一覧に戻る

50音から探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
わ行
風吹ジュン 風吹ジュン

風吹ジュン女優ふぶきじゅん

1952年生まれ、富山県出身。75年に女優デビュー。79年に映画『蘇る金狼』での好演が評価され、以降、数々の映画、ドラマ、舞台で活躍。91年には『無能の人』で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。NHKでは、連続テレビ小説『ほんまもん』、大河ドラマ『風林火山』『八重の桜』などに出演。Eテレの教養番組『団塊スタイル』の司会も務めた。連続テレビ小説『半分、青い。』では、ヒロイン・鈴愛の祖母・楡野廉子役で出演するとともに語りも務める。

土曜ドラマ 阿修羅のごとく (1979、1980)

竹沢咲子役

土曜ドラマ 阿修羅のごとく

インタビュー

 普通の家庭の日常に潜む阿修羅を描いたドラマで、どこかざわざわとさせられるような作品でしたね。いろいろな問題が浮かび上がる衝撃的な作品でしたが、リアルにそこに生きているという感覚があり面白かったことを覚えています。私の役は家族に内緒で無名のボクサーと同棲する4姉妹の4女でした。彼女を通してこの時代の女性を表現したかったので、衣装は自前で用意しました。姉妹それぞれ個性が際立っていて、その差も意識しました。ただ役作りに関してはノープランだったんです。当時、向田邦子さんのお宅に遊びに行かせていただいたりしていたので、ふだんの私の会話や口調がそのままセリフになっていたんです(笑)。あて書き(あらかじめ演じる俳優を想定して脚本を書くこと)でしたからセリフを覚えるのも楽でした。

咲子はボクサーの陣内(深水三章)と一緒に暮らしているが…
姉の巻子(八千草薫)、綱子(加藤治子)、滝子(いしだあゆみ)にも内緒にしていた

 和田勉さんの演出も印象的でした。和田さんはリズムとか音で演出をされるタイプの方で、本読みでも「ダダーン!」と声を出されて、次に「バーン」と変わるとか。ここで何かが起きているという衝撃のイメージといった表現を伝えるためにそんなふうにされていました。一見、怒っているかのような演出方法でした。もっとも私はリハーサルに毎回15分遅刻していたので、実際に叱られていました(笑)。和田さんの隣には向田さんがいらして、そんな様子を見てケラケラ笑っていらっしゃったことも思い出です。対照的なおふたりでした。

演出の和田勉と脚本家の向田邦子

 この作品は女性は支持される方が多いのですが、男性にはあまり喜ばれなかったですね。「重箱の隅をつついたような」という表現をされましたが、当時は女性が思う男性の描き方と男性が描く女性の描き方にはすごくギャップがあったと思います。そんな中で唯一の女性目線で家族や男性を描いたドラマだったような気がします。

チャンピオンになった陣内が意識不明に陥り…

土曜ドラマ もうひとつの心臓(1997)

北村文江役

土曜ドラマ もうひとつの心臓

インタビュー

 この作品では37歳から80歳近くまでを演じるという役者冥利に尽きる経験をさせていただきました。息子を心臓病で失い、夫と娘を残して家を出てしまった母親が記憶障害になって娘と再会するという役で、初めての老け役に背中に綿を入れて丸みを出すなど年齢を感じさせる工夫もしました。現在と回想シーンの両方を演じたのですが、時間経過を考えながらどうイメージと空気を作り出すか、それが役者にとっては本当に楽しいことでした。

27年ぶりに母・文江と再会し、奈緒子(南果歩)の胸に思い出がよみがえる

 何よりもロケ地選びからセットまで、スタッフの仕事が素晴らしかったので、現場に入るとすっと役の気持ちに入ることができたんです。CGではなくアナログで再現した安普請の日本家屋や、黄色っぽい照明が醸し出すセットの空気感が本当に素敵でした。よくぞこんな場所を探してきたなという景色の中でのロケや、実際に川に橋までかけてしまうなど、そのていねいな仕事ぶりと力業には魅せられました。衣装も良かったし、風景や空気に圧倒されながらの撮影でした。

広司(玉置浩二)の夢は人力飛行機で空を飛ぶこと

 演じていて大変だったのは、夫の広司(玉置浩二)をひっぱたくというシーン。それも5連発ぐらいの往復ビンタと台本に書かれていて、パンパンパンとやらなくてはいけない。どうにもならない怒りからなのですが、そこが難しくて、すごくきつかったですね。玉置さんに悪くて、もし今でもお会いすることがあったら謝りたいくらいです。

 最愛の息子役は松本潤さんで、どこの支度部屋でも彼が撮影の合間に一生懸命に踊りの練習をしていたことを覚えています。まだ子どもなのに大人顔負けの集中力と熱心さに、プロフェッショナルの心意気を感じて「ジャニーズってすごいな」と思いましたね。

息子・徹の臨終に立ち会わず出て行った広司を文江は力まかせに殴る
徹の死後、文江は家を出てゆき…

連続テレビ小説 ほんまもん(2002)

山中千里役

連続テレビ小説 ほんまもん

インタビュー

 NHK大阪放送局が新しく建て替えられて最初に制作された朝ドラが『ほんまもん』でした。料理人を目指すヒロイン・木葉(池脇千鶴)の家は和歌山県熊野地方で林業を営んでいて、母親役の私は地下足袋を履いて山林を駆け下りるシーンの撮影もありました。みんなは「危ない」と言っていましたが、私は天才かと思うほど山を下りるのが上手で速かったので(笑)、山ロケはすごく楽しかったですね。

