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金田賢一 金田賢一

金田賢一俳優かねだけんいち

ドラマスペシャル 『冬構え』

ドラマスペシャル 『冬構え』

 妻に先立たれた老人が全財産を現金化し、晩秋の東北地方へと旅に出る。実は、“死に場所”を探して――。この孤独な老人・岡田圭作役を演じたのが、当時81歳になられた笠智衆さんでした。僕と岸本加世子さんは、老人が旅先の宿で出会う若い板前と部屋係のカップル役。僕は役者としてはすでに7年ほどの芸歴はありましたが24歳で、ドラマで描かれる“老境”とは無縁のころです。「あのじいさん、おめぇに気があるかもしんねぇから気ぃつけろ」なんていう東北訛りのあるセリフを、方言指導の青森伸(しん)さんから細やかに指導していただきました。それが結構難しくてね。この前年に出演した大河ドラマ「獅子の時代」の弥太郎役に続く東北出身の役どころで、僕は東京育ちゆえに、伸さんからは「本場(の訛り)に比べたらまだまだ!」なんて言われたものです(笑)。撮影も、僕は宮城の鳴子温泉のロケから入らせていただいたと記憶しています。そういえば、ロケでは青森の恐山にも行きました。スタッフのおかげで、閉山期の人気のない恐山を歩いたことを覚えています。ちょうど夕暮れ時でカラスの鳴き声が遠くに響き、一陣の風に風車がカラカラと回りだす。どこまでも静かというか、ズンとした空気の中、もし黄泉の国があるならば本当にこんなところなのかもしれない、と若いながらに思ったものでした。

  • 部屋係の麻美(岸本加世子さん)
  • 「気があるかもしんねぇから気ぃつけろ」
  • 青森・恐山の風景

 初めてご一緒させていただいた笠さんは、小津安二郎の映画の世界そのままの方。役を離れて話すときも、「金田くんはぁ……」と、熊本弁がかすかに抜けないあの朴とつとした感じで声を掛けてくださいました。ドラマ上での共演シーンはそれほど多くはなかったのですが、かわいがってくださって。ご高齢ではありましたが、笠さんのやせ形ながらがっしりとした背中はとても大きく見えました。撮影現場では、スタッフから我々共演者すべてが全神経を笠さんに向けていたような印象です。笠さんの足元ひとつに気を配りながらの撮影でしたが、笠さんは立っていらっしゃるだけで存在感があり、断崖絶壁にたたずむだけで世界観ができてしまう、そんな唯一無二の雰囲気を持った方でした。そういえば撮影終了後の打ち上げの席で、俳優・スタッフともども盛り上がり、笠さんも気分が乗ったのか「ワシも何かやる」と言い出したんです(笑)。昭和の日本男児の代表のような、シャイで無骨な笠さんが!? と我々も固唾をのんで見守ったのですが、「恥ずかしいから、みんなの方を向くのはやだ」と言ってね。宴席の我々の方を向かず、床の間の方にひとりで向かうと、「雨は降る降る 陣羽(じんば)は濡れる♪」と「田原坂」を歌い出した(笑)。歌を歌っても笠さんはやっぱり“笠さん”でしたね。そのときの後ろ姿や、歌い終えて頭をぼりぼりとかいて照れ臭そうにニタッと笑った顔、すべてが忘れられない思い出です。

 岸本加世子さんとは撮影後、一緒に東京までのんびりと新幹線で帰りました。お芝居も自然体の方ですが、普段もとても気さくで、役者同士いろいろな話に花が咲いて楽しかったですね。笠さんをはじめ沢村貞子さん、藤原釜足さん、小沢栄太郎さんといった、昭和を代表する方々が多数ご出演されていたドラマでしたが、そうした大先輩のことを話せる人も少なくなってしまいました。だとすれば、諸先輩方の足跡を少しでも語り継いでいくことが、これから僕ら世代が果たすべき役割でもあるのかもしれません。この作品は放送から約30年経った今もなお、支持を集めていると聞いています。当時はまだ、老いや高齢社会が抱える問題をここまで鋭くえぐった作品は少なかった時代です。そんなときに、ある種の「終活」のドラマを描いた脚本家・山田太一先生の、先を読む力に改めて尊敬の念がこみ上げてくるほどです。平成の日本は、残念ながら安心してお年寄りが暮らせる社会とは言い難いかもしれません。老いを深く描きつつも、このドラマの中にはまだまだ昭和の人情も生きていました。もはや“理想の物語”ですらあります。それでも時代を超えて愛される「冬構え」という、静かで胸に迫る名作に携われたことに感謝し、これからも俳優として歩んでいきたいと思います。

