金曜時代劇 清左衛門残日録(1993)
みさ役
インタビュー
私が演じたのは小料理屋「涌井(わくい)」の女主人・みさ。「涌井」では仲代達矢さん演じる主人公の清左衛門と佐伯(財津一郎)が酒を酌み交わしながら友情を分かち合う臨場感のあるシーンが描かれました。そこに一役買っていたのはお食事。さすがに日本酒はお水でしたけれど、ふろふき大根もハタハタも出来たての温かいものをスタッフさんが用意して下さっていたんですよ。私自身は、飲み上手の注ぎ下手なので(笑)、日本酒のお酌を練習したことを覚えています。そういうのって普段から身につけておかないと、にわかでできるものじゃないんですよね。だから、撮影期間中は一緒にお食事に行った人たちみんなに日本酒を飲んでもらい、お銚子(ちょうし)で猪口(ちょこ)に注ぐ練習をさせてもらいました。

みさは男性2人の間に座ってお酌をしながら、話を聞かぬふりで心で受け止めるような役柄。自分の言葉を口にせずに待つ、女の恥じらいを持った、男性にとって心の安らぎの場であるような存在だと思います。昔の日本女性の優しい心がにじみ出ていて、まさに男性の憧れの女性じゃないかなと思いながら演じていました。


そんなみさは清左衛門に心を寄せていたのですが、お相手を演じる仲代さんは大ベテランで大先輩。そばでお芝居をさせてもらうこと自体が大変光栄なことでした。とてもお優しく、また大人の男性の色気がある方で、ただ横に座っているだけで自然とかわいい女になれちゃうような感じがしましたね。2人のエピソードで私が一番好きなのは“雪うさぎ”のシーン。みさが清左衛門にお酌をしながら作った雪うさぎが、翌朝、枕元のお盆の上で溶けているという場面で、もしかしたら泊まったのかなと予感させるような演出が何ともすてきでした。

