
(オープニングタイトル)

ボウリングの球が、ピンを弾き飛ばしました。このとき、ボウリングの球は「エネルギーを持っている」といいます。“エネルギー”とは何でしょう。

科学の世界では、物体に力を加えてその力の向きに物体を動かしたとき、その力は物体に対して「仕事」をしたといいます。人ではなくボールがぶつかって、同じ物体を同じ距離だけ動かした場合も、同じ「仕事」をしたことになります。このボールの速さが同じであれば、いつも同じ仕事をすることができるはずです。この「仕事をすることができる能力」を「エネルギー」といいます。仕事をする能力が大きいほどエネルギーは大きくなります。止まってしまったボールはもう仕事ができません。動いていることによって、エネルギーを持っているということになるのです。

アメリカのアリゾナ州にある巨大なクレーター。直径1.5km。隕石(いんせき)が衝突したことによってできました。隕石は、衝突するとき、持っている巨大なエネルギーを放出するのです。運動している物体が持つエネルギーを、「運動エネルギー」といいます。運動エネルギーの大きさは何で決まるのでしょう。斜面を転がり落ちた球の運動エネルギーを測る装置で見てみましょう。球がぶつかった木片の動いた距離で、運動エネルギーを測定します。

まずは、球の速さが関係するのか、斜面の下で速さを測ります。スタート地点の高さを変えることで、鉄球の速さを変えて実験してみましょう。すると、スタート地点を高くしたほうが、鉄球のぶつかった木片の動いた距離が長くなりました。球の速さは、スタート地点の高いほうが、1.41m/毎秒。スタート地点の低いほうが、1.11m/毎秒でした。速く動いている鉄球のほうが、運動エネルギーが大きいことがわかります。

球の質量を変えると、運動エネルギーはどうなるのでしょう。鉄球とセラミックの球で比べてみます。鉄球の質量は、セラミックの球のおよそ3倍です。スタート地点の高さは、どちらも同じにします。衝突する速さはほぼ同じですが、鉄球のほうは、木片の動いた距離がおよそ3倍になりました。運動エネルギーは、同じ速さで運動しているとき、物体の質量が大きいほど大きくなるのです。

では、衝突される物体の質量を変えるとどうなるのでしょう。木片の上におもりをのせて全体の質量を大きくします。衝突させるのは、同じ質量の鉄球です。スタート地点の高さも同じにして比べます。移動した距離は、質量の大きいほうが短くなりました。このように、運動エネルギーの同じものが衝突しても、質量が大きい物体ほど動きにくいのです。

動いている物体はエネルギーを持っています。止まっている物体はエネルギーを持っていません。しかし、上に持ち上げた物体は、手を離すと重力のはたらきで落下します。手を離すと運動を始めるので、持ち上げた物体はエネルギーを持っているといえます。ある基準面から上にある物体が持つエネルギーを、「位置エネルギー」といいます。

位置エネルギーの大きさは何で決まるのでしょう。おもりを落とすと杭(くい)が動く装置で見てみましょう。杭はゴムにはさまれ、動きにくくなっています。杭の動いた距離で、位置エネルギーの大きさを測定します。まずは、10cmの高さからおもりを落とします。杭は1.00cm動きました。20cmの高さからおもりを落とすと、1.90cm。30cmの高さから落とすと、3.00cm。位置エネルギーは、基準面からの高さが高いほど大きくなるのです。

次に、おもりの質量を変えて比べてみましょう。おもりは同じ高さから落とします。60gのおもりを落とすと、杭(くい)は0.95cm動きました。120gのおもりでは、1.90cm。180gのおもりでは、3.00cm。位置エネルギーは、同じ高さにある物体であっても、質量が大きいほど大きくなるのです。

運動エネルギーと位置エネルギーの関係を、振り子で見てみましょう。位置エネルギーは、おもりが最も高いところに来たとき最大です。おもりの位置が低くなると位置エネルギーは小さくなり、その分、運動エネルギーは大きくなります。さらに、振り子が反対の端に来たとき、運動エネルギーはゼロになります。おもりの高さは最初の高さと同じ。つまり、位置エネルギーは再び最大になるのです。そして、位置エネルギーは最も低いところで最小、このとき運動エネルギーは最大となります。位置エネルギーと運動エネルギーの和を「力学的エネルギー」といい、その値はつねに一定。これを、「力学的エネルギー保存の法則」といいます。

斜面を下ったり上ったりを繰り返して走る、ローラーコースター。はじめにコースの中で最も高い位置に引き上げられ、スタートしたあとは動力を使いません。力学的エネルギーはどうなっているのでしょう。位置エネルギーと運動エネルギーの移り変わりに注目して見てみると…。