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Scene01 裁判の被告人は乙姫
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とある法廷で、裁判員裁判が始まりました。裁判員に選ばれた滝沢奈緒は、ほかの裁判員とともに、このちょっとフシギな裁判の判決を考えなくてはなりません。裁かれる被告人は、乙姫。玉手箱を使って、浦島太郎を殺そうとした罪に問われています。

Scene02 今回の裁判の争点は?
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乙姫が犯したとされる罪を、検察官が述べます。「被告人の乙姫は、竜宮城のあるじ。亀が地上から連れてきた浦島太郎と出会いました。乙姫は、浦島と恋仲になり、夫婦同然の暮らしを送るようになりました。しかし3年後、両親のことが心配になった浦島は『地上に帰る』と別れを切り出しました。そのことに強い恨みを抱いた乙姫は、浦島を殺すことを決意。殺傷能力の高い煙が詰まった玉手箱を渡したのです。地上に戻った浦島は、煙を浴び急激に老化。じん大な苦痛を受けました。乙姫が犯した罪は、刑法第199条、第203条の殺人未遂罪にあたります。」
浦島太郎を殺そうとした事実を認める乙姫。しかし、弁護人は、「本件は、浦島太郎の心ない言動に追い詰められた末の犯行であり、十分に同情の余地があります。」と“執行猶予”を求めました。執行猶予とは、刑務所には送らずに、今の生活の中で反省させ更生する機会を与えるということです。人を殺そうとして、普通なら刑務所行きの乙姫を執行猶予にしてもよいのでしょうか?

Scene03 証人尋問・浦島太郎
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検察官が証人に呼んだのは、被害者である浦島太郎。浦島太郎は、浜辺で子どもたちにいじめられているカメを助け、「お礼をしたい」というカメに竜宮城に招かれました。竜宮城に3年滞在し地上に戻った浦島は、300年の時間が過ぎていたことに驚きました。「竜宮城での1年が、地上での100年に当たるなんて聞いてませんよ!しかも、もらった玉手箱を開けたら、こんなじいさんになっちゃうし…。」浦島はなげき悲しみます。検察官は、あるVTRを裁判員と裁判官に見せます。「玉手箱に入っていた煙の正体は、地上で過ぎていた300年の時間です。同じ煙を使って実験を行いました。」VTRには、ケースに入ったハムスターが一匹がうつっていました。ケースに白い煙が注入され、中が見えなくなりました。煙がなくなると、なんと、ハムスターは白骨化してしまいました。VTRを見ていた浦島太郎は恐怖を隠せません。検察官は説明します。「つまり、この煙を浴びると一瞬にして300歳年を取ってしまうというわけです。」浦島は、玉手箱を開けた時、たまたま浜風が強くて直撃を免れ老化するにとどまったようです。でも、もし、煙が直撃していたらどうなっていたのでしょうか!?
続いて、弁護人が、浦島太郎に尋問を行います。「乙姫とはとても仲が良かったのに、あなたはなぜ突然地上に帰ると言いだしたのですか?」弁護人の追及に、浦島は、ある事実を打ち明けます。「お腹に子どもができたと告げられました…。そしたら、親になることとか、ずっと海の中で暮さないといけないこととか、いろいろ怖くなってしまって…。」浦島は、それで地上に逃げ出したのです。弁護人は強い口調で浦島に言います。「子どもができて幸せの絶頂にいた乙姫をあなたはドン底に突き落としたんですよ!もし、あなたが少しでも乙姫の気持ちを思いやっていたら、こんなことにはならなかった!」と。

