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scene 01多彩な国々がまとまったEU
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「ハロー」、「ボンジュール」、「グーテン ターク」、「ボア タルデ」、「グリュース ゴット」、「ヒュヴァー パイヴァー」、「ブナ ズィワ」、「ズドラーストヴィチェ」…。実はこれ、みんなヨーロッパの「こんにちは」です。世界中の人々が憧れ、魅了されるヨーロッパ。世界観光ランキング第一位。新婚旅行の旅行先第一位。芸術の都。花の国。美食の街…。言葉も歴史も文化も、そして宗教も異なる国が集まっている地域。それがヨーロッパです。そして、そのヨーロッパの国々がまとまったものが「ヨーロッパ連合」、通称“EU”です。そこで今回の疑問、『なぜEUとしてまとまる必要があるの?』

scene 02平和と共存・共栄を目的に
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ヨーロッパ州のほとんどが陸続きで、大小さまざまな国が隣り合わせです。そのため、20世紀半ばまで領土問題や政治的対立で争いが絶えない地域でした。二度の世界大戦で犠牲者は2500万人にもおよび、ヨーロッパ諸国は大きなダメージを受けました。そんなヨーロッパの国々が、悲劇を繰り返すまいと、平和と共存・共栄を目的に手を取り合ったのが、ヨーロッパ連合(EU)です。このEUの前身は、1967年にできた「ヨーロッパ共同体」(EC)。当初の6か国から次第に増え、現在、EUには28か国が加盟しています。

scene 03経済大国とも対等に競争できる
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まず、「面積・経済」という見方から考えてみます。ヨーロッパ諸国は、地図で比較すると日本より小さい国が多い。比較的大きなフランスの面積は日本のおよそ1.4倍。でも世界でいちばん小さな国、バチカン市国は、東京ディズニーランドより小さいのです。しかしEU加盟28か国の面積を一つにまとめると、日本のおよそ11倍になります。一方、国の豊かさを計るGDP(国内総生産)は、アメリカと中国がとびぬけて大きくなっています。しかしEU全体のGDPをまとめると、アメリカと肩を並べます。小さな国が多いヨーロッパでは、EUとしてまとまったほうが、アメリカ、中国などの大国と有利に競争できるのです。

scene 04国を越えて自由に行き来できるメリット
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次は、人々の「生活」という見方から考えてみます。フランスの首都パリにあるリヨン駅。ヨーロッパの各都市へ向かう国際列車が出ています。行き先はスイス、イタリア、ドイツなどさまざま。実はEUでは、列車に乗ったまま国境を越えられるのです。EU最大のメリット。それは、EU各国間を自由に行き来できること。入国審査がなく自由に国境を越えられます。フランスとドイツの国境にかかる橋は、毎朝フランスからドイツへ通勤する車でいっぱいです。EUの中ではどの国で働くのも自由。経済が好調で給料もいいドイツは働く場所として特に人気があり、EU各国から多くの人が集まってきています。

scene 05統一通貨「ユーロ」のメリット
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スペイン名物パエリア。値段はおよそ13ユーロから。イタリア、ナポリの名物ピッツァは、5ユーロからとお手頃。ベルギーのおやつ、焼き立てワッフルは、2ユーロから…。どの国でも通貨が「ユーロ」に統一されています。かつてはそれぞれ自分の国の通貨がありました。しかし通貨がユーロに統一されると、為替レートを気にする必要もなく、国を移動しても両替が不要。どこに行っても簡単に買い物をすることができます。そのほか、加盟国どうしの関税がなくなり、物資の流通が盛んになりました。買い物も仕事も、そして学校も国境を越えて自由に選ぶことができるEU。まとまることでさまざまなメリットがあるのです。

scene 06EU離脱というイギリスの動き
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しかし一方、イギリスがEU離脱に向けて動こうとしています。次は、「待遇と格差」という見方から考えてみます。ヨーロッパ州のなかでも、海に浮かぶ島国のイギリス。2016年6月、EUに加盟し続けるかどうか、その是非を問う国民投票が行われました。結果は、EUからの離脱が僅差で支持されたのです。およそ51%が離脱に投票しました。一体なぜなのでしょう。街頭で聞いてみると…。「外国人にはもううんざり。人数が多すぎて病院もいっぱい。治療も受けられないんですよ。」(女性) 「この地域の労働者の多くは、移民に自分たちの職が奪われたと考えている。」(男性)

scene 07大勢の移民の流入という問題
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2014年から2015年にかけて、イギリスの人口はおよそ50万人増加しました。でもそのうち3分の2は、移民の増加によるものといわれています。たとえばイギリスは、ルーマニアと比べると月給が6倍ほど高くなっています。さらにイギリスでは、EU加盟国の人なら充実した福祉や公共サービスを受けることができます。そのため、たくさんの移民が集まり自分たちイギリス人の生活がおびやかされているという不満が生まれていたのです。しかし…。

scene 08問われ続ける在り方
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投票結果後に、EU離脱に反対する声が街じゅうにあふれたのです。実は、投票した若い人のほとんどは、EU残留を支持していたといわれています。「多くの人が離脱に反対している。分裂を避け、イギリス国民は団結すべきだわ。」(若い女性) 「高齢者の多くは離脱派に投票したわ。でも将来を若い子たちに任せるべきだったわ。」(年配の女性) 平和と共栄を誓い、人も物も移動が自由となったEU。しかし、どのように一つにまとまるべきか、その姿は今も問われ続けています。

scene 09日本の都道府県に置き換えて考えてみると…
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今回の疑問、「なぜEUとしてまとまる必要があるの?」 さまざまな見方から、ヨーロッパの人々が考えるEUの必要性と、抱えている問題が見えてきました。EUのように多くの国が一つにまとまっていなかったら、どうなるのか。みんなの住んでいる日本に置き換えて考えてみましょう。都道府県がもし全部別々の国だったら…。隣の県には簡単に行けなくなる? 北海道のじゃがいもに関税がかかれば、ポテトチップスは高くなる? みんなで考えてみましょう。

10min.ボックス  地理
なぜEUとしてまとまる必要があるの?~世界の諸地域 ヨーロッパ州~
言葉や歴史、文化、宗教が違う国々が隣り合うヨーロッパ。なぜEUとしてまとまる必要があるのか、「面積・経済」や「生活」、「待遇と格差」などの「見方」をもとに探る。