ドラマ 壬生の恋歌(1983)
畑中三郎役
インタビュー
この作品がほぼテレビデビューでしたから、まったく無知なころで、ひどいものでした(笑)。ただ、刀も差したことがなければ着物もきちんと着られない、礼儀作法もなっていない、そんな百姓の小せがれたちの話だったので役柄とマッチしていたところもあって、勢いみたいなものだけでやっていました。

今もよく覚えているのは、僕が演じた畑中が斬首される前に命乞いをするというシーン。両手を後ろ手に縛られた状態で膝立ちになって、副長の土方歳三(夏八木勲)と伊東甲子太郎(竜崎勝)に「殺さないでくれ」と向かっていくんです。まだ芝居の強弱など加減がわからないころだったので、稽古の時から本気でダーッと向かっていったら思い切り顔から突っ込んでしまったんです。スタジオのコンクリートの床には砂がまいてあったので、顔をずりーっと擦りむいてしまいました(笑)。仕方ないので本番にはメークさんに傷を隠してもらって臨んだんです。

そのシーンが終わったとき、夏八木さんが「いや、久々に元気のいい芝居を見ることができた。これからも頑張れよ」と声をかけてくださったんです。夏八木さんとはその後、何本も仕事でご一緒させていただきましたが、卵からかえったところを見ていただいたような気がしてすごく印象に残っています。
