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萩原健一 萩原健一

萩原健一俳優はぎわらけんいち

1950年生まれ、埼玉県出身。1967年にザ・テンプターズのヴォーカリストとしてデビュー。次々とヒット曲を飛ばして人気を得る。解散後はPYG(ピッグ)を結成。1972年、映画『約束』での演技が高い評価を得て、音楽活動を続けながら本格的に俳優に転身。ドラマ『太陽にほえろ!』、『傷だらけの天使』、映画『いつかギラギラする日』、『TAJOMARU』など。2017年にはスタジオライブアルバム『LAST DANCE』をリリース。NHKでは、大河ドラマ『太平記』『元禄繚乱』『利家とまつ』、プレミアムドラマ『鴨川食堂』など。『どこにもない国』では吉田茂役を演じた。

土曜ドラマ 幸福の条件(1994)

ドクター式場役

土曜ドラマ 幸福の条件

インタビュー

 この作品の脚本は池端俊作さん、そして演出が佐藤幹夫さんで、僕が病気で途中降板した大河ドラマ『太平記』を手がけられたコンビ。おふたりが、「どうしても萩原とやりたい」と声をかけてくださったんです。

 断食道場を舞台にした物語で私は病院の院長役でした。私自身、31,32歳のころ年に二回断食をしたことがあり、精神的なことも含めて効果があることは体験していたので入りやすかったですね。撮影でとても印象的だったのが、最後のシーンを最初に撮ったこと。演出の幹夫さんから「最後どうしましょう?」と言われて、ガラス窓を叩いて空を指さす」と言ったら、「それでいいです」とオーケーになりました。現場に入った時には、すでに全体の画の流れを把握していたので、とくにあわてることはなかったですね。池端さんはテーマをきちんとお書きになる方なので、あまりよけいなことを考えずに向き合うことができました。

断食道場にやってきた編集者役の杉浦直樹さんとは、このときが初共演でしたが、そんなことを感じさせないくらい親しくお話させていただくことができました。飼っていらっしゃるという錦鯉のことなどをお話になっていましたね。ロケの期間中、ほとんどの出演者は水上コテージに泊まっていたのですが、私は院長という役柄上、少し距離をおくために、あえてみんなとは別のところで寝泊まりしていました。

式場のもと、健康雑誌の編集者・国分(杉浦直樹)も断食を経験することに…

土曜ドラマ 放送記者物語(1995)

脇田忠役

土曜ドラマ 放送記者物語

インタビュー

放送記者制度の生みの親というのが私の役どころで、岩間芳樹さんが書かれた全3回489ページの台本のほとんどが私のセリフ。本当によくしゃべらされました(笑)。私が演じた脇田という人物はNHKにモデルとなる方がいらっしゃったようです。単に新聞記者が放送記者になったと思っていたのですが、そうではなかった。脇田は新たに誕生した放送記者を育てるという役割を担っているから、伝達事項はこうだとか彼らに説明をしなくてはいけない。必然的にセリフも長くなるわけで、わざと長くしたわけではなかったんです。

 放送記者一期生の杉浦(高嶋政伸)がスクープをとってきたというシーンがありました。そこで脇田が「私は泥棒を教育した覚えはない!」「スクープというのは泥棒なんだ。ジャーナリズムの根源は紳士であることだ。魚の鱗だけ集めても魚にはならないんだ」と言ったセリフは、今も記憶に残っています。髙嶋さんは誠実に一生懸命に役と向き合っていて良かったですよ。とてもさわやかな好青年でした。一期生を演じた4人は全員、非常に熱心で現場で台本を見ている人はひとりもいなかったですね。私のこのときのヘアスタイルは役の年齢相応に見えるようにと、実際に額の髪を剃(そ)って作ったものです。自分の体は全部、役のための素材ですから。

新人記者・杉浦(高嶋政伸)は熱血漢

 余談ですが、このときセリフはすべて暗記していたので、リハーサル室で大江健三郎さんの『ヒロシマ・ノート』を読んでいたんです。ちょうど大江さんのノーベル賞が発表された時期でした。たまたま現れた演出の吉村芳之さんが、それを見て脚本家の山田信夫さんと話をされたそうで、その年の8月に放送したドラマ『されど、わが愛』で被爆二世の主人公を演じることになりました。セリフ覚えがいいという印象を持たれたようですが、決して得意ではないんですよ(笑)。

大河ドラマ 元禄繚乱(1999)

徳川綱吉役

大河ドラマ 元禄繚乱

インタビュー

 このときも脚本の中島丈博さんにセリフを少なくしてくれと言ったのに一番多かった(笑)。演出の大原誠さんと中島さんが、私を綱吉にしたいと意気投合したそうです。「桂昌院はどなたですか?」と聞いたら、「いま交渉中です」とのこと。京マチ子さんがいいと思っていたら、まさに京さんに交渉していたので驚きました。京さんはあのとき78歳という年齢でしたが、膨大なセリフを覚えられることもそうですし、あの感性がすごいなと思いましたね。田中絹代さんの後に来る女優さんの中では一番ではないかと思っています。

