アプリを駆使(くし)してニッポンをさぐれ! ズームジャパン!
夕方のリビングで事件です。「一まい、二まい、三まい…」。レタスを数えるミウ。「フフフ、今日もスーパーで野菜を爆(ばく)買い。これでしばらくサラダ食べ放題ね。今日の野菜は、トマトに、キュウリに、レタスに、セロリに、あとは…」と野菜を見ながらごきげんです「あれ? いつもこんなに爆買いしていてだいじょうぶかしら」。ミウの妄想(もうそう)が始まります。「わたしのせいでスーパーから野菜が品薄(しなうす)になってしまったらどうしよう。数少ない野菜を求めて争いが起きてしまったら? あぁ、どうしよう。わたしが買いしめているのがわかったら、みんながうちに乗りこんでくるかも。いやーっ!」。
「いやぁーっ!」。「お姉ちゃーん、帰ってきてー!」。ショーゴによばれて「ハッ!」とわれに返るミウ。「そもそも、スーパーにはいつも新鮮(しんせん)な野菜がたくさんあるのはなんでなの?」と言いました。「ねぇ、旬(しゅん)があるのに、一年中食べられるのはなんで?」と聞くミウ。するとショーゴは、「これを見ればわかるよ」とタブレットでアプリを起動します。「これは、小5で習うことが動画でまとめられているアプリ。今回のテーマは、『一年中野菜が食べられるわけ』。まずは、大きな動きを見ていく青い動画。野菜の生産地を見に行こう。ズームアウト!」とショーゴ。
二人がやってきたのはスーパーマーケット。「あった、あった、野菜がいっぱい。いつ来ても新鮮(しんせん)な野菜が手に入る」とミウ。「それはね、生産地にひみつがあるんだよ」とショーゴが言います。「生産地?」。レタスを例に見てみましょう。暑さに弱いレタスは、すずしい地域(ちいき)で生産されています。一年間の産地を見ていくと、夏のあいだは長野県や群馬県の山間部。春や秋は、関東地方などの平野部。冬は、あたたかい九州や四国。「産地がばらばらなんだ」。レタスの生産では、季節によって作る場所が変わる“産地のバトンタッチ”が行われているのです。
各産地でも、長い期間レタスを収穫(しゅうかく)するための工夫が行われています。レタスの産地で有名な茨城県坂東(ばんどう)市。ここでは、レタスの種まきを少しずつずらしながら、およそ8回に分けてさいばいしています。すると、収穫の時期がずれ、長い期間、新鮮(しんせん)なレタスが採れるのです。「なるほど~」。収穫されたレタス。いよいよ出荷の準備です。「いっぱい採れたのねぇ。これは何の機械? あ、レタスが機械の中に入っていった。ふくろに入って出てきた! これがスーパーにならぶのね」とミウ。するとショーゴが、「その前に、ちょっと行くところがあるんだよ」と言いました。
農家から出荷されたレタスが入れられたのは、巨大(きょだい)な冷蔵庫(れいぞうこ)。ここで5℃までレタスを冷やします。「野菜は鮮度(せんど)がいちばんですから、冷やすことによって鮮度が保たれる。野菜のおいしさを長く保つことができます。この産地から、北は北海道、西は兵庫県のお客様まで、新鮮な状態でとどけることができる」とJA岩井(いわい)の鈴木新一(すずき・しんいち)さん。野菜を運ぶのは保冷車。低い温度のまま産地から消費地まで運ぶこの仕組みを“コールドチェーン”といいます。「食卓(しょくたく)にとどくまで、いろんな工夫があるんだ」と感心するミウです。
「レタスさん、わたしのもとまで来てくれてありがとう」と言うミウ。「これは、小5で習う『小5の常識!』」とショーゴの決めセリフ。「ありがたく、いただきまーす」とミウがサラダを食べようとしたとき、ピカッ、ゴロゴロ、ザーッ! とつぜんの雨。「どしゃぶり? レタス畑はだいじょうぶかしら。天気に左右されてレタス作りが思うようにいかないなんてこともあるんじゃない? どうしよう。こうしちゃいられない!」。すると、「だいじょうぶだよ。これを見て」とショーゴがタブレットを取り出しました。「現場の仕事や働く人の思いがわかる赤の動画。新しい技術を使った野菜作りについて見てみよう。ズームイン!」。
宮城県遠田郡(とおだぐん)美里町(みさとまち)の畑の真ん中にたたずむ巨大(きょだい)な施設(しせつ)。実はここ、リーフレタスを生産する工場です。「えっ、工場で野菜って作れるの?」。工場の面積は、サッカー場7面分。「広ーい!」。この大規模(だいきぼ)な野菜作りを可能にするのは、ロボットです。「えっ、ロボット!?」。人の手に代わって、ロボットがさまざまな作業をになっています。「さすがロボット。規則正しくならべてるわ」。
この工場では、種まきもオートメーション化。さらに、水がけまで。「そんなことまで!?」。一日に生産されるのはおよそ30,000株(かぶ)。「何これ? 真っ赤じゃん!」。野菜を赤く照らすのはLEDです。太陽の光と同じ効果を持つ赤いLEDで、レタスの成長をうながします。屋根の下で天候に左右されず、安定してレタスを生産できるのです。「最近は雨とか台風とかで畑が流されて、野菜がダメになることが多くなっています。工場で野菜を作ることによって、消費者のみなさんに一年間安定的においしい野菜をおとどけすることが大事だと思っています」と、担当(たんとう)者の伊藤啓一(いとう・けいいち)さん。
種を植えて50日。工場ですくすくと育ったリーフレタスは、収穫(しゅうかく)の時期をむかえ、出荷の準備に入りました。スーパーにとどいたリーフレタス。実は、食卓(しょくたく)にとどいてからも、新鮮(しんせん)で長もちするためのひみつがあります。「ひみつって、なになに?」とミウ。
「じゃーん!」。ショーゴが野菜を取り出しました。「さっきのリーフレタスじゃない!」とミウ。実はこれ、根っこが付いたまま売られていて、水につければ一週間は新鮮(しんせん)な状態で食べられるのです。「ひみつってこれだったんだね」。「ほかにもね、日本の食べ物だけじゃなくて、海外から来た食べ物の工夫もあるんだよ。たとえばバナナの輸入とかね」。「スーパーにある食べ物、それぞれにいろんな工夫があるのね。全部知りたくなっちゃう!」。ミウの疑問(ぎもん)が晴れるとともに、雨も上がりました。「じゃあ、あらためて、サラダいっぱい作ろ~!」。レタスをちぎり始める二人。これにて事件解決…なのか?