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タイトルタイトル: “おれの棺桶がこれか” 番組名番組名: [証言記録 兵士たちの戦争] 人間魚雷 悲劇の作戦 ~回天特別攻撃隊~
名前名前: 河崎 春美さん(回天特別攻撃隊 戦地戦地: 日本(山口県大津島)  収録年月日収録年月日: 2009年1月20日

チャプター

[1]1 チャプター1 人間魚雷「回天」  11:09
[2]2 チャプター2 死と隣り合わせの訓練  02:41
[3]3 チャプター3 回天の操縦  06:33
[4]4 チャプター4 回天作戦の標的  07:32
[5]5 チャプター5 終戦  01:44

チャプター

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番組名番組名: [証言記録 兵士たちの戦争] 人間魚雷 悲劇の作戦 ~回天特別攻撃隊~
収録年月日収録年月日: 2009年1月20日

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これが継ぎ手、本体と頭とのね。この鉄板外したら、これを外せるようになってる。だから火薬そのものはここらから前までが、1トン550だから正味が。んで上にあるのが……、んと、これはないわ、これは練習てき(艇)だから。あれ、信管がついてるんだけど、その信管はこれにはついてない。

Q:その火薬のすぐ後ろはどうなってるんですか。

火薬のね、この練習てき(艇)と実用練習てき(艇)とちょっと違うんだけど。

Q:ま、ちょっと実用練習てき(艇)の話でしていただくと。

で、ここ、ここからあの継ぎ目のところぐらいまで酸素が入ってるわけ。酸素のあれが、瓶がね。それで後ろにももう1本入ってるわけ。そのほかにって言えば、普通の空気を高圧で装填して、縦舵機だとか、それからジャイロだとかを回すための空気があるわけ。それからいちばん底のほうには海水タンクがあって、バラストを取るための前が3つ、後ろが2つのタンクがついてるわけ。だから酸素の消費量によって、中でゲージでわかるので、それによって水を何リッター入れるっていうのを計算してやるわけです。

Q:フタってけっこう重いですね、ハッチ。

ハッチけっこう重いですよ。

Q:河崎さんにあけて見せてほしかったんです。

それはね、今となってはこれ力がとても入らんけどね。要するにこれだけの重さあって、締めつけても、なおかつ水圧が大きいから水が入ってくる可能性があるわけ。それで整備員に上から、こう、回し閉めをさせるわけです。

Q:ここから入っていくんですか。

訓練のときはここから乗って、で、潜水艦で出ていくときには、潜水艦から潜水艦の中からここへ入れるように、下にもハッチがあるわけ。これは訓練用のてき(艇)だから、下部ハッチはないけど、あの潜水艦用にはちゃんとハッチがついて、で、そこから入って、で、自分の席に座るわけ。こっちはもう最初から、潜水艦用の場合にはもう上から十分締めてあるわけ。水圧が1メーターで0.1気圧ずつ増えるから、かなりな水圧になってくるわけ。

要するにね、水が漏れないように、上から閉めるわけです。で、中で乗ってて閉められるんだけど、上向いてこう力入れるとね、力が十分入らんです。だから水が漏ってくる。そのために上から閉めるわけです。だからハッチを開ける装置っていうのは、今のこれの内側についてた小さいハンドル、あれがそうですから、外にはついてない。中にしかついてない。シャフトが上へ出てますから、それをこう閉めることによって操作してるわけ。で、実際にどうだったら、大津島(山口県周南市)でも光(山口県光市)でも平生(山口県南東部の町)でも、沈んで出てきたやつがおるわけです。水の中まで整備員が行って開けることはできないですから、中の人間があけたんですね。で、実際にね、一番、最初にあったのは19年の年末ぐらい。大津島(山口県周南市)で発射した直後にもう回天突っ込んで。ところが回天突っ込んだときに、前のほうが破れたわけです。破れて、自分はこの潜望鏡に頭ぶつけてるから人事不省になってるわけ。ところが破れた所から水が入ってきて、だんだんこう、水がこうなってきて気がついたわけ。で、そのときにそいつがあまりにも沈着な行動をしたっていうんで、いろいろ、教育資料になったんですけどね。要するに、これはもうこのままでいくと、内圧、空気があの海水で押されて内圧が高くなると。そうすっとハッチをもうできるだけ緩めておけば、空気がそこから逃げ出す。そうすっと何とかなるだろうっていうんで、ハッチを思い切り中から緩めたわけです。棒を使ったり何かして。

