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中村嘉葎雄 中村嘉葎雄

中村嘉葎雄俳優なかむらかつお

1938年生まれ、東京都出身。歌舞伎役者・三代目中村時蔵の5男。5歳で歌舞伎座『取替べい』で初舞台を踏む。兄・萬屋錦之介に続いて映画界に入り、映画『振袖剣法』でデビュー。映画、テレビ、舞台と幅広く活躍。主な出演作に、映画『ちいさこべ』『陽炎座』『天平の甍』『20世紀少年シリーズ』、テレビ『白虎隊 敗れざる者たち』、『王様のレストラン』、舞台『越前竹人形』『さぶ』など。NHKでは、大河ドラマ『赤穂浪士』、連続テレビ小説『ふたりっ子』、ドラマ『チェイス〜国税査察官』などに出演。『鳴門秘帖』では、甲賀宗家頭領の甲賀世阿弥役で出演。

連続テレビ小説 ふたりっ子(1996)

佐伯銀蔵役

連続テレビ小説 ふたりっ子

インタビュー

 僕は歌舞伎に出演していた子どものころから、将棋盤を持って楽屋入りしていたほど将棋が好きだったんです。ただ、伝説の真剣師(*)という役でしたから、実際に真剣師の方にお会いしてお話しをうかがって、その方たちの一人をイメージして役を創っていきました。また、好きなプロ棋士の升田幸三名人の雰囲気や風ぼうなどもお手本にさせていただいていました。モデルではないけれど、通天閣の将棋センターで将棋を教えていた方がいて、その方にもずいぶん気に入っていただきましたね。

銀蔵は小学校の問題児・香子(三倉佳奈)の師となる

 流れ者の銀じいの衣装や髪型、セリフをどうするのか、演出の長沖(渉)さんとずいぶん打ち合わせをしました。衣装はやはり升田さんの雰囲気で、また髪は「幻の人物なのだから最初から白髪でいこう」ということで決まったんです。だからふたりっ子がどんどん大人になっても変わらなかった(笑)。ただ、銀じい刈りは1週間で伸びてしまうので、白髪を維持するためにメークさんが苦労していましたね。また言葉についても「真剣師だから大阪出身というわけではないし、何弁と決めるのはやめよう」と言ったんです。「どこでもいいけど標準語ではない、なまりがあればいいのでは」と。そこで長沖さんが「高松あたりにしましょう」と提案されて決まりました。

18歳になった香子(岩崎ひろみ)はプロ棋士になりたいと言い出し…

 そういえば撮影で最初に大阪入りしたとき、僕にふたりっ子の子役たちを見てほしいと言ってきたんです。だけど「あまり顔を会わせない方がいいよ、僕を見てなんか怖いといった反応を見たいから」と断りました。慣れてしまってはだめだから、リハーサルなしにしようと言って。通天閣のロケで初めて会ったとき「あ、変なおじさん」と顔色に出ていましたからね。子どもはとくに自然に出るので、それが良かった。映像にはハプニングがないとつまらない、結果的に正解でした。

銀蔵と香子 出会いのシーン

*真剣師…賭け将棋、賭け麻雀などで生計を立てている人物

土曜ドラマ チェイス 国税査察官(2010)

檜山正道役

土曜ドラマ チェイス 国税査察官

インタビュー

 これは脱税というタブーをテーマにした非常にシリアスで素晴らしいドラマでした。僕の役は資産6000億という大富豪でしたが、そんな知り合いはいませんからお手本がいない(笑)。だけど僕なりに想像して、大富豪だからといって家の中でいいものを着ていないんじゃないかと思ったんです。関西弁を話しますから、大阪人の始末も身についているはずですしね。むしろ野暮ったいどてらのような衣装でいいんじゃないかと。変な格好しているけど、あの、おっさん大富豪なんやでという方が面白いでしょう。

 そんな中で相手を威圧したり、びびらせたりする。それは眼光ですね。ぎろっと見て、「おまえ何言うてんねん、あほな。そんなもん前からわかっとるわい」と。セリフはないけれど「俺をなめよったらあかんぞ」ということが頭にないといけない。相手の話にのってしまったらだめなんだね。聞くことは聞くけれど、それは違うと泰然としている。そうでなければあんな資産は残せませんよ。でも、やっていて気持ちの良い役でした(笑)。

 そういえば、最初の打ち合わせのときにプロデューサーから「中村さん、脱税……?」と聞かれました。「していません」って(笑)。脱税がテーマなので、みなさんにお聞きしているんですと話していましたけどね。

檜山の資産を狙う村雲(井浦新)は天才脱税コンサルタント

 出演者としてではなく、このドラマは客観的に見ても面白かったです。井浦新さん、斎藤工さん、そして絡みはなかったけれど江口洋介さんも良かった。とくに最後の村雲(井浦新)と春馬(江口洋介)の対決は気合いが入っていて、実に見ごたえがありました。あまりそういうことはないのだけれど、これは一視聴者として全部見ていました。

村雲の生い立ち、そして檜山との関係が明らかになる

ヒロシマ8.6ドラマ かたりべさん(2014)

荒木泰三役

ヒロシマ8.6ドラマ かたりべさん

インタビュー

 NHK広島局が制作したドラマで、僕は80歳過ぎて被爆体験を語ることになった人物の役をやりました。被爆した自分の妹をおんぶして自分たちの家があったところをたどった記憶など、本当に大変だったと想像できるので演じていても真剣でした。