桂昌院(京マチ子)は息子の綱吉を溺愛する

 このときの綱吉も大変でした。私のところに来る役はみんな大変なんだけどね(笑)。だけど思い出はいっぱいありますよ。101スタジオに能舞台を作ったんです。そこで大名が将軍綱吉にあいさつに来るシーンの撮影をしたのですが、大原さんに「綱吉がもう飽きちゃっているというのはどうですか」とか、「トイレに立たないのか」といった話をしたんです。大原さんも「そうだな」となり、そこから、「おならをしちゃうのはどうだろう」ということになった。それなら浅野内匠頭(東山紀之)のときがいいだろう、音はしめったのがよいか、それともとあれこれ話し合い、とりあえず音を出しておいてあとから考えようとなりました。それによって浅野に非常に屈辱を与えるという場面になったのだけれど、実は綱吉にはそんな気はなかった。ただ、飽きちゃっただけなんです。

プレミアムドラマ 鴨川食堂(2016)

鴨川流役

プレミアムドラマ 鴨川食堂

インタビュー

 この作品も池端俊作さん、佐藤幹夫さんが手がけられているクオリティーの高い作品なので、ぜひ地上波でも放送してほしいですね。私の娘・鴨川こいしを演じた忽那汐里くんは俳優としての偏差値が高いので、これからいい作品に出会えたらさらに伸びるんじゃないかな。いま日本の制作者の中には、お金を儲けることや楽をすることに目が向いて美学が感じられないことがあるけれど、忽那くんは美意識をもってきちんと芝居をしているからクオリティーが高い。それでいてセリフに酔うことはなく正確なテクニックでナチュラル。オリジナリティーもありセンスがいいですね。本人が意識したかどうかわからないけれど、どこかオードリー・ヘプバーンの匂いもしました。

娘のこいし(忽那汐里)と板前の流が客の“思い出の味”を捜し当てる

 この作品の出演交渉の電話は、たまたまデスクがいないときに私が受けたんですよ。「何でもいいよ、出るよ」と答えたら演出の幹夫さんたちが台本を持って家にやって来た。元刑事で料理人という役だというから、「包丁さばきはできないよ、ばれるからね」と言ったんです。だいぶ前に板前を演じた『前略おふくろ様』のときは一流の料亭で修行したけれど、そのときとは役柄が違うと思ったからね。それでもト書きにはなかった桂剥(む)きをしながら、セリフをしゃべるという練習を家ではしました。料理の説明は長かったですね。あれは、そのときの仕込みで食材が急きょ変わったりするから、事前にもらうことができないんですよ。仕方ないですけどね(笑)。

 あと大ベテランの岩下志麻さんが、元料亭の女将で食堂の常連客という役で出演されていました。私が岩下さんの額に手をあてて「熱でもあるんじゃないの」と、ある種のプロポーズのようなセリフを言うシーンが印象に残っています。

妙(岩下志麻)は味にうるさい常連客、そして…

特集ドラマ どこにもない国(2018)

吉田茂役

特集ドラマ どこにもない国

インタビュー

 吉田茂役と聞いたとき、やりたいなとは思ったのですがビジュアルをどうしようとまず考えましたね。吉田さんの顔は丸みを帯びているのに僕は卵形だし、撮影までに太る時間もない。そこでマウスピースで頬(ほほ)のふくらみを出し、さらに髪の毛は額から頭頂部まで剃ることにしたんです。これでビジュアルはOKとなったけれど、実はマウスピースは冒険でもありました。口腔外科で作ってもらう際に、マウスピースを入れた状態で滑舌よくしゃべりたいと言ったら先生が「それは不可能です」。プロデューサーや演出がOKしないとできないけれど、もしダメな場合はアフターレコーディング(アフレコ)も考えました。それでも、まだ撮影まで1か月半あったので、大至急作っていただいて一生懸命練習したんです。最初のうちは1時間しか持たない。グリセリンを塗ってすべりをよくするなど、さまざまな工夫をしましたね。

 僕はふだんかけ持ちをしない主義なんだけど、この撮影前日が実はライブの最終日でした。撮影にもライブにも支障がないように仕込みと準備をきちんとすればクリアーできる。そう考えて実行したんです。マウスピースは壊れたり忘れたりする事態に備えて2つ作っていただきました。結果的にアフターレコーディングをすることなく、演じられました。

 この作品は、内野聖陽さんが演じた民間の学者・丸山が満州から150万人の日本人を引き揚げさせようと奮闘する話で、吉田茂は政治家としてそこに関わる。やや左翼的な民主主義の発想を持つ丸山は当時としては危険、しかも日米の外交がない時代。どうしたらアメリカとトラブルにならずに安全に実行できるか。KGBやCIAが見張っている中で、まず世論を動かすという吉田のやり方はさすが。興味深い決着のつけ方でした。

命がけで満州を脱出した丸山(内野聖陽・中央)らは吉田に同胞の引き揚げを訴える
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