大河ドラマ『花燃ゆ』
幕末から明治にかけての動乱のなか、ともに生き抜いてきた美和と楫取。美和の姉であり、楫取の妻であった寿がこの世を去るが、2人は互いを思いながらも気持ちを素直に伝えあえない…。そんな楫取はどんな思いを抱いていたのか。大沢さんに聞くと「寿とは一緒にいる時間こそ少なかったけれど、とても仲が良く、愛し合っていたそうです。楫取にとって寿はとても大切なパートナーだったという事実を、すごく意識しながら演じました」。一方、再婚相手となる美和とは「一緒に暮らすなかで、友情を超えた男女の繋がりを感じるようになる反面、“躊躇”する気持ちも生まれてきた」のだとか。「命を落としていった松下村塾の友を一緒に見送ってきたという意味では、美和は同志のような存在であったかもしれません。ただ、若いころから共に地獄を見てきたかけがいのない存在ですから、彼女との間には同志というだけではない絆のようなもの、割り切れない何かもあったと思います。それは寿と美和の姉妹両方に言えることです」。
公人としての楫取を通しては、それまでの価値観を180度変えた明治維新を迎え、時代の潮流を肌で感じることとなった。「何かを壊すエネルギーが序盤の物語だとしたら、後半は現代の基盤となる世界を作り上げていくプロセスに入っていくわけです。そういう意味では、いまを生きる自分たちにも共感する部分がすごくあって面白いですね」。ただ、史実に残っていない部分も多い分、演じる上での難しさもあったという。「どうとでもできてしまうということは、とても怖いことでもあるんですよ。気を付けて、ていねいに扱わないといけない。自分自身が思っている役柄と、ご覧になる方々のイメージがズレてしまってはいけませんから。ある程度、こちらから人物像をアナウンスしてしまっている部分もあるので、日々葛藤しながら演じていました」。
さらに役柄について「ワン オブ ゼムでいい」と、大沢さん。「歴史は偉人だけで作られたんじゃない。名前も残っていないけれど、実は国のために一生懸命がんばっていた人が大勢いる。そういう全ての人間に華があると思うので、スターであろうがなかろうが、ていねいに描いていきたいと思っていました」。
ゼロから世の中を作っていく難しい局面に差し掛かった楫取。妻に迎えた美和とともに歩む未来はどのようになっていくのか。ついに迎える最終回、2人はどんな未来に向かうのか、最後まで見守りたい。