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井上真央 井上真央

井上真央女優いのうえまお

1987年、神奈川県出身。ドラマ『花より男子』(TBS系)をはじめ、数々のドラマ、映画に出演。映画『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。『第62回NHK紅白歌合戦』で紅組司会を務めた。11年連続テレビ小説『おひさま』、15年、大河ドラマ『花燃ゆ』で主演。

BS日曜ドラマ『藏』(1995)

BS日曜ドラマ『藏』

 大正から昭和初期、新潟の蔵元・田之内家を舞台に、病で失明する少女・烈と、過酷な運命を生きる家族の愛憎と絆を描いた『藏』。原作は宮尾登美子だ。井上真央さんは、主人公・田之内烈(松たか子)の少女時代(6歳—8歳)を演じた。
 「20年前、7歳の時でした」というのだから、まだほんの子どもだったが、彼女にとって大きな意味のある出会いがあった作品だったという。それは病弱な母親に代わって烈の面倒を見る叔母・佐穂役で出演していた檀ふみさんとの出会いだ。「私に初めて『女優さんになりたい』と思わせてくださったのが檀さんでした。厳しくも温かいご指導をたくさんいただいて、いつかまたこんな素敵な方と共演させていただきたい。そんな思いで頑張ってきたんです」。その檀さんは、今回、『花燃ゆ』で文の母親を演じている。「20年という時を経て母娘役で共演させていただいていることがとても光栄です。成長を見せなければという緊張感もありますが…」とも。
 子役の少女が目の当たりにした良質な作品作りの現場、そこでの素晴らしい出会いが今の井上真央誕生に大きな意味を持ったのだから、まさに記念すべき作品だったといえる。

連続テレビ小説『おひさま』(2011)

連続テレビ小説『おひさま』

 『おひさま』は、戦争をはさんで日本人が生き抜いてきた昭和という激動の時代に、人々をおひさまのような明るい希望で包んだひとりの女性のさわやかな一代記だ。ヒロイン・須藤陽子を演じた井上さんは、「第1話で、陽子はお母さんから『これからの女性は太陽のように自分の力で輝くことができる。そうやって、みんなを明るく照らしなさい』と言われるシーンがあったんです。実は私、同じことを母から言われたことがあって」と話す。それだけでなく、近所に住んでいた90歳近いおばあさんからも「女の人は太陽のように笑ってなきゃいけないよ」と言われたことがあったとか。彼女自身がずっと心に留めてきた言葉だっただけに、「このメッセージは私が伝えなければ」と、『おひさま』との出会いに運命的なものを感じたそうだ。
 朝ドラのヒロインをつとめたことは、とても貴重な経験だったと振り返る。「スケジュール的にも体力的にも本当に大変で、どんどん撮影していかなくてはいけないので、緊張やプレッシャーなどを感じている余裕もないほどでした」。そんな中で「やはり長期の撮影は現場の雰囲気やキャストのチームワークが一番大事だということ。現場が楽しくあること、みんなで作ろうとする意識を常に持つことが一番の原動力になることを実感できました」。撮影中、風邪は引いたけれど「倒れないことが目標でそれは達成できたので自信になりました」とも言う。『おひさま』で培った経験や自信は、今、『花燃ゆ』の現場で大いに発揮されているようだ。

大河ドラマ『花燃ゆ』(2015)

大河ドラマ『花燃ゆ』

 井上真央さんが演じる杉文は、激動の幕末期・明治維新で活躍した志士たちを育てた吉田松陰(伊勢谷友介)の妹だ。しかし、幕末好き、歴史好きの間でも無名に近い存在で、彼女自身も「お話をいただいた時には、松陰に妹がいることさえ知りませんでした」と打ち明ける。だが歴史に名は残らなくとも、その生涯は劇的なものだった。
 「本当に波乱万丈の人生で、最初は尊敬する兄・松陰の松下村塾を切り盛りしていたけれど、やがて兄の死、久坂玄瑞(東出昌大)との短い夫婦生活を経て、毛利家の奥に入ります。そこでもたくさんの出会いを繰り返し、やがては姉の死後、小田村伊之助の後妻になり、最後は鹿鳴館まで」と、時代の変革に合わせて目まぐるしく境遇が変化したことに驚いたそうだ。
 「兄や夫の死、毛利家の守り役、再婚という史実に残る部分を紡いでいく時に、文がどんな気持ちで決断したのか、なぜその道を選択したのか。そこを埋めていく作業は難しいけれど楽しいですし、脚本家、プロデューサー、監督と創り上げていく実感があります」。最初から人物像を固定するのではなく、「人との出会いと別れを繰り返す中で、強い一面であったり耐え忍ぶ大人の女性だったりと、変化を遂げていけたらいいなと思っています」。それこそが文という女性のもっとも魅力的な部分かもしれない。

