ミクロワールド 空を舞う スギ花粉の秘密 オープニング
春が近づくと、くしゃみや鼻水などの症状で人々を悩ませる、花粉症。花粉症の原因の代表的なものが、スギの花粉です。戦後、日本中に植えられたスギの木が成長し、近年、大量の花粉を飛ばすようになったのです。スギの花粉は直径およそ0.03mm。肉眼では見えないほどの小さな粒。丸い形に小さな突起をもつのが特徴です。
2月から3月にかけて、スギは雄花(おばな)と雌花(めばな)を咲かせます。枝の先にぎっしりとついているのが雄花です。雄花の大きさはマッチ棒の先ほど。この中に、およそ40万個の花粉が入っています。雄花の上のほうでうつむくように咲いているのが、雌花です。よく晴れた風の強い日。雄花から花粉が飛び出し、あたり一面に舞い広がります。スギは、風に花粉を運んでもらう風媒花(ふうばいか)です。そのため、小さくて軽い花粉を大量に飛ばすのです。
雄花のしくみをのぞいてみましょう。中心の軸のまわりに、花粉の入っている袋、「葯(やく)」がいくつもついています。雄花の表面は、魚のうろこのような形をした「鱗片(りんぺん)」に覆われています。雄花が成長し鱗片が開くと、中にある葯が乾燥して破れ、花粉が出てきます。こうして無数に出た花粉は、風に乗って、そのごく一部が雌花にたどり着きます。
雌花の中にある管のようなものの先に、透明な液体がにじみ出ています。雌花はここで、飛んできた花粉を捕らえるのです。管の先についた花粉は、ゆっくりと雌花の内部へ取り込まれていきます。このとき、花粉は水を吸収して破裂します。破裂して出てきた丸いものは「精細胞(せいさいぼう)」。この精細胞が雌花の「卵細胞(らんさいぼう)」と出会い、やがて実を結びます。
スギの花粉は、私たち人間の体でも同じような変化を起こします。花粉が目や鼻の粘膜につくと、破裂して出てくるタンパク成分、そして花粉の外側についているタンパク成分、これらがくしゃみや鼻水などの症状を引き起こすといわれています。スギにとっては繁殖のためになくてはならない花粉。それが私たち人間には、アレルギー症状を引き起こす物質として襲いかかってくるのです。