  • 藤村アキ役 沢村貞子さん
  • 昭二の祖父・惣造役 藤原釜足さん
  • 篠崎役 小沢栄太郎さん
  • 脚本家 山田太一さん(1985年撮影)

大河ドラマ 『獅子の時代』

大河ドラマ 『獅子の時代』

脚本家・山田太一によるオリジナル脚本。高名な武将やスター的な人物にスポットを当てるのではなく、明治維新という大変革の舞台裏で歴史に翻弄された人々の姿をドラマチックに描いた意欲作。金田さんは斗南の貧農の子・弥太郎役。警視隊に志願し西南戦争へと出征する。

 読売ランドの横で、西南戦争のロケをやったんです。今のように兵や馬を、CGで増やしたりすることが難しい時代。大砲をドーンドーンと打ち合う激戦の様子も大量の火薬を使って再現したのですが、リハーサルでは進む方向に旗が立っていて、なんとかそれを目印にして炎の中をくぐり抜けたんです。ところがいよいよ本番となったら、その旗がどこにもない(笑)。スタッフに聞いたら、「大丈夫、大丈夫!」なんていうけど心配でね。でも、迫力あるシーンに仕上げるため、無事駆け抜けました(笑)。主演は菅原文太さん演じる架空の会津藩士・平沼銑次。共演には加藤剛さん、鶴田浩二さん、丹波哲郎さんというすばらしい方々が顔をそろえました。特に文太さんは、映画『仁義なき戦い』『トラック野郎』といった人気シリーズ直後の勢いそのままで現場にいらして。文太さんと丹波さんが酒を酌み交わしながら牛鍋をつつくシーンがあったのですが、スタッフが用意したダミーのどぶろくでは演技にならないと納得せず、 “ホンモノ”を入れて撮影スタート。そしたら2人が示し合わせたようにミスを連発したんです(笑)。牛鍋をつまみに、ついには本気で酔っ払っていたようでした。そんな豪胆な文太さんも、鶴田浩二さんがスタジオに入られるときはすっと専用のディレクターズチェアから起立して、頭をしっかりと下げて出迎えていらっしゃいました。そんな姿が、ふと懐かしく思い出されます。

  • 大迫力!西南戦争のシーン
  • 金田さん演じる弥太郎は志願して前線へ

丹波哲郎さんと菅原文太さんが酒を酌み交わすシーン

  • 本物の酒で演技?!
  • 苅谷嘉顕役 加藤剛さん
  • 大久保利通役 鶴田浩二さん

大河ドラマ 『風林火山』

大河ドラマ 『風林火山』

原作は井上靖の同名小説。井上作品の大河ドラマ化としては初となる。脚本は大森寿美男。武田信玄(市川亀治郎)の軍師として知られる伝説的な人物、山本勘助(内野聖陽)の生涯を全50話で描いた。金田さんは血気盛んな長尾家重臣・柿崎景家役を演じた。

 もう10年近く前になるのですね。私は長尾家(上杉家)側だったので、上杉謙信役のGackt(現:GACKT)さんと、現場ではご一緒する機会が多かったんです。多才なアーティストですし、謎めいた雰囲気の方かと思っていましたが、礼儀正しく誠実な人柄、ユーモアあふれる会話で現場を盛り上げる。そんなGacktさんに、すっかり魅了されました。いまだに誕生日には連絡をくれる彼の優しい心配りには、いつも感謝しています。また、共演者で印象的だったのは緒形拳さん。緒形さんはこの翌年他界されたのですが、当時からすでにお体は本調子ではありませんでした。また、昔と違ってデジタルカメラなどの撮影機器のため、スタジオは温度管理され、とても寒いんです。セットの板の間は冷えきって、拳さんには堪えたと思うのですが、辛い顔をなさることもなく「おう!金田!」なんて、昔父子役をやったご縁でいつも温かく声を掛けてくださいました。私自身そんなにNHKの作品に出演している方ではないのですが、どの作品にも色あせぬ思い出がたくさん詰まっていて、振り返るとたくさんのすばらしい出会いがそこにはあったと思えるのです。

長尾景虎(上杉謙信)役 Gacktさん

  • 重臣 柿崎を演じる金田さん
  • 景虎の軍師・宇佐美役 緒形拳さん
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