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斎藤工 斎藤工

斎藤工俳優さいとうたくみ

1981年生まれ。主な作品にドラマ『クロヒョウ』シリーズ、『最上の命医』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』など。NHKでは、『オトコマエ!』、『チェイス〜国税査察官~』、『運命に、似た恋』『ガラスの家』、大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』『八重の桜』などに出演。国内外で高評価を得た『blank13』監督など、クリエイターとしても活躍。連続テレビ小説『半分、青い。』では、映画監督・元住吉祥平役で出演。

土曜時代劇 オトコマエ!(2008)

武田信三郎役

土曜時代劇 オトコマエ!

インタビュー

 この作品を語るうえでどうしても外せないのが、僕にとってのNHKデビュー作となる木曜時代劇『風の果て』(2007年)です。このドラマのプロデューサーだった菅野高至さんが、1年後、まだ“海のもの”とも“山のもの”ともつかない僕をダブル主演という形で『オトコマエ!』に起用してくださった。当時、バイトをしながら役者をしていた僕を一気に引き揚げてくださったということも含めて、『風の果て』『オトコマエ!』への流れは僕にとって忘れられない、忘れてはいけないものとなりました。

家老跡取りの青年・鹿之助を演じた『風の果て』(2007)

 作品そのものは、かなりアップテンポで現代的な時代劇で、そのあたりも僕は好きでしたし、PART1で僕らの師匠役でご出演された藤村俊二さんをはじめ、大切にしたい出会いがたくさんありました。また毎回、ゲストの方を迎えるというのも初めての経験でした。いろいろな方がいらっしゃいましたが、すごいエネルギー、僕らが揺るがされるようなパワーを持った方ばかりで、それらに時代劇という枠の中で出会えたこともすべてが刺激的で新鮮な思い出です。

『オトコマエ!』信三郎はニヒルな遊び人で主人公・逸馬(福士誠治)の親友
仙人こと三宅又兵衛(藤村俊二)

 NHKさんが信頼して僕らに届けてくださった依頼は、もう少し心根の部分でいうと期待値というか、未来も見据えたエールのようなものも含まれていたと思います。そのチャンスでありエールにどうお返しするのか。それは『オトコマエ!』以降の自分の在り方で感謝を返すしかないと思っています。いろいろな作品に出演するたびに、菅野さんに届いていたらいいなという気持ちはいまだにあり、年賀状で「あれ見た、これ見た」といただけるのが本当に嬉しいです。厳しい方でしたから、口には出さないけれどリハーサルにいらっしゃると「まだまだだな」「青いな」と感じられているのがわかる。いまでも現場にいらしたら怖くてビビってしまいますが(笑)、本当に厳しいけれどたくさんの愛情をいただきました。

土曜ドラマ チェイス~国税査察官~(2010)

檜山基一役

土曜ドラマ チェイス〜国税査察官~

インタビュー

 最初に「ドラマ1」という準備稿の状態で第5話までの台本をいただいて震えるくらい面白くて、気がついたら読み終えていたという状態でした。意味が分からない部分を読み返しながらも、すべてがからからに乾いていく感じがして。ふだん台本は自分の役割の目線で見入ってしまうのですが、これは物語自体に坂元裕二さん(原作・脚本)の天才ぶり、鬼才ぶりというのがフルスイングしている気がしました。

 天才脱税コンサルタントという井浦新さんの役柄も素晴らしかったです。僕が演じた脱税を依頼する会社の社長・檜山基一と、井浦さんの村雲修次は最終的には兄弟だったことが判明します。

父の莫大な財産を受け継ぐ基一は村雲(井浦新)に相続税の脱税を依頼する

 印象に残っているのは、初めて檜山と村雲がコンビニかどこかで会話をしたシーンです。そこには麻生久美子さん演じる歌織もいましたが、とにかく兄弟に見えないようにということを意識していました。生活感のない村雲に対して、その真逆の座標をしっかり作っていかないと見ている人をだませないなというのがあったからです。二人が並ぶ最初のシーンですから、「まさか、この二人が」というところを入り口にしないといけない。当時、まだ右も左もわからないくらいの時でしたが、あれだけ面白い脚本を映像化するなら、そのロジックだけは明確に作為的に違和感のある共存のさせ方をしたいと思っていました。お互いの対比であり、それでいて磁石の同じ極のように近づきたいけれど離れてしまう。そんな不思議な距離感になっていきました。

