チャプターあらすじを読む
scene 01伝統工芸品の地場産業
ないようを読む

きらびやかな輝きを放つ金箔(きんぱく)。金箔は石川県が国内生産日本一。ナイフやフォークなどの洋食器。その生産は新潟県が日本一。銅像や器などの銅器は富山県が生産日本一。眼鏡フレームは福井県が生産日本一。すべて北陸で作られているものです。今日の舞台は、中部地方の北陸。中部地方は大きく三つのブロックに分かれます。太平洋に面した静岡県と愛知県、岐阜県南部の「東海」。内陸にある岐阜県北部、長野県、山梨県の「中央高地」。そして日本海側の新潟県、富山県、石川県、福井県の「北陸」です。北陸では伝統工芸品などの地場産業が盛んです。そこで今回の疑問、『北陸はどうして地場産業が盛んなの?』。

scene 02日本有数の豪雪地帯
ないようを読む

最初の見方は「気候」です。石川県白山(はくさん)市の冬は、一面の銀世界。多いときは3m以上も雪が積もることがあります。家や道路も雪に埋まってしまい、生活するのも大変です。新潟県魚沼(うおぬま)市も、やはり日本有数の豪雪地帯。日本海側の気候の特徴は、冬、雪が多いこと。北陸の地場産業はこの雪と深い関係があります。冬になると北陸では、大陸から日本海を渡って北西からの季節風が吹きつけます。この季節風は海から蒸発した水分、水蒸気をたっぷり含んでいます。季節風が日本列島の山脈にぶつかり上昇するとき、この水蒸気が冷やされ、雪になります。だから北陸は雪が多い地域なのです。

scene 03農閑期の副業として
ないようを読む

北陸の人たちは昔からこの雪に悩まされてきました。冬のあいだ畑や田んぼが一面雪に覆われてしまうと、外に出ることも農作物を育てることもむずかしくなります。そこで、農作業以外でできる仕事を考えました。それが、織物や金物、漆を使って作る漆器などの伝統工芸品でした。こうした工芸品作りは、農閑期に家の中でできる副業として古くから行われていました。室町時代ごろから作り続けてきたものもあるといわれています。

scene 04工芸品から工業製品へ
ないようを読む

明治時代になると、工芸品作りで培った技術を生かし、さまざまな工業製品を作るようになっていきました。眼鏡フレーム生産日本一の福井県鯖江(さばえ)市では、明治30年代から眼鏡を作るようになったといわれています。当時のフレームの材料は、赤銅(しゃくどう)や真鍮(しんちゅう)など。昭和になると、セルロイドやニッケル合金が主流となりました。高度経済成長期になると、眼鏡の売れ行きが増加。鯖江の眼鏡産業は急速に発展していきました。

scene 05最先端技術と職人技の融合
ないようを読む

そして1980年代。鯖江は眼鏡フレームの革命を起こします。軽くて丈夫な金属チタンを、世界で初めて眼鏡に使用したのです。チタンは加工が非常にむずかしい素材。鯖江では、レーザーを使って溶接する技術を実用化しました。最先端技術を使いながらも、フレームの微妙な調節や繊細な色付けは人の手で行っています。テクノロジーと職人技を駆使し、高品質な眼鏡ができあがります。冬の農閑期の副業から始まったモノ作りの長い伝統が、世界からも注目される眼鏡を作り出したのです。

scene 06年間を通して湿度が高い
ないようを読む

北陸の気候のもう一つの特徴は、湿度が高いこと。北陸は、日本海を流れている海水温の高い暖流の影響で年間を通して湿度が高い地域です。石川県の金沢市は、「弁当を忘れても傘を忘れるな」という言葉があるほど雨が多く湿度が高い地域です。年間の平均湿度はおよそ70%。その金沢が誇る工芸品といえば、金箔(きんぱく)。金箔作りは、湿度が高いほうが都合がいいのです。それはどうしてなのか。金箔作りの工程を見てみましょう。

scene 07気候が支えてきた金箔作り
ないようを読む

まず、金を和紙にはさんで重ねます。これを機械でたたいて金を薄く延ばしていきます。完成するまでにおよそ5万回打ちます。完成品の厚さは、なんと1万分の1mm。さわるとくずれてしまうほど薄く繊細な金箔(きんぱく)。金箔は静電気を起こしやすく、金箔どうしがすぐにくっついてしまいます。金箔作りには静電気が大敵。しかし金沢は湿気が多いため静電気が起きにくく、金箔作りにうってつけの場所。北陸の気候が金箔作りを支えてきたのです。しかし、工芸品が作られても、それを消費者に運んで売る手段がなければ産業として成り立ちません。そこで、次の見方は「交通」です。

scene 08江戸時代の「北前船」
ないようを読む

北陸と、関東や関西のあいだは山地でへだてられています。北陸で作られた工芸品を陸路で運ぶのは大変でした。そこで江戸時代に入ってから、日本海側の海上交通網が整備されていきました。北海道から北陸を通り、関門海峡を抜けて大阪(当時は大坂)へと続く航路です。使われていた船は、「北前船(きたまえぶね)」という大型の帆船。北前船は、昆布などの海産物や米などの農産物、そして生活物資などを載せて日本海を行き来しました。海上交通が発達したことで、北陸で作られた工芸品は日本海側の各地や大阪などの大都市へも大量に運べるようになり、工芸品作りはますます盛んになっていきました。

scene 09高速道路、新幹線
ないようを読む

そして現在。北前船は姿を消しましたが、名古屋と北陸を結ぶ東海北陸自動車道などの高速道路が整備されました。東京と金沢を結ぶ北陸新幹線が開通するなど、生産地である北陸と消費地である大都市のあいだで、人や物の移動がさらに容易にできるようになってきました。北陸を訪れる観光客も増加しました。伝統工芸品の需要もますます高まることが期待されています。

scene 10静岡県や愛知県では?
ないようを読む

今回の疑問、「北陸はどうして地場産業が盛んなの?」。それは、「気候」や「交通」などの視点で見ると、その理由がわかりますね。では、中部地方のほかの地域はどうでしょう。静岡県や愛知県では自動車工場が多く見られます。なぜこの地域では自動車産業が盛んなのか、東海地方の位置や人々の生活の変化など、いろいろな見方で考えてみましょう。

10min.ボックス  地理
北陸はどうして地場産業が盛んなの?~中部地方~
今回の疑問は「北陸はどうして地場産業が盛んなの?」。北陸には、金沢の金箔や富山の銅器など地場産業が盛んだ。それはなぜなのか、「気候」などの「見方」をもとに探る。

クリップ

教材きょうざい資料しりょう

教材・資料(先生向け)

配信はいしんリスト

今年度こんねんど放送ほうそう

その放送ほうそう