設定だったんですが、そんな芝居を素直に演じることができ、良いシーンになったと思っています。ラストシーンは、老けてからバッタリ道で会うシーンなんですが、お互いに老け方に凝って何時間もメーキャップに競ったことが楽しかったね。

大河ドラマ 葵・徳川三代(2000)

徳川家康役

大河ドラマ 葵・徳川三代

インタビュー

 もう18年前になりますか。今や4Dとかの時代になりましたが、大河ドラマとしてはこれが初めてのハイビジョン制作。カメラはもちろん、メイクや照明など、各スタッフさんたちには大変な苦労があったかと思いますが、みなさんのプロフェッショナルな仕事のおかげで、我々は以前と何ら変わらず演技に集中することができました。思い出深いのは関ケ原の合戦シーン。馬だけでも60頭。御殿場の草原を駆ける馬の足音が地鳴りのように聞こえるほど、リアリティのある壮大なロケでした。このときにスタッフが“家康馬”として用意してくれた白馬も、とてもすばらしい馬でね。本当にテレビドラマ史上に残る、見事な合戦シーンになったと思います。それだけのクオリティーだったからか、今でも歴史番組などであの映像をうまく再利用しているのを見かけます。扇を掲げているシルエットだけでも「“葵”の時の俺だな?」と、不思議と自分の出演している映像はわかるものです(笑)。

 『葵 徳川三代』の脚本もジェームス三木先生でした。家康についてのト書きを読むと、「爪を噛むのが癖」と書いてあった。この爪を噛(か)む、という仕草をどう取り入れればいいか――これがカギだと思い考えを巡らせました。家康といえば、「鳴くまで待とうホトトギス」といわれ、辛抱強く待つのが得意の人であり、天下が転がり込んでくるのを泰然自若と待ち抜いた“たぬき親父”のイメージが強い。以前、大河ドラマ『独眼竜政宗』(1989年)で私が演じた家康は、まさにそういう“静”の家康でした。家康は人質生活が長かったために、待つことが得意な辛抱強い男になったというふうに言われていましたからね。ところが、爪を噛む癖というのは一般的にはイライラしている心情の表れですよね。それでふと、家康は、本質はせっかちだったんじゃないかとの考えがよぎりました。

 ならば、この爪を噛むという癖を、家康のそうした本質的には“いらっち”だったという心の機微を表すものとして、芝居に使ってみたいと考えつきました。例えば、石田三成(江守徹)が使者をよこし、豊臣家への忠誠を誓うかどうかと問いかけてきたシーンなどでは、実は今が天下を取る大チャンスだと思っていることを見破られないように、黙って執拗に爪を噛み、噛み終わった爪もていねいに小姓の出した懐紙に「ぷっ」と吐き出す。この一連の行動で腹を見透かされないように相手を焦らし、翻弄するための策謀に見せたんです。するとこれまでにない、いかにも短気だが老獪(ろうかい)である新たな家康像を、浮かびあがらせることができました。ジェームス脚本の「爪を噛む」というト書きのおかげです。

 演じながらはっきりわかったのは、家康は「いらっち(せっかち・イライラして気が短い)」な性格だったからこそ、どんなに長い期間でも、今か今かと虎視眈々(こしたんたん)と待つことができ、決してチャンスを逃すことがなかった。だから成功を収めてこられたのではないかということです。その家康の「いらっち」が一番爆発し功を奏したのが、関ケ原の合戦でしょう。肝心の頼りにしていた本隊を率いる息子の秀忠(西田敏行)は親父の言うことも聞かず真田攻めから帰って来ないわ、小早川秀秋(鈴木一真)は約束したにもかかわらず、いつまでも東軍への寝返りの動きを見せない。切羽詰まったそんなとき、小早川に催促のためとはいえ、いきなり大砲を打ち込み、慌てた小早川はそれで家康に味方するため、出陣したわけです。まさに「いらっち」のなせる業じゃないですか(笑)。その場面では私も鞭(むち)をくわえたりして、天下取りにかけた家康のむき出しの執念を表現したつもりです。用意周到で関ヶ原に臨み、万事を尽くした家康でしたが、それでも東軍としての勝利は、本当にギリギリのものだった。天が家康に味方したから勝つことができたんですね。いざというときに、そうした強運を呼び込めたのも、天下人としてふさわしい家康の人をそらすことのない人格のなせる技だったと思います。

