大河ドラマ 獅子の時代(1980)
小此木恭平役
インタビュー
『獅子の時代』は、初めての大河ドラマであり、僕にとって初めての映像作品でもあります。
主演の加藤剛さんが当時、日生劇場へ舞台「リトル・ナイト・ミュージック」を観に来てくださったんですけど、僕がチェロを弾きながら歌う芝居をご覧になって「君は芝居も歌もやるけど、チェロも弾くんだねぇ」と、おっしゃって。本当は当てブリだったんですけど、思わず「はい!」って言っちゃったことを思い出します(笑)。でも、実際に演奏しているように加藤さんが思ってくださったのが、うれしかったですね。同じく主人公を演じられた菅原文太さんは「劇団四季」の一期生で大先輩でしたし、この作品の後、(姉・もん=小此木美津役の)大原麗子さんとステージ上でご一緒したり、いろいろなご縁を感じるドラマになりました。


それと、(大竹)しのぶちゃんとも一緒だったんですけど、牛鍋を前にして(大竹の演じた平沼千代が)「ベコ(=牛)だべ、これ? ベコは食えねぇ!」というシーンがものすごく印象的でね。のちに一緒の舞台に出た時、そのことを話したら「やっだ~」なんて笑っていましたけどね。それにしても、本当にそうそうたるキャストですよ。大河ドラマだから当たり前なのかもしれないですけど…尾上菊五郎さん、加藤嘉さん、沢村貞子さん! 根津甚八さんも伊東博文役で出ているし、大久保利通役に鶴田浩二さんですから、すごい顔ぶれですよね。その中に劇団四季の若僧が1人で入っていくというのは…やはり緊張しましたね。
今もそうですけど、「本番ッ!」っていう掛け声がかかると、硬くなっちゃってね。当時はNGを出すと、テープがもったいないっていう考え方だったから「絶対に間違えちゃいけない」っていう意識なんですよ。だから、のびのびと演技していなかったかもしれないですね。でも、映像を見直してみると、意外とそうでもなかったりして。何より、若い時の僕とウチの息子がそっくりなんですよ! 親子だから当たり前なんだけど、ビックリしました(笑)。

ただ、芝居自体はやっぱり青臭いですね、小此木恭平がそういう若者だからというのもありますけど。でも、この時は役のことを考えるより、「このまま行ったら俺も売れっ子になるかな」という下心が無意識に働いていた気がします。僕が演じた恭平という役は、ドラマの後半に向けてどんどんエピソードがふくらんでいく予定だったんですけど、この年(1980年)は(劇団四季と何度も共演していた)越路吹雪さんがガンで倒れられてしまったことを受けて、浅利慶太さんの判断で物語からフェードアウトすることになったんです。なので、ドラマの中ではどことなく中途半端な去り方をしたという印象になってしまいました。でも、あの若さで大河ドラマにアウトロー役で1年出続けていたら、間違いなく天狗になっていたでしょうね。顔だって、そんなに悪くないでしょう(笑)? きっとアイドルのように騒がれた挙げ句、今ごろは鼻をへし折られて何にも残っていなかったかもしれない。そう思うと、「まだまだ、お前はテレビや映画じゃないよ、舞台でやらなくちゃいけないことがあるよ」という天啓だったのだろうなと思えてなりません。
