オープニングタイトル
クラス会では、その日親切にした子をおたがいに発表している。今日は今月の『親切』第一位(いちい)を発表する日だ。先生が言った。「今月の『親切』第一位には安西ユウさん。去年からずっと『親切』第一位です。みんな、拍手(はくしゅ)!」。ちょっとてれるユウ。
席(せき)がえでユウは、ヒナコととなりになった。いつも一人でぽつんとしている子だ。「よろしくね」とヒナコに言うユウ。ヒナコは、ユウがマンボウの形の消しゴムを持っているのに気づいた。
帰りぎわ、ヒナコはユウを文房具(ぶんぼうぐ)屋さんにさそった。二人が海の生き物の消しゴムをえらんでいる。ヒナコはタツノオトシゴの消しゴムを、ユウはタイの消しゴムをえらんだ。「あ、お友だちといっしょ?」とお店の人がヒナコに言う。楽しそうな二人だ。
河原(かわら)で、ヒナコは消しゴムのコレクションをユウに見せた。ユウのよりずっと多い。ヒナコがユウにクリオネの消しゴムをくれた。「いいの?」。「なかよしになった記念(きねん)だから」。ユウはイルカの消しゴムをあげた。「大切にするね」とヒナコ。「わたしも」とユウ。
学校に行く時も、授業(じゅぎょう)の体操(たいそう)でもユウにぴったりついてくるようになったヒナコ。ユウは放課後(ほうかご)、ヒナコのさそいを気にしながらも、べつの友だちと公園で遊ぶことにした。しかし、ユウは遊びに気が入らない。だれもいないベンチにヒナコがゲーム機(き)で遊ぶすがたがうかぶ。
決心したユウはヒナコのところへ行く。あやまるユウ。ヒナコは「わたしがぽつんとしてるからかわいそうと思っただけでしょ」と帰ろうとする。止めるユウともみあいになった。ヒナコのコレクションが地面にちらばり、イルカの消しゴムがなくなってしまった。
次の日、イルカの消しゴムを買ったユウは、ヒナコの家に行った。「これ、なくしたのと同じの買ってきたから」と、イルカの消しゴムをさしだした。ヒナコは、「ユウちゃんの親切は、ただのおしつけだよ。もうかまわないで」と家に入ってしまった。
イルカの消しゴムを持って帰るユウ。すると迷々があらわれた。「本当に同じ消しゴムかなあ。ヒナコちゃんがなくしたのは、二人で交換(こうかん)した消しゴムだよね」。ユウは「記念(きねん)だから、大切にするね」というヒナコの言葉を思い出した。
ユウは河原(かわら)へ行き、消しゴムをさがし始めた。草を一本ずつかきわけ、手はどろだらけになっている。そこへヒナコがやってきた。ヒナコには気づかずに消しゴムをさがしつづけるユウ。そんなユウをヒナコがじっと見ていた。