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高橋英樹 高橋英樹

高橋英樹俳優たかはしひでき

大河ドラマ 『竜馬がゆく』

大河ドラマ 『竜馬がゆく』

 もう50年近く前になるんですね。記憶がだいぶ薄れてはしまいましたが、この『竜馬がゆく』は、僕のテレビ初出演作であり記念碑的な作品です。当時僕が所属していた日活では任侠映画が人気を博していて、年に15本ぐらいのペースで撮影していました。ちょうど大スターの石原裕次郎さんや、吉永小百合さんが映画にあまり出演されなくなっていた時期と重なっていたので、僕や小林旭さん、渡哲也さんが中心になって、必死に日活を回していたような状態でした。任侠映画だけで合計60本近く撮影したはずです。もうなんでもいいから任侠もの以外の作品に出たい……、そんな風に思いはじめたとき、この『竜馬がゆく』出演の話が舞い込んだんです。少しずつ理解は広がってはいたもののまだまだ五社協定のしばりは厳しく、映画俳優は簡単にはテレビに出演させてもらえなかった時代でした。でも、僕は背水の陣を敷く思いで会社に掛け合い、テレビ出演を決めたんです。

 撮影現場はとても刺激的でした。他社の俳優さんとは全く演技をしたことがなかったので、違うカルチャーで育った方々との共演がとても勉強になったんです。主演の北大路欣也さんは東映のご出身、私と夫婦役を演じた坪内ミキ子さんは大映など、映画なら日活と大映が夫婦役なんてあり得ない時代でした(笑)。絶対ご一緒できないはずの方たちと共演しいろんな息吹を感じることで、俳優としての視野がぐっと広がった気がしたんです。この『竜馬がゆく』への出演は、その後日活を離れることになった、ひとつのきっかけになったかもしれません。また、私の演じた武市半平太への反響も大きく、とてもうれしかったですね。テレビで、初めて私を知ってくださった方も多かったようです。視聴者の皆さんからは“武市を死なせないで”との延命嘆願がNHKに届いて実際に登場回数も延びたのですが、武市は史実として自害しているので生き続けるわけにもいかないんです。それに、牢獄に入れられた後で、すでに無精ひげをはやし身をやつしていましたから、それほど見せ場も作れず逆に少し困った思い出があります(笑)。でも、俳優になって初めて、母親がご近所の方から「息子さん、よかったですね」と声をかけられたと言っていたのが忘れられません。それまでは任侠映画ばかりに出演していたせいか、「あなたの息子さん、不良になって大変ね!」と言われていたらしいんです。あの頃は映画やテレビがお茶の間に与える影響がそれほど大きかったんですね。

  • 竜馬役 北大路欣也さん(左)
  • 武市半平太役の高橋さん(右)

 原作は司馬遼太郎先生、脚本は水木洋子さん、演出は和田勉さんでした。和田さんもお若くて、その気合と迫力はすごかったですね。水木さんの脚本も濃密で、放送45分のところを60分ぐらいのセリフの分量で書いてあって収まりきらないほどでした。どうしたと思います? 脚本をカットすると思うでしょう。違うんです。全員でものすごいスピードでしゃべったんです(笑)。和田さんが演出のたびに、若手の僕らに「もっと早く、もっと早くしゃべって!」と、大声であおるので、もはやセリフを思い出しながら話すようでは全然間に合いません。常にセリフを完全に自分のものにしなくてはならないという緊張感が、現場には漂っていました。そして頑張って撮影を終えると、和田さんが副調整室*から飛び出してきて「今のすばらしかった! じゃあ、もう1回!!!」って(笑)。私たち俳優陣は「よかったのにもう1回?」なんて思いましたが、映像を見ると僕たちの早いセリフ回しや緊張感のある演技が、幕末に新しい国づくりを目指して獅子奮迅する、土佐藩士の高揚した空気感とぴたりと重なっていました。和田さんの演出は見事でしたね。苦労もありましたが、今振り返ってもあの撮影の日々は本当に楽しい思い出ばかりです。去年、大河ドラマ『花燃ゆ』の撮影で、久しぶりに北大路欣也さんとNHKですれ違うことができました。「おう!」という短い言葉を交わすだけでしたが、当時の盟友とは一瞬にして分かり合えるものです。互いに元気で何より。またいつか一緒に芝居ができたら、とてもうれしく思います。

*副調整室=テレビのスタジオに設けられる、映像や音声などの切り替えや調整を行うところ。

  • 演出家 和田勉
  • 『花燃ゆ』(2015)で再会
    高橋英樹さんは井伊直弼役、北大路欣也さんは毛利敬親役

大河ドラマ『国盗り物語』

大河ドラマ『国盗り物語』

当時20代だった高橋英樹さん、松坂慶子さんら華やかなキャスティングで戦国時代をエネルギッシュに描いた意欲作。高橋さんは織田信長を演じ、はまり役となった。

 私の織田信長、平幹二朗さん演じる斎藤道三、そして、近藤正臣さんの明智光秀、火野正平さんの羽柴秀吉――と、強烈な個性を放つ戦国武将たちが天下取りに挑んだ時代を描き、大変な人気となった大河ドラマでした。なにしろ、昭和天皇がスタジオをご訪問になったほどですから。私と松坂慶子さん演じる濃姫のシーンを、スタジオにセットを組みなおして再現し、本番さながらの撮影風景をご覧いただいたんです。直接お声をかけていただいたと記憶していますが、とても緊張したことははっきりと覚えています。原作はこちらも司馬遼太郎先生ですが、脚本は大野靖子さん。大野さんは米国のアニメの『ポパイ』に出てくるオリーブに似ているスマートでかわいらしい方でしたが、とても骨太な物語を書く方でした。この信長の役も、とてもよく書いていただいたと感謝しています。もともと織田信長は大好きな武将で、セリフがどんなに長くても頭にすっと入る。自分は信長の生まれ変わりなんじゃないかと思うほど、役にのめり込めるんです。信長が本能寺で生きていたら、日本のその後はまた全く違っていたでしょうね。でも、死んだからこそ歴史に名を残したともいえます。そんな風に歴史上の人物について掘り下げ、勉強するのが私の趣味のひとつ。私は決して器用な俳優ではありません。だからこそ、役作りに少しでも生かせたらという思いもあって本をたくさん読んでいるうちに、いつの間にか歴史が大好きになっていたんです(笑)。そのおかげか、これまでにたくさんのすばらしい役柄との出会いをいただきました。これからもどんなドラマで、どんな役柄との出会いがあるのか、私自身俳優として楽しみにしています。

  • 斉藤道三役 平幹二朗さん
  • 濃姫役 松坂慶子さん
  • 明智光秀役 近藤正臣さん
  • 羽柴秀吉役 火野正平さん

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