Scene04 証人尋問・竜宮城のカメ
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弁護人が証人に呼んだのは、竜宮城のカメ。カメは、浦島太郎に裏切られた乙姫が「痛々しいぐらいに落ち込んでいました。何が正しくて間違っているのかわからなくなっていたに違いありません。」と語ります。そして、浦島太郎が地上に帰る時の様子を語りだしました。「浦島太郎は、玉手箱を受けとり私の背中に乗って地上に向かった。すると、後ろから乙姫様の声が聞こえてきました。『開けないで!その箱は絶対に開けないで!』と追いかけて叫んでいました。」乙姫は、自らの過ちに気付き、犯行を思いとどまろうとしたというのです。浦島太郎は、乙姫の声が聞こえていたにも関わらず、早く地上に帰りたかったので軽く聞き流していました。カメは、「あの時、もし私が玉手箱の中身を知っていたら、こんなことには…。」と悔やみます。
次に検察官が尋問をします。「乙姫の『開けないで』という言葉、あれは、本当に犯行を思い止まろうとして言った言葉なんでしょうか?高価なものがはいっていそうな箱をもらって、『開けないで』と言われたら、逆に開けたくなるのが人情でしょう。つまり、乙姫は、確実に玉手箱を開けさせようとして、あえて『開けないで』と繰り返した。」さらに、検察官はカメに言います。「本当に犯行を思いとどまろうとするのなら、『開けないで』ではなく、『返して』というのが自然ではないですか?あなたは、乙姫の、『裏切った男は絶対に許さない』という冷酷な一面を知らないだけなのではありませんか?」カメは「乙姫は、そんな人じゃありません!」と強く否定するものの、裁判員の奈緒は、カメの言葉を全面的に信じることが出来ませんでした。先ほどのVTRで、乙姫が渡した玉手箱の危険性を嫌というほど知ってしまったからです。

Scene05 被告人質問:乙姫
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いよいよ被告人の乙姫への質問。まずは弁護人から。乙姫に、浦島太郎と過ごした3年間がどんな日々であったかを聞きます。乙姫は「いっしょにいて本当に楽しかった。一緒にご飯を食べて『おいしいね』と言ったり、いっしょに並んで散歩したり…。ずっと一人だった私には、そんなたわいもないことが楽しくて仕方ありませんでした。だから、お腹に子どもができたときも、ただ喜んでくれると信じていました。」と答えました。続いて、弁護人は殺意が芽生えた瞬間について質問します。乙姫は、浦島太郎が地上に帰る直前に起きた出来事を語りだしました。「私は、『あと1分だけいっしょにいて』とお願いしました。すると、太郎さんは、『じゃあ、あと1分だけね』と言って、時計の秒針が1周するのを、じっと眺めていました。」さらに、乙姫は、その時感じた気持ちを語ります。「もう、これっぽっちも私のことを愛していないんだなとわかりました。幸せだったこの3年間は、一体なんだったんだろうって、悲しくて悔しくてたまりませんでした。『この人を一生許したくない』生まれて初めて感じるその気持ちを、私は抑えることができませんでした。」それで、乙姫は、浦島太郎に玉手箱を渡して殺そうとしたのです。
続いて、検察官が乙姫に質問します。「乙姫さん、あなたは、なぜ玉手箱を渡す前に、お腹にいる子どものことを考えなかったのですか?生まれてくる子どもが、自分の父親を殺そうとした母親を愛してくれると思いますか?」乙姫は、実刑になった場合、刑務所の中の病院で子どもを産んで、服役中は、その子と離れて暮らさなければなりません。検察官は、乙姫に言葉を送ります。「子どもと離れて暮らす時間こそが、今のあなたには必要だと私は思っています。自分にとって、何が大切なのか、問い続けてください。そして、犯した罪をしっかりと償ってください。そうして初めて、母として、力いっぱい、その子を抱きしめてあげられるのではないでしょうか?」乙姫は自分のお腹にそっと手を置き、ぼろぼろと涙をこぼしました。

Scene06 最終弁論
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最後に、検察官と弁護人がお互いの意見を述べ合います。検察官は「乙姫の犯した犯行は危険極まりないもので同情の余地はありません。未遂に終わったとはいえ、浦島太郎はじん大な苦痛を受けました。乙姫も、刑務所に入って同様に苦痛を負うべきです。」と訴えます。一方、弁護人は、「本件は、浦島太郎の心ない行動に追い詰められた末の犯行であり、『身勝手』の一言で済まされるものではありません。しかも、乙姫は、犯行を思いとどまろうとしました。それらは、十分に酌量の余地があります。」と、改めて“執行猶予”を求めました。
浦島太郎を殺そうとした乙姫を刑務所に送るべきか、それとも執行猶予にすべきか、どうするのがいいんでしょうか?

昔話法廷
「浦島太郎」裁判
被告人は乙姫。「地上に帰る」と言いだした浦島太郎に恨みを抱き、危険な玉手箱を使って殺害しようとした。乙姫を刑務所に送るか?それとも、執行猶予にするか?
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