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内野聖陽 内野聖陽

内野聖陽俳優うちのまさあき

大河ドラマ 『風林火山』

大河ドラマ 『風林火山』

山本勘助が武田家に仕官するまでの姿は、道ですれ違った視聴者の女性の方から「内野さん、もっときれいにしてください」と言われたほど、ひどかったですね(笑)。ただ、「汚い」ということは、僕の中でとても大事な要素でした。汚いだけでなく、目をそらすような男でないとドラマが生まれない。隻眼で異形の浪人ものが、人の器を見抜く力を備えた信玄に見いだされ、力強くその人生を歩んでいく。そこにこのドラマの魅力と素晴らしさがあると思ったのです。眼帯の内側の目にもこだわり、特殊メイクのスタッフさんたちと試行錯誤を重ねました。さすがに、これ以上やると映像的に見るに堪えないレベルに達しそうになったときは、プロデューサーからストップがかかりました(笑)。当時、就職氷河期といわれ“就職浪人”と呼ばれる人たちが巷にあふれていました。そんな人たちが、逆境やハンディキャップにくじけることなく生きる勘助を見て「いいぞ」と言ってくださったことを覚えています。今回、久しぶりにドラマを見直してみて、そこにあるパワー、「負けないぜ」というスピリットを画面から感じることができて、「ああ、いいじゃない」と自画自賛しました(笑)。

 共演者の方々も素晴らしかったですね。信玄役の市川亀治郎(現四代目市川猿之助)さんは、映像作品に出演されるのは初めてでした。歌舞伎の演技がどう映り込むのか、毎回、ご自身の芝居をモニター画面でじっと見られていた姿が印象に残っています。芝居の引き出しがとても多い人で、歌舞伎というのは本当に物語の宝庫なんだなと思いました。シーンのシチュエーションについても「これは、こういうことね」と、その理解力の早さに舌を巻いた思い出があります。古典の世界にはいろいろな物が詰まっていることを改めて感じさせてくれました。上杉謙信を演じたGacktさんのことは“ガクちゃん”と呼んでいたのですが、とても頭の良いチャーミングな人でした。カメラが回っていないときは、亀ちゃん(亀治郎さん)と3人でいわゆるボーイズトークに興じて楽しかったですよ(笑)。一番、感心したのが音楽的アプローチです。僕らと違って、抑揚というか、音から入れるということにカルチャーショックを受けました。音楽の世界できちんとカリスマを保っている姿や、きれい好きで完璧主義者なところ、さらに論理的な思考など、謙信に通じる部分も見えました。逆に武田はそうではないんだ。もっと地べたを這うように農民の力を借りて生きてきたんだ。GACKTさんを見ていて、そんなことも感じさせていただきました。

さらに素晴らしい大先輩のお歴々が集まってくださっていました。千葉真一さんしかり、仲代達矢さん、緒形拳さん、佐藤慶さん、石橋蓮司さん……と、お名前を挙げたらきりがないくらい大スターばかり。毎回、違う王者を相手にしたタイトルマッチを戦っているようで、気を抜く暇がありませんでした。いつも、「負けられない!」みたいな気持ちでいましたね。そんな中、この作品で女優デビューとなった由布姫役の柴本幸さんとのお芝居もまざまざと覚えています。お芝居は初めてということで、どうしても堅くなりがちな彼女の魅力を引き出し、いかにいいシーンにするのか。リハーサルでも家に帰ってからも、ほとんどプロデューサー気分で悩んでいました(笑)。

 勘助の最期は、御屋形様への愛と敬意を込めて散るということに尽きます。そんな最高の死に場所となった川中島のロケでは、いま生きている自分のエネルギーから、スタッフ、共演者はいうまでもなく、家族や自分のご先祖様にいたるまで、すべてのエネルギーをかけて、あの場所にいることが大事だったんだなと感じています。最初に『風林火山』のポスターを撮影するとき、プロデューサーと考案した「生きることは愛すること」というセリフに尽きる部分がありました。千住明さんの素晴らしい音楽の力も大きかったし、ロケ撮影中にものすごい勢いでガンガン攻めるようにカメラで迫ってきたカメラマンなど、みんなの情熱と情熱がぶつかり合い、火花が散るような作品だったと思います。

土曜ドラマ 『街角』

土曜ドラマ 『街角』

新進写真家の男女が都会の中で出会う若者たちとの交流をドキュメンタリータッチで描いたドラマでキャストは全員新人だった。内野聖陽さんは報道カメラマンを目指す遊子(ゆうし)役。

 僕の映像デビュー作品で原点となるドラマです。このとき演出の富沢正幸さんと出会ったことが、その後の僕を決定づけていると言っても過言ではないくらいです。大御所の方はあまり出演されず、新人ばかりでしたから、リハーサルを重ねて磨き上げ育て上げるという形で徹底的に鍛えていただきました。オーディションでしたが、決めていただいてからのしごかれ方はすごくて、それはいまだに僕の宝になっている気がします。

連続テレビ小説 『ふたりっ子』

連続テレビ小説 『ふたりっ子』

優等生で美人の姉・麗子と、落ちこぼれだが将棋の才能抜群の妹・香子。対照的な双子の波乱万丈の人生を描いた。内野聖陽さんは香子と結婚する天才棋士・森山史郎を演じた。

 森山が最初に登場したときは銀縁のメガネをかけた嫌みなキャラで、朝ドラのヒロインの相手役なのに、なんでこんな人を使うんだと苦情が殺到して不評でした(笑)。宇宙が好きで狭いアパートで黙々と自分の世界を広げているという設定も敬遠された一因だったようです。その後、メガネを外しコンタクトレンズにしてから女性の心にはまったようですが、僕は将棋の狭い盤上に無限の宇宙を見ているところが面白いなと思いましたね。脚本の大石静さんが書かれた少し暗い破滅キャラというのが元々大好きだったんです。将棋を指すシーンは、台本のト書きにさりげなく「駒を握る美しい指」などと書かれているんです。「俺、美しくねぇや!」(笑)と急いで爪をきれいにしてもらいに行きました。あとはピシッと指すときの美しさや踊るような動きを研究するために、ポケットには常に飛車の駒を潜ませて、ごろごろと手でこね回していました。

大河ドラマ 『真田丸』

大河ドラマ 『真田丸』

戦国時代最後の名称・真田信繁(幸村)の波乱の生涯、勇気と愛に満ちた物語を三谷幸喜さんがオリジナルで描くドラマで、内野さんは徳川家康を演じている。

 家康といえば三英傑の一人として崇められ、非常に忍耐強く、少しくらいのことで感情を乱したりしない男というイメージでした。そんな人物でも究極のシチュエーションでは、もっと取り乱していたのではないか。それが三谷(幸喜)さんの切り口なんです。実はもっと情けなくて弱くてビビり症なところが絶対にあったはずで、そこを三谷さんが広げている。最初に台本を読んだときはびっくりしましたが、今までの何を考えているのかわからなかった家康に比べて一番共感しやすい人物になっていて、そこが面白いし楽しませてもらっています。

 基本的に、秀吉の前では猫を被ってるというか、良き部下を演じているのですが、その裏の心情がふと出るところがポイントかもしれないですね。秀吉の前ではいい子ちゃんなので、秀吉がいない時の家康を見つめてほしいかな(笑)。お互いにニコニコしながら裏で何考えているのがわからない。そんなスリリングな探り合いを楽しんでいただけるよう台本を一生懸命読んで演じています。

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