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井浦新 井浦新

井浦新俳優いうらあらた

1974年生まれ、東京都出身。98年に映画『ワンダフルライフ』に初主演。『かぞくのくに』でブルーリボン賞助演男優賞を受賞。映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活躍。主な出演作に、映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、『光』(2017年秋)、『ニワトリ☆スター』(2018年)など。NHKではドラマのほか、Eテレ『日曜美術館』の司会も。2017年8月スペシャルドラマ『返還交渉人〜いつか、沖縄を取り戻す〜』に千葉一夫役で主演。

NHKスペシャル 最後の戦犯(2008)

吉村修役

NHKスペシャル 最後の戦犯

インタビュー

 この作品は僕が初めて参加させていただいたテレビドラマでした。映画の世界では10年ほど勉強を積ませていただきましたが、テレビドラマとの最初の出会いがこの作品だったことは幸運だったと思います。僕に声をかけてくださった柳川強監督と主人公・吉村の心情などをじっくりと話し合いながら作品作りが進められ、1日1日、ワンシーンごとに集中することができる現場でした。こんなにもていねいにテレビドラマを作ることができるのだと強く印象に残っています。

終戦直前、吉村修は上官の命令により捕虜米兵を殺害するが…

 また、このドラマが戦後BC級戦犯を裁いた横浜軍事法廷の最後の被告だった佐田野修さんの手記を基に映像化した作品だったことも、役者としては貴重な経験となりました。僕自身が吉村修(役名)さんになれるわけではないのだから、ゼロから100までを学んだうえで、けっして知ったかぶりをすることなく役に向き合う。吉村さんがどんな思いを抱いていたのか、どんな苦しみを感じていたのか。それを感じ取ったうえで、しっかりと表現するために集中力を高め、ていねいにお芝居をする。それが実在した方を演じるときの向き合い方だと。いま、振り返っても、すばらしい人間ドラマに参加させていただけたことをうれしく思っています。

戦犯として裁かれた実在の人物の獄中手記をドラマ化

土曜ドラマ チェイス 国税査察官(2010)

村雲修次役

土曜ドラマ チェイス 国税査察官

インタビュー

 国税局査察官の春馬草輔(江口洋介)と天才脱税コンサルタント・村雲が、巨額の資産を巡る攻防を繰り広げるというドラマでした。

 村雲は、ある意味サイボーグのような人物で、生身の自分とはまったく違いました。人間味を感じさせないというか、隣には絶対にいないだろうなと思わせる人物像を芝居で作っていけるというのは、役者としてはやりがいがありました。その一方、キャラクターになってしまったら危険だなという思いもありました。感情をあらわにすることなく、冷徹に淡々と仕事をこなしていく。そんな村雲にも家族がいて、母親の存在に囚われている人物だということは意識し続けていました。最終的にそこに着地するということも。

 この動画のシーンは最終回目前です。ここまで感情をあらわにしない、生きているのか死んでいるのかもわからない。ただ仕事だけをスムーズにこなしていた村雲が、初めて春馬さんから家族のことを指摘されるシーンでした。満開の桜が咲き誇る中、監督から「ここで村雲を解放するから、春馬に感情をぶつけるくらいやっていいよ 」と言われました。撮影中、一気に大嵐のような天候になり、桜の花が盛大に舞い散って、心情を表しているような天候に「これは、いいぞ!!」と感動したことを覚えています。

村雲は査察官・春馬(江口洋介)の言葉に初めて感情をあらわにする

 村雲のことは、悲しい人だなと思いながら演じていましたが、演じていくうちに魅力的な人物になっていくことも感じていました。それは、すべて春馬役の江口洋介さんの存在があったからこそ成立したのだと思っています。江口さんとはこの現場で初めてご一緒させていただいたのですが、豊富なキャリアの持ち主でさまざまな現場を経験されてきた方です。その江口さんが、正面からぶつかってきてくれたり、時にはすかしてきたり。春馬その人のように感情を込めて向き合い、熱く真っ直ぐな気持ちをぶつけてきてくださった。僕の演じる村雲は江口さんの春馬との対比で、さらに際立たせることができました。もし、江口さんがいらっしゃらなかったら村雲の色も全然違ったものになっていたと思います。本当に江口さんには感謝しています。

日曜美術館(2013~)

司会

日曜美術館

インタビュー

 美術や伝統工芸というのは、僕が役者になる前から強い興味を抱いていた分野で趣味のひとつでもありました。もちろん『日曜美術館』も大好きな番組で、よく見ていたので、その司会のお話をいただいた時はうれしかったです。

 一視聴者として見ていたころの印象は、美術が軸ではあるけれどそれだけではない。美術界に名を残してきた画家、作家、アーティストたちというのは、自身の命を削りながら作品を残してきているということを伝えてくれる。美術を紹介しながら、実は人物列伝だということでした。最初のうちは、この番組で美術そのものを楽しんでいた僕でしたが、役者を始めてからは人物を知ることができる番組にもなっていたのです。

山を歩き、自ら木を彫り、旅の仏師・円空の心に迫る

 司会を担当させていただいてちょうど5年目。こんなにも長い期間、司会をやらせていただいていることが信じられない思いです。それほど好きな番組なんです。かつては視聴者として楽しんでいた美術や人物。それが司会者として僕自身の興味を実際に見たり聞いたりすることができる。画面を通してではなく、直接、関係者や時には作家本人に尋ねることもできる。もちろん、作家にとっては作品がすべてだとは思いますし、質問に対して「聞くな」という反応を示される方もいます。それも含めて、言いたくないことを言う人のリアクションなど、僕にとって学べることが本当に多い番組です。