 実は関ケ原の前にも、家康には三成を簡単に討つチャンスがあったんです。味方同士なのに三成に反感を持つ武断派の加藤清正(苅谷俊介)、福島正則(蟹江敬三)らが、世に言う石田三成襲撃事件を起こしたときですが、三成はほうほうの体でたった一人、家康の屋敷に逃げ込むんですね。一番の仇であるはずの家康にとっさに助けを求める三成も頭が良いと思いますが、なんと家康はその三成を逃がしてやるんですよね。びっくりした息子の秀忠が「三成を成敗する絶好のチャンスなのに、なぜ逃がすのですか?」と、父・家康に尋ねる場面があったのです。……が、ジェームス先生の台本にその答えはなかった。私は自分なりに、家康の気持ちになって考えました。ここで三成を葬っては、いざ天下を取る戦いになったときに、今度はもっと手ごわい武断派が自分に刃を向けてきて、三成以上にやっかいな敵を背負うことになる。家康にとって、三成のほうがずっと戦いやすい柔な敵だったわけです。この際、三成という共通の敵を持った武闘派たちを味方につけるほうが、天下取りの戦いは、うまくいくと計算したはずです。つまり、三成は家康にとって“大切にしなければならない敵”だったのですね。そこで私は、「敵の敵は味方よ」と秀忠に教える一言を、ジェームス先生にお願いして付け加えさせていただきました。先生からは「結構です」とお返事があった。それで、今回の家康の人物造形は間違っていなかった、とお墨付きをいただけたように思え安堵した記憶があります。

 この作品でもうひとつ特徴的だったのが、徳川家の絆を描いていることです。例えば家康は60歳を過ぎて男の子を3人も作っている。きっとその子どもたちに対しては、それぞれに自分の肉体をちぎって渡したようなかわいさを抱いていたと思います。その家康の子どもたちを愛する気持ちが、徳川御三家の制度を作らせ、その後の江戸幕府存続につながる素晴らしいアイデアにつながったんですね。何よりすごい決断は、徳川の天下を盤石にするために家康が後継に選んだのは、武勇にも知略にも欠ける三男の秀忠でした。“のんびり間の抜けた男だからこそ、これからの平和な世には向いている”と、家康は周りを説得するんですね。これがわかっていたのがすごい。自分のような「いらっち」では、また乱世に戻りかねない。つまり、自分とは真反対の性格の子を選んだのですね。でも、それが結果的には260年続く徳川政権の礎となったのですから、つくづく家康の眼力は素晴らしい。文字通り、家康は徳川家のゴッドファーザーだったのだと思います。これまで数々共演を重ねてきた西田敏行さんが秀忠を演じてくれたのも、あうんの呼吸で親子の役ができて楽しい思い出となりました。私はこれまで綱吉をはじめ徳川将軍家の役を何回も演じてきましたが、やはり家康役が一番おもしろかった。そして『葵 徳川三代』は、本当に思い出深い僕の生涯での代表作となりました。

秀忠(西田敏行)

BS時代劇 大岡越前4(2018)

大岡忠高役

BS時代劇 大岡越前4

インタビュー

 このドラマは、大岡越前(大岡忠相)のヒューマニズムとそれを支える家族愛を交え、義理と人情のあふれた江戸の人々が登場する物語であり、刑事物や探偵物のような謎解きまで描き込んである完璧な構成の作品で、まさに“THIS IS 時代劇”といえる作品です。

 かつて映画界では「プログラムピクチャー」と呼ばれる看板タイトルの映画がいくつもあり、それが映画ファンを増やし、映画会社もそれを大事にしていたものです。『大岡越前』はテレビドラマですが、時代劇が少なくなっている今、こうしてシリーズ化されて続けているのは嬉しいことだし、こういう番組こそテレビ界にとって宝物だと思って、大切にしなければいけません。撮影も時代劇のノウハウを身につけた京都のスタッフのもと、非常にスムーズに進んでいます。脚本も素晴らしく面白くて、残念ながら亡くなられてしまいましたが大西信行先生のセリフは抜群でした。

忠高は息子の忠相とは正反対の破天荒な性格
刀を抜いて荒くれ者を追い払う場面も…

 主人公・忠相を演じる東山紀之くんも、いい時代劇役者になりました。若いころからのお付き合いですが、何事にも一生懸命で、遊びから何から、すべてを自身の糧として勉強してきた人だから、役者としてきちんと成長していますよね。忠相の母・妙役の松原智恵子さんの天然ぶりもなんともいい味でしょう。あれは芝居ではないんですよ、松原さんの性格を生かした役づくり(笑)。でも、おっとりとした彼女の性格が出ていて良いですね。一方、僕が演じる忠高は、江戸っ子気質というか破天荒で短気でおっちょこちょい。このホームドラマの夫婦のコンビネーションも面白く出来上がってますし、ホームドラマの要素があふれた痛快な物語なので楽しんでいただけると思います。

短気な忠高を支える妻・妙(松原智恵子)
その他の出演番組を見る ※類似の氏名が検索される場合があります。
一覧から探す