ミクロワールド 早春にさく オオイヌノフグリ オープニング
まだ、身を切るような風が吹き抜ける早春。一見、枯れ草だけに見える土手に、早くも咲き始めている花があります。黄色があざやかなタンポポ。春一番の訪れを告げるフキノトウ。葉のあいだから細長いピンク色の花が立ち上がるように咲いているホトケノザ。そして、小さい青い花が散らばるように咲いているオオイヌノフグリです。オオイヌノフグリは西アジア原産で、外国から入ってきた野草です。この花の一日の変化を見てみましょう。
冷え込みの厳しい朝。気温はわずか2℃です。一面に霜が降りています。地面が暖まるのを待つオオイヌノフグリ。ほかの草がまだ活動を始めないこの時期に、いち早く花を咲かせて子孫を残そうとしているのです。
まわりの温度が15℃くらいになると、つぼみが開き始めます。花びらが開くと、中のおしべとめしべが姿を現します。オオイヌノフグリの花は、花粉を持ったおしべが互いに向かい合っています。また、根元が細くなっていて簡単に動くので、虫の体に花粉がつきやすくなっています。花びらの真ん中にあるめしべは、花粉がつきやすい作りになっています。
太陽が西に傾きかけた午後3時ごろ、地面の温度は急速に下がっていき、大半の花が閉じかけています。オオイヌノフグリは、二、三日のあいだ、花の開閉を繰り返します。花びらが落ちたあとに、めしべが残されています。このめしべの下にある小さなふくらみが、およそ3週間かけて成熟し、実を結ぶのです。
受粉から2週間ほど経ちました。めしべの下のふくらみが大きくなっています。中の様子をのぞいてみましょう。長さ2mmほどの小さな種が、いくつもできています。種は熟すと地面に落ち、秋になると芽を出します。そして翌年の春に、また、青い小さな花を咲かせるのです。