“かたりべさん”とは被爆体験を若い世代に語り伝える人のこと
自身の体験をなかなか語ろうとしない荒木だが…

 僕がこの役をやると聞いて、いま白血病を患っていたり、いろいろな病気に悩まされている被爆された方たちから「かたりべさんを、よろしくお願いします」と泣きながら頼まれたんです。僕もおろそかにはできない、ちゃんとやりますからとお答えしたのですが、逆に感情が入りすぎて広島弁が少しあやしくなる場面もありました。ディレクターには「そこは勘弁してくれ」とお願いしたんです。広島の方が聞いたとき、少しアクセントが違うといったことがあるかも知れない。だけど、広島弁になっていなくても妹を背負った記憶、悲しい気持ちが出ればいいのではないかと思ったんです。あれには泣けましたし、完全に入り込んでいました。それだけインパクトの強い役でした。

荒木が語り始めたヒロシマの記憶

 あのドラマは、たしか賞(*)ももらっているでしょう。全国放送を見逃した方もいると思います。いい作品なのでNHKにもの申すじゃないけど(笑)、もう少し多くの人に見てもらえるようにしていただけたらいいですね。

*第52回ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞

BS時代劇 子連れ信兵衛(2015)

小泉道仙役

BS時代劇 子連れ信兵衛

インタビュー

 主演の高橋克典さんがあまり時代劇に慣れていないということで、最初に「どうしたらいいですか?」と僕に聞いたことがあったんです。そのとき、「いや、高橋さんはそのままでいいんだよ」と答えました。もともと、あまり人に教えたりすることが好きではないということもありますが、彼の持っている空気、真面目な人柄、誰にも好かれる資質などが、そのままこのドラマの世界にはまっていたからです。慣れていないところがいいんですよ。ただ、合間で彼に「山本周五郎は克典さんに合うと思うから、他のものも読んだ方がいいよ」とは話しました。

剣の達人・信兵衛(高橋克典)が他人の赤ん坊を育てることに
道仙は信兵衛を子どもの頃から知る町医者

 時代劇というのは、かつらや衣装で楽しいことは楽しいけれど、自分だけ目立ってもいけない。あの中で古くから時代劇をやっていたのは僕ぐらいでした。それが出てしまうとセリフのテンポが変わって違和感があるんです。ところが中村嘉葎雄が出ているからと作家が難しい言葉を書いてきたりするんですよ。僕はそれが嫌で「これは時代劇過ぎるからやめてよ」と演出家にお願いして、申し訳ないけれどあえてふつうの言葉に直させてもらったりしました。僕ではない人がそういうセリフを言ったら面白いかもしれないけど、僕が言っちゃうとダメなんです。そのドラマの空気が変わってしまいますから。

 

 このドラマは子連れの高橋さんがいいんです。ポスター撮影の様子を見ていたのですが、高橋さんがいて赤ん坊がいてそれが実に良かった。出来上がったポスターはシンプルで、「これだよ、これが子連れ信兵衛だよ。このポスターは山本周五郎そのものだね」と話したことを覚えています。

信兵衛と赤ん坊を取り巻く人々のあたたかい人情話

BS時代劇 鳴門秘帖(2018)

甲賀世阿弥役

BS時代劇 鳴門秘帖

インタビュー

 甲賀世阿弥は第1話で密命を受けて旅に出てしまい、あとは捕らえられてずっと牢屋に幽閉されていました。ただ、実は爪で牢屋の土を掘って脱出を試みる。そのために撮影中はずっと爪を伸ばしていました。

幕府転覆計画を記したとされる鳴門秘帖 世阿弥は密命を受け秘帖を探す旅に…

 時代劇のセットが充実している京都を離れての撮影だったので、美術さんがいろいろ工夫して土を掘り川のような水たまりを人工的に作ってくれたんです。本番で僕がその水たまりの泥水を本当に飲んだものだからスタッフがびっくりして、カットがかかるとあわててペットボトルを持って駆けつけてくれました(笑)。ほかにも雑草を実際に食べたりするので、おかしなものを食べてはいけないと、食べられるものを用意したりしていましたね。台本のト書きにはそこまで書いてなくても、映画ではそういうことはよくやっていましたし、巨匠は「それがいい」と言ってくれる。そういう中で育ってきたので、実際にできることをやらないと真実性がないと感じてしまうんです。だから僕にとっては当たり前のことでしたが、驚かせてしまったようです。

阿波に潜入した世阿弥はとらわれの身に

 このドラマは、かつてNHKで放送しましたね(*)。吉川英治の原作も読みましたが、いまこういう形でテレビではめったにできない大型時代劇をやるのは大変だと思いますよ。それをあえて挑戦するプロデューサー、若い人たちが演じるというのが新鮮だし、こういう機会が増えていけばいいですね。今回、出演している俳優さんたちも、それぞれ個性があってとても面白いと思います。ただね、法月弦之丞(山本耕史)の虚無僧姿を見たとき、ふと思い出したことがあるんです。僕は子どものころからほとんどの時代劇を見てきたけれど、実は虚無僧姿があまり好きではなかった。あの姿で、尺八で立ち回りをするというのが、子ども心になんだか不自然な気がしていたんでしょうね(笑)。そんなことを久々に思い出していました。

*1977年放送の金曜時代劇『鳴門秘帖』(主演:田村正和)

左:田村正和が演じる弦之丞 右:山本耕史が演じる平成版
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