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滝田栄 滝田栄

滝田栄俳優たきたさかえ

大河ドラマ 『徳川家康』

大河ドラマ 『徳川家康』

 徳川家康役の話をいただいたときはとても驚きました。もちろんすごくうれしかったのですが、なぜ僕が家康なのだろうと思い、原作本と渡された資料をよく読み込みました。しかし、織田信長や豊臣秀吉は想像していたとおりの人物で、彼らの心の中は読めるのですが、肝心の家康は掴みどころがなくさっぱり心が見えてこない。そこでプロデューサーに「なぜ僕が家康なのでしょうか」と聞いたら「よく言われている腹黒でたぬき親父のような家康の時代劇を始めるのではない。長く続いた悲劇の時代を完全に終わらせ、260年間いっさい内乱もない泰平の世の礎を築いた巨人の魂の物語を始めようと思っている。その魂を演じることができるのは君しかいない」とおっしゃられたんです。家康という人物について悩んでいた僕ですが、その熱い言葉にくどき落とされました(笑)。

 5歳の家康が織田信秀の人質になった際、彼は法蔵寺の和尚の元でしっかりとした基礎教育を受けていたようです。その後、7歳から19歳まで今川義元の人質になり、臨済寺で太原雪斎(たいげんせっさい)に教えを受けます。ドラマの中でも彼が臨済寺で過ごすシーンがありますが、人としての基本ができるこの少年時代にこそ、家康を形作る重用な何かがあるのではないかと思い、僕も臨済寺に行ってみようと思いました。一生懸命頼み込み、お寺で生活をさせていただいたのですが、食事をするときに必ず“五観の偈(ごかんのげ)”という食前偈をお唱えするんです。それは「食事をいただける行いを自分はしたかよく考えなさい」や「どういう過程を経て食べ物が目の前にあるのかをよく考えなさい」などという内容でした。400年変わらない生活を送るお寺ですから、おそらく家康もこの作法で食事をしていたのでしょう。しかも臨済寺の影響で家康は生涯一汁一菜を貫き、将軍になってからも絶対に贅沢をしませんでした。彼と同じ生活を経験したことで、僕も少しですが家康に近づくことができたような気がします。

  • 竹千代(幼き日の家康)
  • その師・雪斎(小林桂樹さん)

 あるとき、臨済寺の大老師にお釈迦さまが亡くなったときの涅槃図(ねはんず)を見せられ、「どうしてお釈迦さまを囲んでみんなが泣いていると思うかね」と尋ねられました。僕が「お釈迦さまほどの方になると誰もがお釈迦さまを失うことが悲しいのだと思います」と言うと大老師は「消えることのない安心はどこにあるのか。そのことを命をかけて人類で初めて考えたのがお釈迦さまです。命あるものにとっての大恩人だから皆が別れを惜しんでいるのでしょう。きっと竹千代(家康)は臨済寺で学んだ際に“お前が死ぬときは、命あるすべてのものが涙を流して別れを惜しむような武将になるのだよ”と教えられたのだと思います」とおっしゃられたんです。それを聞いて「ああ、これが家康の心の根底にあるのだ」と感じました。私欲で人の命を奪う武将とは違う、家康の本当の魂が見えた瞬間です。このことがわかっていれば家康を演じられる、もう大丈夫だと思いました。

 物語前半で描かれた正室の築山殿と長男の信康の話はかわいそうでよく覚えています。築山殿と信康が敵方と裏で通じているのではないかと嫌疑をかけられるんですね。しかも築山殿は家来と不倫し、信康はお坊さんを斬ってしまったことが重なり、織田信長に切腹を命じられます。その命令は絶対に断れないものなので演じていても本当に苦しかった。「私が戦に明け暮れてお前の教育を間違ってしまった。私の愚かさのせいだ。許してくれ、信康―っ!」と叫んだシーンは今でも忘れられないですね。築山殿も最後までかわいそうでしたが、築山殿を演じた池上季実子さんはとても素敵でした。僕なら築山殿を放っておかなかったですよ(笑)。当時はメイクするスペース“化粧前”が男性も女性も同じ部屋だったので、いつも僕の右側に淀殿役の夏目雅子さん、左側に季実子さんがいて、美女に囲まれて花園のようでした(笑)。

21歳の短い生涯を閉じる信康(宅麻伸さん)

  • 築山殿役の池上季実子さん
  • 淀君役の夏目雅子さん

 ドラマのシーンにもありますが家康は「百姓が心を込めて作ったものを踏み荒らすようなことがあってはいけない。刈り入れを待て」というようなことを言って、戦の時期も民のことを考えてずらしていました。遺言を残すシーンでは「天下は天下のための天下である。徳川一家のための天下ではない」という意味の言葉を言っています。この言葉は実際に史実として残っているんですよ。本当に家康という人は人間力がすごいですよね。絶対に不幸な時代を終わらせるという決意があった。ほかの武将が野望を持って動いても彼は動かずジッとしていましたが、それは天下を取るためではなく、どうしたら不幸な時代を終わらせられるのかという信念があったからだと思います。撮影後、僕は作品の影響で仏教を勉強しましたし、今では仏像の彫刻を作るようになりました。改めて家康の偉大さを知り、僕の人生まで変えてしまったのがこの『徳川家康』です。

大河ドラマ 『草燃える』

大河ドラマ 『草燃える』

 源頼朝から始まる源氏3代の鎌倉幕府樹立、承久の乱までを描き、最後は北条家による鎌倉幕府が朝廷軍に圧勝し、執権政治が確立する。滝田栄さんは、北条義時の親友で北条政子に恋心を抱く架空の人物、伊東祐之を演じた。

 『草燃える』は僕が初めて大河ドラマに呼んでいただいた作品です。北条家がついに権力を握る話なのですが、番組プロデューサーは「超エリートの義時が頂点に立ったという話だけではおもしろくない。悩んで苦しんで落ちて傷ついた人間が成長していく物語を描きたい」とおっしゃっていました。僕が演じる伊東祐之(十郎)は、まさに義時と対照的に人生を踏み外していく役どころです。目をえぐられ、顔を傷つけられ、落ちるところまで落ちた祐之がついに最後、闇の中で心の目が開き、人生の意味に気が付くのです。祐之は琵琶法師なので、琵琶の演奏を一年かけて練習し、最終回では『平家物語』を目を閉じて吟じる生演奏をしました。

大河ドラマ 『おんな太閤記』

大河ドラマ 『おんな太閤記』

 豊臣秀吉の正室・ねねに焦点を当てながら戦国の世を描く。秀吉を支えたおんなの戦い。滝田栄さんは秀吉夫婦と仲の良い前田利家を演じた。

 前田利家役はおもしろい役でしたね。秀吉が朝鮮出兵を言い出したときに、利家は秀吉をいさめるのですが、それがまた長いセリフで大変でした(笑)。橋田さんのシナリオは長いことで有名ですが、当時は同じことを最低3回は言うように言われていたんです(笑)。それだけ長いセリフを繰り返したことで、本当に橋田さんのシナリオのすごさに気づきました。テレビというのはいろんな人が見ていて、寝転がって見る人もいれば、台所仕事しながら見ている人もいる。けれど僕たちが橋田さんのセリフを全部頭に入れて完璧に演じることができれば、どんな状況で見ている人にも絶対に伝わるものになるんです。そう思うと、セリフを覚えることは大変でしたが、撮影はとても楽しかったです。

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