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八千草薫 八千草薫

八千草薫女優やちぐさかおる

土曜ドラマ 『阿修羅のごとく』

土曜ドラマ 『阿修羅のごとく』

 『阿修羅のごとく』よりも前に向田邦子さんの作品に出演させていただくお話があったのですが、ちょうどほかの番組と重なってしまい、お断りをさせていただいたことがあったんです。そのとき、すごく残念に思っていたので、『阿修羅のごとく』に出演できてとてもうれしく思いました。私以外のほかの出演者の方たちは皆さん、向田さんの作品によく出演されていたので、だいたいどういうキャラクターの役者なのかということを向田さんもよくわかっていらしたと思います。でも私は向田さんの作品が初めてでしたので、向田さんも「どうなのかな?」と探っていらしたような気がします。私としては向田さんがどういう役を書いてくださるのか、すごく楽しみでした。

向田邦子さん(1979年撮影)

 私の演じた巻子は一見普通の主婦です。私がそれまで演じてきた役もそんな役柄が多かったのですが、巻子は棘のような、なにかチクッと痛いところがいくつかあるようなキャラクターでした。演じていても、「嫌だな、こんな風にしたくはないな」と思う部分がありましたが、向田さんの作品はその棘の部分が観ていて面白いのですよね(笑)。でも一つだけどうしても巻子の行動がよくわからなくて、自分で納得して演じられなかったシーンがあります。『パート1』の第一話で巻子が長女の綱子の家に行ったときに、綱子の恋人・貞治がいて、鰻(うなぎ)を注文していたんです。貞治には妻がいるので巻子は驚いて逃げるのですが、綱子が連れ戻して、貞治が食べなかった鰻(うなぎ)を何気なく出すんですね。そのことに巻子はすごく怒ってお重をテーブルから放り出してしまいます。私は「普通、怒ってもこんなことするかしら? ずいぶん激しい人だな」と思い、少し形だけで演じてしまった気がします。まだこのときは十分に巻子の気持ちを理解していなかったのですね。

  • 姉・綱子を訪ねると、恋人が来ていた…
  • 巻子は出されたうな重を食卓から払い落とす

 いろいろな姉妹のドラマに出演してきましたが、これほど姉妹というものを感じた作品はなかったと思います。長女役の加藤治子さん、三女役のいしだあゆみさん、四女役の風吹ジュンさんとは、最初の撮影から本当の姉妹という感じがしていて、言い合いをするときもとてもスムーズでした。姉妹というのは何も飾らずに心を開いて言いたいことを言ってしまうところがあると思いますが、私たちはお互いのことがよくわかっていて、上手く姉妹という雰囲気を出せたと思います。実際に私には姉妹はいないのですが、「姉妹ってきっとこういうものなんだろうな」と思うことができました。きっとそれは私たちの仲が良かったというだけではなく、向田さんの書かれた脚本が姉妹の関係性を良く表していたからなのでしょうね。

左:四女・咲子役の風吹ジュンさん
右:三女・滝子役のいしだあゆみさん

 私自身はあまり深刻に考えない、どちらかというと少しコメディタッチの役のほうが演じやすいんです。でも巻子はあまりに真面目すぎる役柄でした。巻子だけでなく、どの役もすべて強烈ですし、よく考えてみると、長女の綱子もかなりすごいキャラクターです。でも観ている人に「嫌な人だな」と思わせるのではなく、「ちょっと哀しいな」と感じさせるのは、向田さんが愛情を持って各役柄を書いてくださっているからなのだと思います。その中でときどき怖い表現がふと入ってきますから、向田さんの脚本はやはり「鋭い」という印象があります。

長女・綱子役の加藤治子さん(右)

 演出の和田勉さんも印象的でした。和田さんはブツブツと怒っていることが多かった気がします。突如として大きな声で「本番!」と叫ぶんです。そうするとこちらは「えっ?」と驚いてすごく緊張してしまうんですね。でもそこで「なんとかやらなきゃ」という気持ちになり、ほかの撮影よりも生き生きと演じられたのではないかと思います。私だけでなく、共演者の皆さん全員が「間違ったら大変!」というスリリングさを持って、新鮮な気持ちで撮影に臨んでいたと思います。和田さんから「OK」と言われると「良かったぁ」という安堵感がありましたから(笑)。

和田勉チーフディレクター(当時)

 『パート2』は約一年ぶりに共演者の方々に再会したのですが、『パート1』から普通の俳優同士ではなく、何か特別な繋がりができた気がしていたので、撮影が始まるのがとても楽しみでした。『パート1』と『パート2』で巻子の夫・鷹男役が緒形拳さんから露口茂さんに代わり、最初は戸惑いましたが、演じているうちにずっと一緒に夫婦でいたと感じるようになりました。私は過去に自分が出演した作品はあまり観ないのですが、この作品はときどき観たくなりますし、人にも「面白いから」と言ってつい薦めてしまいます(笑)。誰もが「私はこういう人間だ」と思っているところがあるかもしれませんが、そうではなく、みんなそれぞれいろいろな面を持っているのだと、この作品を観ると気づくと思います。「私にもああいうところがあるな」と自分をかえりみて反省したり、逆に愛おしいと思うところを発見できる作品だと思います。

  • パート1 鷹男役 緒形拳さん
  • パート2 鷹男役 露口茂さん

大河ドラマ 『独眼竜政宗』

大河ドラマ 『独眼竜政宗』

奥州の戦国武将・伊達政宗の生涯を描いた作品で、平均視聴率39.7%は、歴代大河ドラマの中で現在もトップ。八千草さんは、勝新太郎さん演じる豊臣秀吉の正室・ねね(北政所)を演じた。

 伊達政宗役の渡辺謙さんはとても素敵でしたね。一番印象に残っているのが謙さんの姿ですし、今でも“独眼竜”というと謙さんのイメージがすぐに浮かびます。謙さんとは今もたまにお会いすると親しくお話をさせていただきますが、会うたびにスーッと独眼竜の姿が思い出されます。ただ、私は北政所の役でしたので、一番覚えているのは謙さんとのシーンではなく、秀吉が亡くなるシーンです。みんなが秀吉の周りを囲んで悲しんでいるのですが、秀吉役の勝新太郎さんは長いこと寝ていて眠くなってしまったのでしょう。私もかなり長く悲しむ芝居をしていたのですが、スタッフの皆さんは勝さんの芝居が続いていると思ってなかなかカットがかからなかったんです。私もその時点では寝ていると思わなかったのですが、本当に寝息が聞こえてきたので、「勝さん、お休みになられています」と言って、ようやく「カット」がかかりました(笑)。それはとても面白かったですね。

伊達政宗役 渡辺謙さん

  • 豊臣秀吉役 勝新太郎さん
  • 八千草さんは秀吉の妻・ねねを演じた
  • 秀吉の最期を看取る

その他の出演番組を見る ※類似の氏名が検索される場合があります。
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