Q:じゃあ中から開けることはできるということですか。

できるわけです。ハンドルをテコを使って回すっていう道具もありますしね。

Q:でも中から開けるのはけっこう大変だということですか。

だから中から脱出できないということが、非人道的な兵器であるということの象徴のために、ことさら宣伝された状態があるわけです。

最初に僕の場合には、ぶっつけ本番で一人で乗れと。それまでに訓練に余裕があれば、もう一人先に乗せて、操作するのを見学させるわけね。だから黒木さんが死んだのは、見学の位置の所へ座って、初めて乗る人間に対して指示を与えてたわけや、指導。それがうまくいかなかったんで。僕の場合にはもうぶっつけ本番で、「あした乗れ」ということで。そんなもんね、こんな大きな機械をそう簡単に動かせるような気はしないわね。で、一人で(乗って)ガタンとこうハッチ閉められてしまったら、もう怖いだけよね。怖いっていうかね、万一各部分の機械が故障したらどうしようかっていう、それが先に立つね。で、ま、何とかね、落ち着いて操作ができるようになるのは3回目、4回目ぐらいから。で、5、6回目になると、暇になったら鼻歌歌ってるね。そのくらいになるとね、機械がそう簡単に故障するもんじゃないっていうことがわかってくるわけよ。で、機械に対するまあ信頼を持つようになるから、恐れなくていいっていうことになるんだけど。まあ訓練はだいたい20回から25回。そして潜水艦との、潜水艦の上にこれを積んで、潜水艦から発進する訓練を5回ぐらい。だから25回から30回ぐらいまで乗るわけね。そうすっと、一応免許皆伝のようなかたちになるわけ。だから飛行機なんかと比べたら、随分訓練時間は少ないわけ。あの飛行機は100時間乗って、どうにかまともに飛ばせるかっていう程度です。これはもう1時間乗ってても、25時間から30時間しか乗ってないわけだから。

事故が多かったっていうのは、その操作の間違いと、それから、海底の状態をあんまりあの知らずにやって、突っ込んでしまうとかね、島にぶつかるとかいうことが多かったわけやね。そうすると、島にぶつけたりなんかするとね、この潜望鏡をだいたい走ってる間、下ろしてるから、目の前にこうぶら下がってるわけ。だからそれに頭をガツンとぶっつけて、頭割るようなことが再三あったわけだけど。だけど、それは事前に計画を十分立てとけば、そう簡単にぶつかるもんじゃない。僕はいっぺんもやったことない。

Q:操縦って難しいように思うんですけど。

操縦はね、これだけ図体が大きくて、これを右左へ回すのに、あの後ろのほうの縦の狭い鉄板だけなの。

Q:それちょっと見せてもらっていいですか。

これが縦だ、縦のほうだ。これが右左向いて、頭をこう動かすわけ。んで、これがアップダウンになるから。で、アップダウンのほうはちょっと大きいけど、その左右のほうは小さいから、旋回半径がだいたい450メーターから500メーター近くある。それがいちばん、運動性能で悪かったところ。それから、これが中で人力操舵っていって、手で回してこれに角度を与えるわけ。で、これの補助をさせるわけ。

ここらにあるスイッチボックスがあるわけ、電気ね。それをまず電動縦舵機発動ちゅって、ジャイロに電気を流すわけ。んで、ジャイロをまず回転させると。

Q:エンジン入れるようなものですか。

スイッチ入れて。で、エアーを吹きつけるように、だんだん左の、右の奥からこう回って、左のこっち側にある起動弁ていうのがあるの。それは酸素を、この酸素を後ろへ送るための、ストップしてあるバルブ。それを開けるわけ。それがね、9回やらなきゃいかんかったかな。で、力あんまり入れたらいかん。熱とショックとを与えると酸素が爆発するから、静かにやらなきゃいけない。で、その一通り操作を終わって、最初にスイッチ入れた時から5分経ってなきゃいけない。ていうのは、ジャイロコンパスのジャイロが、電流が通じて回転を始めて、3万回転か、所定の回転数まで上がるのに5分要るわけよ。だから5分より早く終わってもいけないし、5分以上かかってもいけないということで、その間に全部の二十幾つかの操作をやるわけ。

Q:二十幾つもあるんですか。

うん。

Q:で、順番を間違わないように?

