2020年11月23日 (月)鉄道フォトライター 矢野直美のおススメ鉄道旅
「広尾線」(北海道)


広尾線

広尾線

 全国を鉄道で旅してきたフォトライター・矢野直美さんが、「みちしる」の動画の中から、日本各地、おススメの鉄道、駅舎、車両を紹介していきます。今回は、すでに廃線になった、北海道の広尾線です。1970年代、「愛の国から幸福へ」で一大ブームを巻き起こした路線です。

矢野直美さん





矢野直美

 北海道札幌市在住。国内外を旅しながら写真を撮り、文章をつづる「フォトライター」。鉄道旅をこよなく愛することから「鉄子」の愛称でも呼ばれる。著作に『汽車通学』『ダイヤに輝く鉄おとめ』『おんなひとりの鉄道旅』など。

広尾線

 当初は縁起の良い駅名として、鉄道ファンや一部の旅人の間でだけ話題になっていた幸福駅。一躍その名を馳せたのはNHK「新日本紀行」で取り上げられてからといいます。「愛の国から幸福へ」というキャッチフレーズが生まれ、広尾線の旅は1970年代に一大ブームとなりました。
 廃線から時間がたった今も幸福駅は人気です。国内外から人が訪れ、幸福という響きの前ではきっと誰もが楽しい気持ちになるのでしょう、観光シーズンはたくさんの笑顔と歓声に包まれます。
 シラカバ林や花畑に彩られる駅舎跡には、古い木造の待合室が遺され、プラットホームには昭和の時代のディーゼルカーが保存されています。北海道らしく絵になるたたずまいに心惹かれ、私も繰り返し足を運んでいます。
 時には敷地内の木にエゾリスの姿を見つけます。エゾリスは大きくつぶらな瞳がとても可愛らしく、どんな硬い物も噛み砕けそうな立派な歯と長く鋭い爪がいかにも野生動物で、そのアンバランスさがたまらない魅力です。落葉の季節は、色づいた木の葉が風に舞うシーンや大地にかさかさと落ちる音になんともいえない風情を感じます。冬も素敵。「十勝晴れ」と呼ばれる青く透明な冬空の下、きゅっきゅっと雪を踏みしめながら歩く感覚はまさに北海道ならではのものです。
 ちなみに現在の現役路線で「幸福」の名がつく駅は、九州を走る「くまがわ鉄道」に「おかどめ幸福駅」があります。こちらは、幸福をもたらすとされている「岡留熊野座神社」が駅の近くにあることからその名がつけられたといいます。

今も多くの観光客が訪れる幸福駅跡
今も多くの観光客が訪れる幸福駅跡


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