アプリを駆使(くし)してニッポンをさぐれ! ズームジャパン!
昼下がりのリビングで、今日も事件が起こりました。テーブルいっぱいにおいしそうな料理をならべてミウが写真をとっています。「フフフフ…。映(ば)える映える。盛(も)りに盛れてる! こりゃ、『いいね』や『コメント』がドドドーッて、怒濤(どとう)のように止まらないわ」。ショーゴはふしぎそうに見ていますが、ミウは「わたし、“美食インフルエンサー”になれちゃうかも~!」と夢中です。「スポンサーがつけばガッポガッポもうかるし、おいしいもの食べ放題~!」とごきげんなミウ。これがまさに、『とらぬタヌキの皮算用(かわざんよう)』。
「でも、映(ば)えるだけじゃだめね。写真を見た人にもっとこう、グッとうったえかけるメッセージ性がなきゃ」と考えるミウ。「あっ、そうだ!」とショーゴに近寄り、「かしこい弟、ショーゴ。何かヒントない?」と言いました。「じゃあ、日本の農業の問題を考えるメッセージを付けるのはどう?」とショーゴが言います。「日本の農業の問題? なにそれ?」。「アプリで動画を見てみよう!」。ショーゴがタブレットでアプリを起動します。「小5アプリ『ズームジャパン』。今回のテーマは、これからの食料生産。まずは、この動画はどうかな。『日本の農業をめぐる問題』。ズームアウト!」。
世界中からたくさんの食べ物を輸入している日本。そのため、食料自給率が低いという特徴(とくちょう)があります。「自給率」とは、わたしたちが食べる食料のうち、国内で作られている食べ物の割合(わりあい)のこと。現在は、38%まで減っています。特に、小麦、大豆、くだもの、肉類は多くを外国からの輸入にたよっています。農業をする人も減少しています。15年前から見て4割以上減りました。また、高齢化(こうれいか)も進んでいます。平均年齢(ねんれい)は、67歳(さい)。あれ地になってしまう農地も多く、その面積は、28万ヘクタール。これは神奈川県よりも広い面積です。
「日本の農業ヤバいじゃない!」とミウ。「そう。これは、小5で習う『小5の常識!』」とショーゴの決めセリフ。「将来(しょうらい)、食べ物がなくなっちゃったらどうしよう。これじゃ、美食インフルエンサーならぬ“はらぺこインフルエンサー”になっちゃうよ」と言いながらミウはスマホで自撮(ど)り。絶望の中でもインフルエンサーへの夢はあきらめないミウです。すると、「横から失礼!」とショーゴ。「農業の問題を解決する挑戦(ちょうせん)も始まっているんだよ」とタブレットでアプリを開きます。「ぼくが見てほしいのはこの動画。『農業を変える新たな挑戦』。ズームイン!」。
日本の農業をもりあげようと立ち上がったチームがあります。メンバーは15人、平均年齢(ねんれい)は30歳(さい)です。実はメンバーのほとんどが農業初心者。農家ではないけれど農業をしたい人たちが集まり、農業法人=農業を行う会社を立ち上げました。注目すべきは、その農地の広さです。日本の平均的な農地が3ヘクタールなのに対し、ここではその80倍以上、250ヘクタールを耕しています。農地はすべて、高齢でリタイアした農家の田畑や、放置されてあれ地になった土地。「離農(りのう)して農地のにない手がいなくなるので、その受け皿になって日本の農業を守れるような会社にしたい」(社長の中森さん)。
管理する田畑の数は1000まい。そのすべての位置情報や植えた作物、作業の記録などを細かくデータ化。情報を共有することで、初心者でも農作業が可能になりました。「田んぼの中のあぶない場所とか、『この道から入って』という入口とか、そういう情報も共有できる」(メンバー)。「システムがないと仕事ができないくらいたよりにしています」(メンバー)。データ化とわかいパワーを組み合わせることで、日本の農業をもりあげたい。「農業を変えるために、年収(ねんしゅう)が1000万円かせげると、若者(わかもの)が農業界に集まるきっかけになると思います」(中森社長)。「日本の食を支えるぞー!」。「オー!」。
日本の農業を救う最先端(さいせんたん)のマシンも登場しました。畑で動くトラクターをよく見ると…人がいません。自動運転で畑を耕す『無人トラクター』です。事前に設定するだけで、人工衛星からの位置情報をもとに正確に動きます。その誤差(ごさ)なんと3cm以内。導入したのはゴボウやサツマイモなどを作る宮崎県の農業法人。効率的な農業をめざして、2019年からドローンなど最先端の機械を積極的に導入しています。これにより、作業時間が大幅(おおはば)に減った一方、同じ人数で農地を1.4倍に。「3人、4人かけてやっていたことを機械なら1台で。作業の効率が非常に上がりました」(社長の新福さん)。
さらに新しい挑戦(ちょうせん)も始まっています。温室の中でロボットが動いています。よく見ると、ピーマンのへたのくきをつかみ…もぎ取りました。『ピーマン自動収穫(しゅうかく)ロボット』です。ロボットにはAI=人工知能が搭載(とうさい)されており、出荷できる大きさのピーマンだけを見分けて、自動で収穫していきます。
開発しているのは、ロボット作りの専門(せんもん)の会社です。挑戦(ちょうせん)を始めて3年。実用化に向け、試行錯誤(しこうさくご)が続いています。ピーマンの実が葉っぱにかくれていたり、くきが曲がっていたりするので、ロボットが収穫(しゅうかく)するのは至難(しなん)の技。AIに学習させたり、アームの動きを改良したりして改善(かいぜん)を図っています。「テクノロジーの力をうまく活用しながら、100年先も続く農業を実現したい」(社長の秦さん)。
「わたしたちにも、何かできることってあるのかな?」とミウ。「たとえば消費者として」とショーゴがタブレットのアプリを開きます。「地元の食品を選んだり、食べ残しを減らすことなんかも大切なんだよ」。すると、「わたし決めた! もっと日本の農業について伝えられるインフルエンサーをめざす!」とミウ。「ってことで、変身…トウッ!」。ミウが作業着すがたに変身。「まずは、農業体験してくる。トーウッ!」とどこかへ行ってしまいました。「えぇっ?」とあぜんとするショーゴ。これにて事件解決…なのか?