もうあっちのバルブ閉めたりあけたりね、いろんなことをやらなきゃいかん。

Q:それ本番だとですね、自分が乗って、もうものすごい、こう、精神的にもこう高揚してる状態で、それをこう……

いえもう、それはね、もう3回4回乗ったら、自然に手が動いていく。それができないようでは、乗せてくれないわけ。だから、回天については、学校の教室で、課程をどんどん進めると、そういうことは一切ないの。もう個人のあの進み具合によって変わっていく。

Q:これ何ていうんですか、閉められて海底、海底というか、海中に行くじゃないですか。その呼吸の空気っていうのはどうなんですか。

だから普通の空気。ジャイロを回したりする、その普通の空気をバルブをちょっとあけるわけ。そうすっと、150気圧か、で、装填してあるから、この中の圧が上がってくるわね。そうすっとね、このここらのあれが、後ろに、右後ろにあの安全弁っていうのが、それをあけると空気が逃げていくわけ。だからそれで普通の空気と今まで汚れてる空気と入れ換えていくわけ。

Q:じゃこっちから出して、そこから出すと?

そうそうそう。

Q:しかしでも狭いですねえ。

狭い、狭いよ。とにかく1メーターしかないでしょ。そこへバルブがいっぱいついてるでしょ。そうすっと実質80センチあるかないかだから。

下部ハッチっていうのがあるんですね、下から乗れるようになってる。で、これが1メーター35センチあるわけ。そうすっと随分大きさが違うわけ。

Q:これが真っ暗なんですか。

いや、電球はついてるよ。ただ薄暗いわね。明るい、普通のように明るい状態にしたら、外を見るときに見えにくいの。だから薄暗い感じ。

まあ、「おれの棺おけがこれか」っていうような感じになってしまうわね。そして乗ってる間にだんだん、火薬が1トン550あって、まあ爆弾で言えば3トンぐらいの爆弾に匹敵するわけだから、それだけの炸薬を持った爆弾はないわけだし、だからそれだけの大きな威力を持ってた、回天しかないということがだんだんわかって納得してきたら、これに愛着を感じるようになる。

最初は港湾攻撃だから、港の中に入って、港に泊まってる船を攻撃する。しかもそれは大型艦を狙えということで、空母だとか戦艦だとかを狙うようにして。そうすると、そういう船の周りにはやっぱり警戒してる船も多いし、それから港の入口は防戦網を張って潜水艦も入れないような格好にして。その間を縫って行くわけだから、だいたい潜水艦の、潜水艦を、仕切ってる第6艦隊の参謀の通達によって作戦海域を決めて、やるんだけど、それが十分、敵の状態を調べてないわけ。で、何時ぐらいになったら防戦網が開くとか、そういうことも一切ないんでね。だから非常に攻撃が難しくなった。で、防戦網を何とか突破して、で、入ってそれから約1時間ぐらいかけて自分で目標を探さなきゃいかんわけ。

もう犠牲ばっかり増えるからということで、航行艦襲撃に20年の4月以降変えたわけ。で、その段階で、今度は攻撃目標も変えて、めったにその太平洋を走ってる潜水艦や空母っていうのはそんなに数はない。だからそんなものを狙うよりは輸送艦を狙えっていうことになって、輸送船団をつかむっていうことを一生懸命やったわけ。

やっぱりそれは艦長の判断だけでしょう。要するに、回天の潜望鏡はあれだけしか長さがないわけ。1メーターしか上に出てこない。潜水艦の場合は19メーターあるわけ。だから相当高い所から観測できるわけ。で、倍率も大きいし視野も広いということで、観測しやすいわけね。だからそれが判断して出るようにするとか、しないとか判断ができるんでね。で、艦長が判断したことによって、まず艦長が言ったとおりに、何度方向に何ノットのスピードで何分潜れという指示があるわけ。で、敵の種類はこういう種類で、敵速は何ノットぐらいだと。それをそのまま艦長の言うように潜って、浮かび上がったら、その地点がだいたい1,000メーターから750ぐらいの範囲に浮かび上がるわけ。まあ遠くても1,500。それから、そこの地点で、自分の目でもういっぺん確認するわけ。種類と何度方向に走ってる、スピードが何ノットだと。それから距離が幾らある。こっちが全速で突っ込んだら、何分でぶつかると。そういうところまで全部自分が判断して、その最初に言われた艦長の指示で、浮かび上がった後は全部自分の責任になる。

