(オープニングタイトル)
昔の写真。部屋にたくさんの機械が並んでいます。これらすべてで、一つのコンピュータです。こちらは、現在の電話のご先祖さまともいえる、電信機という機械。そして、ガソリン自動車のご先祖さま。どれも、今のものと見た目がずいぶん違います。どう発展してきたのでしょう。
1946年、アメリカで開発された「ENIAC(エニアック)」という初期のコンピュータ。装置のすべてを合わせると、その大きさは幅24m、高さ2.5m。重さは20トン以上もありました。一方、現在のコンピュータは片手に乗るほどの大きさです。初期のコンピュータは、ガラスなどで作られた真空管をスイッチとしてオン・オフすることで計算をしていました。性能を上げるためには、この真空管という大きな部品が大量に必要でした。それが、小さな電子部品に置き換えられていきます。
その部品とは、1950年ごろに発明された、トランジスタ。半導体の性質を使って、スイッチのオン・オフができるようになったのです。このトランジスタの利用で、コンピュータの小型化が可能になりました。さらに、多くのトランジスタを使った回路を小さなチップにまとめる技術が開発されます。
1960年代に登場した、集積回路(IC)です。ICの技術の進歩とともに、コンピュータの小型化は進み、同時に、高性能になっていきました。1970年代後半には、オフィスや家庭でも使えるコンピュータ、「パソコン」が登場。一般に普及するようになりました。1980年代の終わりには、持ち運べるパソコンが登場。現在では、片手におさまるほど小さくなりました。コンピュータは小型化を進め、日常生活にも入ってくるようになったのです。
昔、人々は「のろし」を使って情報を伝えていました。文字を使った「手紙」では、より詳しい情報を、遠く離れた人に送ることができました。しかしそのスピードには限界がありました。19世紀に入ると、伝えるスピードを飛躍的に上げる技術が発明されます。情報を電気信号に変えて送る「電信機」です。文字をモールス符号に置き換えることで、情報を電線でつながった離れたところにいる人に伝えられるようになったのです。さらに、音を自動で電気信号に変換できるようになりました。「電話」の発明です。
一方、19世紀の終わりから20世紀のはじめてにかけて、電波を使った無線通信技術が開発されました。それからおよそ80年。電話と無線通信の技術が合わさり、携帯電話が生まれました。1985年に登場した日本で初めての移動式電話は、カバンほども大きさのあるものでした。それが、現在の携帯電話のように小さくなったのはどうしてでしょう。この大きな電話の大部分を占めていたのは、実は電池。次の機種では片手で持てるサイズになりましたが、電池はまだまだ大きなものでした。
そこで登場したのが、リチウムイオン電池。それまでの電池の4倍以上も長持ちするため、電池の小型化が可能になりました。1992年にリチウムイオン電池は携帯電話に使われるようになり、現在も使われています。また、多くの部品を一つにまとめる集積回路の技術によって、携帯電話は一層小型で多機能になり、コンピュータの機能を持つまでになったのです。
昔から、人が遠くへ移動するために利用してきた動力には、馬などの動物の力や風の力などがありましたが、18世紀の終わり、画期的な技術が実用化されました。蒸気機関です。液体の水が気体の水蒸気に変わると体積が1700倍にもなる性質を、動力に利用したのです。蒸気機関車のしくみを見てみましょう。まず、ボイラーの中の水が温められ、水蒸気が発生します。その蒸気がシリンダーへ進み、シリンダーの中にあるピストンを押すと、車輪が動きます。蒸気機関の発明で蒸気機関車や蒸気船が生み出だされ、大量の人や物資の輸送が可能になりました。
しかし蒸気機関は、大量に水を補給しなければならないという弱点がありました。それを解決したのが、19世紀終わりに発明された、ガソリンエンジン。シリンダーの中でガソリンを爆発させ、動力を得る内燃機関です。蒸気機関に比べ装置を小さくできるガソリンエンジンは、今日まで続く自動車時代をつくり上げました。その後、電気でモーターを回して走る電車や電気自動車が生まれました。そして今、実用化をめざしているのが、リニア新幹線。地上を走る速さは時速500kmを超えるところまで発展してきたのです。
科学技術の発達は私たちの生活を豊かにしてきました。しかしその一方で、さまざまな問題も引き起こしています。たとえば、交通手段の発展は交通事故の増大や大気汚染などの問題を。簡単に世界中の情報を知ることができるインターネットは、新たな犯罪や個人情報の流出などの社会問題を。そして、科学技術の発達が可能にした大量生産ではゴミも大量に出るようになりました。プラスチックは、「長持ちする」という長所が「いつまでも残ってしまう」という短所にもなりました。私たちは科学技術を利用するとき、そのデメリットにもしっかり向き合う必要があるのです。