脱税をもくろむ基一、村雲、歌織(麻生久美子)の利害関係が一致し…

ドラマ10 ガラスの家(2013)

澁澤仁志役

プレミアムドラマ 隠れ菊

インタビュー

 本当に主観でいうとこの作品に出会った以降の僕のキャラクターみたいなものが、ここで出来たというか(笑)、一つのカラーを今まで以上に導いてもらった気がします。

 作品のそのものからは非常に時代を先駆けているテーマ性を感じて、大石静さんさすがだなと思いました。本(脚本)自体がシェークスピアじゃないですけど、近しい距離の近親関係にあるいざこざ。人類がずっと命題として与えられてきている一つの何かであり、禁断とされ続けているからこその色香みたいなものを感じます。それは時代とともに変化し、今の時代は特に完全に清廉潔白を求められるのでモラル的にはあり得ないことではありますけど。ただ、そんな時代にさしかかるさなか、ドラマでそれも「ドラマ10」という女性をターゲットにしている枠の中で描く深み。そして男性にはかなわない奥行き。それらが本の段階で伝わってきました。

父の再婚相手・黎(井川遥)は母と呼ぶにはあまりに若く、美しく…
ともに財務官僚である父・一成(藤本隆宏)と仁志は対立を深めてゆく

 やっぱりNHKの作品は総じて本が素晴らしいです。民放と比べるわけじゃないですけど(笑)、本がどの段階で現場が動き出すかということだと思います。そういう意味では、本当に皆さんが吟味して焙煎をしたような状態のものを僕らがいただいて立体にしていく。スタッフの方と僕らが化学反応を起こしていくという作業でした。

 『ガラスの家』は、その中でも一番内なるドラマ性だった気がします。画としてはフランスロケなどダイナミックなものがありましたが、終始描いていたのは、誰にも言えない心の動き、裏腹な真実みたいなもの。実はそこがていねいに描かれていて、僕にとっても学びであり、自分が向き合うこと。ただ演じるではなくて、もっともっと内側を見ないと太刀打ちできないと感じるような役柄でした。それまではいただいたことのない役割でしたが、この『ガラスの家』を通じて、今日の私のどこか未来予想みたいなことを大石さんがしてくれていたのだと思います。

 共演者の井川遥さんはとても麗しい方ですが、女優さんが持っている男顔負けの根の強さみたいなものは撮影中にも感じました。お母さんをやりながらこの仕事を貫くということ自体素晴らしいと思いますし、尊敬する方の一人です。

土曜ドラマ ダークスーツ(2014)

一之瀬諒役

土曜ドラマ ダークスーツ

インタビュー

 この作品も『チェイス』に通ずるものがあります。表に見えている社会と裏側の社会というものが明確にあり、その相互関係で世の中が成り立っているということは何となくニュースを見ていてもわかっていました。しかし、そこにもし個人で切り込んでいくとしたら個人で組織とは闘えない。組織対組織にしないと太刀打ちできない。僕が演じた一之瀬は若手社員とパーティーを組んで、不正な裏金工作をしていた企業の取締役たちに立ち向かうという役柄でした。テーマ性と題材は確実に企業ドラマですが、相手の大きな山を少しずつ切り崩して自分の山にしていくというドラマでもあったんです。

営業マンの一之瀬は歴史ある電機メーカーで裏金作りが行われていることを知り…

 このドラマには実際に多くの俳優の先輩たちが出演して下さって、僕としてはこれは超えられないな、だけど向かうしかない。巨大な山がさらに大きな山になっているという縮図にもなっていました。まさに当時の状況がすごくリンクしたんです。悲しいことに大杉漣さんとは、あれが最後の現場になってしまいました。プライベートではこの後もサッカーをしたりしていましたが…。

井岡(大杉漣)は巨大グループ企業「ハシバ」取締役会の中心人物

 ドラマ中盤で漣さんが「斎藤くん、芝居ってなんだか、よくわかんなくなっちゃったよ」とおっしゃっていたんです。こんな僕に大先輩が不安なことを笑顔で吐露してくれたんです。僕もなんだかよくわかんないんです、お芝居ってものが。こんな大先輩が、キャリアを積まれている方もそんな不安を同居させながらも現場で役柄にむかっているんだ。そのことを、みなさんが背中で見せてくれていた。漣さんが、世代が違うからということではなく、垣根を跳び越えて、そうした先輩たちと僕らとの架け橋になって下さっていました。