それは自分の判断で、観測した時点で、これは何ノットで突っ込むんだから、何度右へ左へっていう角度を決めるわけ。瞬間的に決まるわけですけどね。そして操作をやって、それから、それじゃあ、あの時点から見て、決めた時点から現在スピードがちゃんと出て、この角度向いて走ってる時間が何秒かかったかと。そうすっと舵の取り遅れがあるから、それの修正をさらに加えるわけです。そして突っ込むわけですね。

Q:じゃ何かにぶつかったと思ったら、もう引く、レバーを引くと。

いや、ぶつかるっていうのは、もう1分なり1分半なりの後でぶつかるっていうのが計算でわかってるから、で、電気信管のハンドルを握って、グッとこう構えてるわけ。ぶつかったら体が勝手に前に行くから、前に行ったらスイッチが入るようになってるわけです。だから、触発信管と電気信管と、どっちが作用したかはわからない。

Q:そのときは何も見えてないってことですか。

見えてない、見てない。見てないから、かえって心配ないわけ。見たら、外が見えたらね、逃げ出したい気持ちも出てくるかもわからん。逆にね。だから僕らとしたら、飛行機のほうが苦しかっただろうと思う。飛んでいく途中の島に逃げようとすれば逃げられないことはなかったわけ。それにその欲を抑えて突っ込んでいくというほうが、きつかっただろうと思う。

僕らは外を見てないから、戦争つっていっても、敵の顔も見ないわけ。はるか遠くの船を見ただけのことです。

Q:それであとはもう沈んでいくだけですもんね。何も見えない中で。

だから、その何も見えないっていうのは、もうあとは自分でストップウオッチを押してるだけ。で、ストップウオッチで今何秒経ってるっていうんで、あと何秒生きてられるかっていうことを、が、わかるだけのことで。だけどその頃はね、もう生きてる死んでるっていうことは、もう考えてないですよ。「あいつをやっつけるのはおれしかいない」ていう、その気持ちだけですよ。だから極端な話、戦艦1パイいて、そいつにぶつかって沈めたら、3,000人殺すことになるわけでしょ。と、1対3,000ちゅったら、そろばんは十分合うはずですよね。

出来事の背景出来事の背景

【人間魚雷 悲劇の作戦 ~回天特別攻撃隊~】

出来事の背景 写真太平洋戦争末期、敗色濃厚となった戦局を一挙に打開しようと、日本海軍は特攻兵器を開発。一人乗りの潜航艇「回天」である。1.5トンの爆薬を積んだ必死必殺の人間魚雷だった。

回天は、潜水艦に搭載されて海を行く。連合軍の艦隊や輸送船団に近づくと、潜水艦から搭乗員が乗り移って出撃、いったん浮上して目標を確認して、ふたたび潜航、時計とコンパスをたよりに接近、体当たりする。さらに、自爆装置も付いていて、いったん出撃すると二度と帰ることのできない兵器であった。
全国から集まった400人の搭乗員の若者たちは、山口県の大津島の訓練基地で、厳しい訓練を積んだが、15人が、海底に突っ込んだり、沈没したりする事故で命を失った。

出撃が本格化したのは、昭和20年3月以降の沖縄戦だったが、米軍の警戒が厳しくなり、目標を、当初の停泊艦から航行する艦艇に変更、攻撃を成功させるのはさらに困難になって行った。
回天に乗り組んだのは、乗るべき航空機が不足してきたため、飛行兵を目指していた予科練出身の若者たちだった。回天に乗り組むことになった若者たちは、さまざまな思いを胸に秘めたまま、生きては帰れぬ兵器に乗り込んで出撃していった。

作戦開始から終戦までの9か月間で、確認された撃沈戦果は3隻。回天作戦で命を落とした若者は104人に上る。

証言者プロフィール証言者プロフィール

1924年
山口県下関市にて生まれる。
1943年
京都府立第3中学校(夜間)卒業。三重海軍航空隊奈良分遣隊に入隊。
1944年
第1特別基地隊に配属。回天搭乗員となる。
1945年
終戦。当時21歳。海軍上等飛行兵曹。終戦後は、政府委託製粉工場勤務。その後、婦人衣料卸売業を営む。

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日本(山口県大津島)

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