 あまり日本史は得意ではなかったという井上さんだが、文役を通して幕末の日本が持っていたエネルギーや息吹にふれたことも新鮮だったそうだ。「萩を訪れた時、こんなに小さな町から歴史に名を残すような人たちがたくさん出たこと。それも特別な人たちではなく、ふつうの若者が小さな塾で学び、そこから日本を変えようとしたこと。その思いの強さや、実際に倒幕を成し遂げてしまったことのすごさ。それが、この町から生まれたものだと思うと感慨深いものがありました」。
 吉田松陰の生き方にも感じるものが多いという。「あのカリスマ性、何かを作ったというわけでもないのに、なぜあれほど人の心に届き、奮い立たせることができたのか、とても興味があります」。その答えはドラマが導き出してくれそうだ。「これまで私の中の吉田松陰像は過激な人と紙一重の印象でしたが、文の目線や家族を描くことで、寅次郎の人間的な魅力や人としての温かさがにじみ出ているんです。ここにみんなが惹(ひ)かれていったのかなと撮影しながら感じています」。

 松陰を育んだ家族、杉家の人々もドラマの見どころのひとつだ。「杉家の人たちにとって松陰は本当に特別な人で何をやっても『寅次郎(=松陰)には寅なりの大義』がとか『寅らしいね』と本当に甘いんですよ(笑)」。自由奔放だけれどどこか憎めず、みんなから愛される松陰。しかし、それだけではなく杉家の人々ならではの思いもあったのではないかと言う。
 「父が畑仕事をしながら勉強をするなど、学ぶことが好きな家族。平凡な家族の中で自分たちでは果たせないことを、寅次郎なら実現してくれるかも知れない。いろいろなものを見せてくれるのではないか。そこに夢を託していた気がしています」。
 そして松下村塾から巣立つ多くの志士たちについても、「自分を犠牲にしても誰かのために何かのために戦おう、守ろうとする男性は素敵だし、かっこいいと思ったでしょうね」。女性たちは自分が参加できない分、彼らを支えてあげようと思ったのではないかと話す。しかし、文の夫・久坂玄瑞をはじめ、若くして亡くなった者たちも多い。「志士だけでなく母、妻、妹など、時代は違っても家族の悲しみは共通するはず」だとして、「文という妹の視点からその感情を描けたらいいなと思っています」と話してくれた。

土曜ドラマ 少年寅次郎(2019)
特集ドラマ 少年寅次郎スペシャル(2020)

車光子役

土曜ドラマ 少年寅次郎 特集ドラマ 少年寅次郎スペシャル

インタビュー

 国民的映画『男はつらいよ』の主人公、車寅次郎の少年時代を描いたドラマです。2019年に放送された土曜ドラマ版では、渥美清さんが寅さんで倍賞千恵子さんさくらを演じた映画の世界観を大事にしたいなという思いで演じていました。ですから『男はつらいよ』を何度もみて、登場人物の仕草を取り入れたりしていたんですよ。ドラマを見た人が懐かしくなって、映画を見返したくなればいいなと思っていました。

 私が演じるのは寅次郎の育ての母、光子。映画には登場しないキャラクターです。脚本を手がけられた岡田惠和さんとは連続テレビ小説『おひさま』をはじめ、何度もお仕事をしていて、今回の台本を読ませていただいたときも愛情を感じました。でも、光子役はこれまで演じたなかでも難しい役だったんです。私自身、子どもを持った経験がなく自分のなかに役と共通するものをなかなか見つけられず、光子さんのような肝のすわったお母ちゃんができるのだろうかと、悩みながら演じました。

 そんななかで、寅次郎を演じた大寅ちゃん(井上優吏)と小寅ちゃん(藤原颯音)ら、子どもたちの存在はとても大きかったですね。現場で子どもたちがケラケラと笑っている姿やしょぼんとしている表情などを見ると、ふっと愛おしさが生まれて、かわいいなという感情が湧いてくるんです。そういう気持ちが役と重なりました。そう思うと子どもたちにお母ちゃんにしてもらったのだと感じますね。

 2019年に放送した土曜ドラマのラストで柴又を旅立った寅ちゃん。スペシャル版はそんな寅ちゃんが大好きだったお母ちゃんや家族のことを想い出す物語です。私が特に好きなのは、長男の昭一郎(山時聡真)と寅ちゃんの兄弟のシーン。小さい2人がお互いを思い合っているのが伝わって微笑ましくてキュンとしてしまいました。また、家族揃って布団の打ち直しをする場面も気に入っています。当時は家族みんなで集まって、おしゃべりしたり、笑い合ったりしながらひとつの作業をしていたんだと思うと、何気ない当時の日常が感じられました。当時を知る方には懐かしく、ご存知ない方には新鮮に映るのではないかと思っています。

 くるまやのメンバーとは土曜ドラマの撮影時に本当の家族のように仲良くなり「また再会できたらいいね」と言い合っていました。ドラマの続きはどんな感じになるだろうなんて、想像したりしながら(笑)。それから1年、コロナ禍のなかで「本当にできるのかなぁ」とそわそわしながらも、スペシャル版が実現できて本当にうれしいです。私自身、この大変な状況のなかで、共演者のみなさんと顔を合わせることができてホッとしました。ドラマも今は会えない大切な人を思いたくなるような温かい内容になっていますので、家族で笑ったり、ほろっとしながらご覧になっていただければと思います。

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