死んだ母の乳を吸う赤ちゃん 【東白金廣一】

昭和20年4月、那覇市首里と南城市知念との中間と思われる農道で東白金さんが見た光景。当時、那覇警察署で勤務をしていた東白金さんは、署員の食糧と壕を確保するよう指示を受け、同僚と3人で知念に向けて出発した。艦砲射撃を避けるために夜移動していたが、米軍の照明弾であたりは明るく照らし出され、近くで迫撃砲が爆発する様子や、死んでいる馬が見えた。そしてその近くに、30代くらいの女性が倒れていた。女性は死んでいたが、その女性の上で動く影が見えた。赤ちゃんだった。弱々しく手を動かし、母親の乳を探っていた。任務を負っていた東白金さんはそのまま道を急いだ。そうすることしかできなかった。 東白金さん『そのときは自分のことしか考えられなかった。照明弾の光のなかで見た親子の姿は今も頭から離れない』