 この作品はDVDにもなっていないし、いまたぶん関係者以外は見直すことができないのですが、僕の中ではこのとき自分の小ささを確認できたんですよね。それは俳優然とした小ささもあるのですが、未熟者というか、「青さ」というものも、ある意味再認識させていただけた。ただ、青いからできること、青いから見える角度や放てる光の色があるということも『ダークスーツ』という作品で気づかせていただくことができた。とても大事な時間でもありました。

 NHKさんには最初に『風の果て』『オトコマエ!』という作品で、世の中に出ていく靴と羽みたいなものを与えていただきました。さらに僕に必要な要素を『ガラスの家』で与えていただき、それが民放の『昼顔』という作品に繋がりました。その次が『ダークスーツ』なんです。だから、靴には泥がついた状態で履き込んできたことを報告しに戻って来た。そんな意識も個人的にはありました。そうして向き合っていた時間なので、準備、撮影、放送という一連の流れの中では語りきれないような、僕の心の置き所というか一つのターニングポイントになっている作品です。

連続テレビ小説 半分、青い。(2018)

元住吉祥平役

連続テレビ小説 半分、青い。

インタビュー

 2年ほど前、NHKの『運命に、似た恋』で北川(悦吏子)さんの作品に初めて参加させていただいていた時に、朝ドラを書くという話はご本人からうかがっていました。そのとき縁があったら出てくださいとおっしゃっていただいたのですが、とはいえ朝ドラのブランド、歴史、さらに朝向きの画面に合うのかとか(笑)、半分社交辞令と捉えていたんです。映画監督という役柄は、去年でも来年でもない。今の私に北川さんからいただいたメッセージかなと思っています。今回の役柄はどこか必然、大きな必然とタイミングだと感じています。

一流デザイナーのユーリとカスミ(原田知世)の純愛を描いた『運命に、似た恋』

 僕の初めての監督作品を撮影したのは『運命に、似た恋』の撮影直後でした。出来上がってかなり早い段階で北川さんにも見ていただいていたので、そのことも、何かきっかけになったのかなとも思います。北川さんから、映画祭の監督としての僕の表情が映っている写真をSNSで送っていただいたことがありました。「このイメージいいね」とおっしゃって下さって。僕の闘争的、エモーショナルじゃないところで北川さんに役をふくらませていただいたと思っています。

 ドラマで描かれているのは僕が一番映像業界を神々しく見上げていた90年代です。機材が躍進的に変化した時代であり、元住吉が使う映画の機材にあの当時の思いや時代背景、さらに業界の世界観が漂っています。僕も父が映像業界にいたことから、昔見学に行ったスタジオの空気が漂う空間になればいいなと思いますし、史実にこだわりたいですね。いままで見てきた90年代から現代の日本の映画監督の思いが、どこか元住吉に託されている責務みたいなものも感じています。

元住吉は居候の涼次(間宮祥太朗)を弟のようにかわいがる

 元住吉と僕には相通ずる部分もありますし、なるべく台本をなぞるより自分の中から生まれる感情を北川さんの脚本と合体させて生のものを作りたいという思いもあります。すごく僕と似ている部分というよりはたぶん自分が監督業でなく業界に対して思っていた悲哀が、テスト、本番と回を重ねるなかで本当に出てしまったかなと。そういう瞬間、記憶に留まっていない、あの瞬間を映像で切り取られていたことが個人的に多かったので、北川悦吏子さんは千里眼の持ち主かと思いました(笑)。僕が勝手に内側に突きつけられた責任を感じているだけなのかもしれませんが、独特の世界観だからこそ、じめじめした迫り来るやりとりがあります。

 鈴愛役の永野芽郁さんを最初に見たのはセットリハの合間、スタジオの片隅で気絶したように眠っていらっしゃった姿でした。
朝ドラのヒロインが背負っているものの、すさまじさを垣間見た気がしました。彼女のみずみずしく輝く底知れない才能も衝撃でした。その後、判明したのですが、永野さんの女優としてのパッションというか、その原動力として休息と加速があるということ。リハーサルでも鈴愛になった瞬間に彼女が発する成分みたいなものが圧倒的で、そのすごさを感じました。

元住吉とヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の出会い
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