2017年から髙橋美鈴アナウンサーとともに司会を務める

ドラマ10 コントレール~罪と恋~(2016)

長部瞭司役

ドラマ10 コントレール〜罪と恋〜

インタビュー

 脚本は大石静さんで、大石さんらしさが炸裂したドラマでしたね(笑)。当時、大石さんが「不倫のニュースが話題になり、当事者は極悪犯かのようにつるし上げられるというムーブメントの中で、私自身にとっても挑戦です」とおっしゃっていたことを覚えています。

 僕が演じた長部は弁護士でしたが無差別殺人事件の犯人を止めようとして、石田ゆり子さんが演じた青木文のご主人を殺してしまい、そのトラウマから失語症となった人物でした。その事実を知らずに出会った二人がひかれ合うという物語です。それは許されることなのか。常識的に判断したら、あり得ないことかも知れない。そこで大石さんは「愛というのは世の中の人たちに否定されたとしても、そんな常識を飛び越えていく。それも一つの愛の形。丸く収まってしまうだけでは夢がないでしょう」と。

瞭司と文(石田ゆり子)の“許されざる恋”を描いた話題作
2人はお互いの過去を知らずに出会い、ひかれ合う

 台本も毎回、すごい展開になっていました(笑)。この動画も象徴的なシーンです。お互いが相手のことしか見えていない。周囲には傷ついている人もいるのに、そういう人たちを完全に置き去りにしている。演じていて、僕自身もわかってはいるけれど、どういう顔をして相手に伝えるのかなと迷いながらやっていました。長部の愛情表現ではあるけれど、見ている方にはどう映るのか。共感を得ようとは思っていませんでしたが、1話ごとに反応が楽しみでした。

 文役の石田ゆり子さんにとっても、かなりきついセリフが多かったと思いますが、彼女を通すとそんなふうに見えない。石田ゆり子さんのにじみ出る人柄が、文という女性の思いを否定的にではなく視聴者の方に届けることができたのではないかと思っています。

スペシャルドラマ 返還交渉人
~いつか、沖縄を取り戻す~(2017)

千葉一夫役

スペシャルドラマ 返還交渉人 ~いつか、沖縄を取り戻す~

インタビュー

 僕は台本を読んで初めて千葉さんのことを知ったのですが、沖縄返還に臨む強い意志、外交官としてのあるべき姿に圧倒されました。今のままの自分ではきちんと千葉さんを演じることができない。全身全霊をかけて向き合わなくてはいけない。そう心に刻み、撮影中は監督を信じ、尊敬する先輩方とご一緒させていただきながら、ワンシーンワンシーンをていねいに激しくお芝居をさせていだきました。

 その中でとくに表現したいと思ったのは、僕が感じ取った千葉さんの躍動感、生命感です。昭和の豪傑というか、お酒を飲むことも笑うこともすべてを含めて生きることに真剣だった。そんな姿が一番の魅力で、僕のように現代に生きる人間には足りない部分かもしれない。だからこそ、時代に抗い続けた一人の男の躍動感、生命感をとにかく表せたらと一生懸命でした。

千葉一夫は沖縄返還交渉に携わった実在の外交官
基地がもたらした水質の汚染、戦闘機の爆音…千葉は沖縄の人たちの苦しみに寄り添う

 その一方、仕事中の千葉さんの芝居をしているときは、ものすごい孤独を感じていました。千葉さんは怒りをぶちまけていない時でも、常に腹の底で怒り続けていた方です。大きな孤独を抱え、酒に酔って家に帰ったとき、子どもに戻ったような感覚で妻の恵子さんに自分を委ねている。そこは、まるで役柄が変わったかと思うくらい表情が違います。恵子役の戸田菜穂さんが、そんな家庭での千葉さんを叱りながらも、遠すぎず近すぎずほどよい距離で寄り添ってくださったことが、とても素敵でありがたかったです。

 千葉さんはアメリカ人よりも流ちょうな英語を話すと言われた方ですから、少しでも近づきたいと思い、しっかりと準備しました。英語の先生のもとで、ただ話すだけでなく感情面も分析しながら、1か月半ほどみっちり。その期間は家に帰ってもひたすら、ぶつぶつと英語を繰り返していました。

妻・惠子(戸田菜穂)は激務に追われる夫を支え、励ます

 もう一つ、事前に準備したことは、クランクイン前にひとりで沖縄の基地を視察したことです。戦闘機が思っていたより、ずっと近くを飛び立っていくことに驚き、また頭上近くに降りてくるときの恐怖感もすごいものでした。爆音もすさまじく、その音は体の中に残り続けています。この作品では、千葉さんの躍動感、生命感と同時に、沖縄で感じた戦闘機の爆音から感じた恐怖と怒りを腹の中にため込み、それを増幅させながらお芝居をしていました。

 ラストシーンは沖縄でシーミー(清明祭)をされている家族と、年を重ねた千葉さん夫婦とのやりとりでした。そのとき、この問題はまだ終わっていない、風化させてはいけないと強く感じました。この作品が、沖縄の問題を一人でも多くの方に知っていただくきっかけになればと思っています。

先祖代々の墓は米軍基地のフェンスの向こうに
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