ミクロワールド 胞子を投げる シダの秘密 オープニング
昼でも薄暗い、林の中。そんな林の下にも、さまざまな植物が葉を広げています。のこぎりのようなぎざぎざした葉は、シダです。雨の多い日本では、多くの種類を見ることができます。シダが殖えていくしくみを見てみましょう。
シダは、「胞子(ほうし)」で殖えます。シダの葉の裏には丸いものが並んでいます。よく見ると小さな粒の集まりで、その小さい粒はさかんに動いています。これは、胞子の入った袋、「胞子のう」の集まりです。胞子のうの直径は、およそ0.3mm。この中に胞子が数十個詰まっています。胞子の大きさは、0.05mmほど。胞子のうは、さかんに動いて胞子を飛ばします。どういうしくみになっているのでしょう。
胞子のうの縁の部分は、細胞が1列に並んでできています。細胞の壁は、横から見ると、内側が外側に比べて厚く固くなっています。乾燥すると、細胞内の水分が蒸発し、一つひとつの細胞が縮んでいきます。しかし、内側は固くて縮まないため、外側だけが縮んでいきます。縮む力で袋が裂け、どんどん反り返っていきます。そして限界に達すると、一気に元に戻ります。ボールを握ったピッチャーの腕のようなこの動きで、胞子を飛ばすのです。
飛ばされた胞子はばらばらになり、風に乗って運ばれていきます。地面に降りた胞子が育つと、1cmに満たないような大きさでハート型の「前葉体(ぜんようたい)」になります。多くのシダは、前葉体の上で精子と卵細胞をつくります。前葉体の上の丸いものが、精子をつくる「造精器(ぞうせいき)」です。造精器が水に濡れると精子が飛び出し、精子は別の前葉体の中央を目指して泳いでいきます。
前葉体の中央にあるのが、卵細胞をつくる「造卵器(ぞうらんき)」です。この中にある卵細胞と精子が出会い、受精します。その受精卵が成長し、私たちがふだん見かけるシダの姿になっていきます。大きくなった葉の裏では、小さな胞子のうが、また胞子を投げ始めます。こうしてシダは、新しい世代へと受け継がれていくのです。