千里、一人娘の木葉(池脇千鶴)、木葉の祖父・定道(佐藤慶)

 でも、個人的にはいろいろなものを失い、世の中が変わっていくことを予感させるきっかけの作品にもなりました。夫の一路役の根津甚八さん、義父母を演じられた佐藤慶さん、小林千登勢さん、そして木葉の精進料理の師となる尼寺の庵主役の野際陽子さん。みなさんが本当に自由に演技を見直し、素晴らしいお仕事をされていたのを目の当たりにして、私にとっては大切な財産になっています。その後、亡くなられたことも含めて個人的な喪失感もあり、時代の境目を感じさせる作品でもありました。アメリカの同時多発テロ「9.11」が起きたのもあの年で、2000年を迎えて何かが変わったことを実感しています。

青風寺の庵主 泉恵尼(野際陽子)の精進料理に出会い、料理の心を学ぶ木葉
病に侵された一路(根津甚八)は娘の木葉に自分の味を伝える
一路の妹・道代(小林幸子)

 京都の病院に入院していた私の母も撮影中に亡くなったのですが、すぐに駆けつけることができず熊野ロケを終えてから会いに行きました。母方の先祖が熊野大社の本宮の宮大工だったそうで、そこに不思議なご縁を感じました。

 『ほんまもん』は、素材を生かす精進料理や粗食など食のルーツが見えてくるドラマであると同時に、何もないところから何かを生み出すという意味のある物語でもあったと思います。私自身がルーツの強いエネルギーを感じたように、もし機会があれば、何かエモーショナルなものを呼び起こしてもう一度、このドラマを見返していただけると嬉しいですね。

土曜ドラマ 55歳からのハローライフ(2014)

高巻淑子役

土曜ドラマ 55歳からのハローライフ

インタビュー

 50代から60代の男女を主人公にした全5回のオムニバス形式のドラマで、私は第2回の「ペットロス」に出演しました。ジェネレーション的にもぴったりで、原作者(村上龍)の思いも含めて同じ時代を生きている大人の話を待っていたこともあり、なんの違和感もなく物語の世界に入れました。

念願の愛犬ボビーと暮らし始めた淑子だったが
夫の幸平(松尾スズキ)は犬が嫌い

 私が演じた淑子は夫(松尾スズキ)への不満を愛犬や愛犬仲間と過ごすことで解消させていたのに、その犬が重い病気にかかり死別してしまうという女性。そこから今まで我慢して来た夫に対する見方が変わったり、いろいろなことに気づいていくというところがポイントでしたね。今を生きる大人のセカンドステージを描いているところが素晴らしかったと思います。

淑子は犬の散歩中に知り合った義田(世良公則)にほのかな恋心を抱く

 実はこの時期、家には2000年から飼っていた犬がいたのですが、このドラマに関わっていた間に脳血栓で動けなくなってしまったんです。犬を針に連れて行ったり、リハビリしたり、本当に苦しくてアップアップしているときにドラマも同じような展開になるなど、ドラマとのリンク感が微妙でしたね。でも家の犬はリハビリのおかげで動けるようになりました。

心臓肥大の難病にかかった愛犬ボビーを懸命に看病するが…
淑子のひざの上でボビーは息を引き取る

 楽しかったのは、『55歳からのハローライフ』のポスター撮影で、リリー・フランキーさん、原田美枝子さん、小林薫さん、イッセー尾形さんと全5回のメンバーが集まったことです。ドラマでは合流しないけれど、しばらく会っていなかった人たちとまた会えたという喜びがありました。それも、会ったときにふーっと何のためらいもなく近づくことができて、それが50歳過ぎのあるジェネレーションを超えた人間の楽しさであり安定感なんだなと。年を取るのもいいことだよと感じさせてくれるような時間でした。

連続テレビ小説 半分、青い。(2018)

楡野廉子役、語り

連続テレビ小説 半分、青い。

インタビュー

 このドラマではナレーションも務めさせていただき、とても光栄に思っています。これまで素敵な女優さんたちがドラマのナレーションをされていたので、いずれは私もそこをクリアーできたらと思っていました。あこがれのお仕事でしたから女優冥利に尽きます。

 ただ、私は滑舌が悪いのでお話をいただいたときは事務所が一番驚いていました(笑)。そこで、まず声に出して音を録り自分で聞いてみるということを自主トレとして始めました。ナレーションは、演じるときのイメージトレーニングとは異なり、全体の状況や空気を大きな枠で捉えたうえで1日の流れの中の表現、さらに1シーンの中でどうあるべきかを考えます。それは女優モードのときとは別作業でした。

廉子と仙吉(中村雅俊)

 具体的な進め方としては、最初に台本を自由に解釈して仮のナレーションを録ります。その後、役者さんが演じて編集された作品を見ると、セリフの声やリズムによってニュアンスが微妙に変化しているので、そこで改めて本番の録音に入ります。役者さんの演じる力の強さを感じて、こちらも心を動かされて、ときには泣き、怒り、テンポも変わってきます。最初は自分の中で響いている声と返ってくる声が違うので探り探りでした。歌に似ているようでいて、毎回違うので譜面には書けない。それでも後半になるにつれ、自分のペースやリズムがつかめるようになり、面白さを感じることができました。北川悦吏子さんが書かれる台本は、言葉が自由で遊びがいっぱいあってとても楽しかったですね。

仙吉が孫のために考えた名前は“つくし”
“採用されるといいね…”
その他の出演番組を見る ※類似の氏名が検索される場合があります。
一覧から探す