連続テレビ小説『あさが来た』
ドラマの舞台となるのは明治時代の日本。女性の社会進出がまだ珍しかった時代に、積極的に商売に取り組んだヒロインのあさ。そんな妻を優しく見守り支えたのが、玉木宏さん演じる新次郎だ。「現代では、働く女性がたくさんいらっしゃいますよね。でも、当時は男よりも前に出て行き、好奇心旺盛で仕事に対する熱がある人というのは珍しかったんじゃないかな。世間の目もあり、熱を持った女性が表に出られる機会は少なかったでしょうね。でも、あさの姿はすごく新鮮でありつつも、違和感なく受け入れることができています」。
一方の新次郎は、仕事よりも趣味にいそしむボンボン気質。しかし、そんな気質も「あさの存在によって変えられていく」と話す。妻としてのあさについて聞くと「頼りになりますね。仕事に夢中になる反面、家のこともできる限りのことはやっている。子育てもそうだし、旦那のことも思っている。だから、問題ないですよね」。
物語のなかで描かれる夫婦の愛情。「新次郎はあさが何かするごとに、惚れ直したり、あきれたりしています。ずっと惚れっぱなしではないところが、人間らしいです」。こうした描写から「新次郎のキャラクターは理解しやすい」と玉木さん。「新次郎はフワッと明るい人物。真面目な話をしているところでも、彼が現れることで空気が一変するような存在でありたいですね。一見、何を考えているのか分からない人間ではあるけれど、性格はすごく優しいので、それをベースに積み上げていけば、そんなにズレることはないかなと思っています」。
どちらかというと、軽やかで現代的なイメージのある新次郎役。しかし、物語はちょんまげ姿から始まった時代劇、それに大阪ことばというハードルもプラスされ、演技面での制約も多いのだと言う。「当初は型に縛られる部分もありました。しかし、日本家屋だったり着物だったりと“和”の要素に囲まれているうちに、落ち着くなと思うようになったんです。やはり、日本人ですよね。お茶の間にもそうした和やかなテイストを届けられればと思ったら、気が楽になりました」。
大阪ことばの印象も変化したのだとか。「勢いがあって強い感じから、はんなりとした優しさのあることばへとイメージが変わりました。新次郎の性格もありますが、そういうベクトルで大阪ことばを発したいと思います」。また、所作に関しても「品の良さを大切にしたい」と玉木さん。ドラマで度々腕を披露する三味線も「全く触れたことのなかった楽器でした。楽譜を読めるようになったので、家で早めに練習して、あとは先生と何度も合わせる感じです」。ミュージシャンの顔も持つだけに、三味線の名手の役どころもすんなりとこなしているようだった。