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オープニング
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『もやモ屋』。それは、まぼろしの映画館(えいがかん)。みればみるほど、頭はモヤモヤ、心もモヤモヤ。さあ、ごらんあれ!

scene 01有名人が母校をたずねる番組
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ケンタが宿題をしていると、テレビに『おかえり先輩(せんぱい)』という番組が流れました。有名人が母校をたずねる番組です。「今日の『おかえり先輩』は元サッカー日本代表の宮園朋樹(みやぞの・ともき)選手(せんしゅ)」としょうかいされました。校庭にあらわれた宮園選手に、まどから生徒たちがキャーキャー言いながら手をふっています。「いいなぁ。うちの学校も何かないかな」とケンタ。テレビにうつっていたのは靄田(もやだ)第二小学校。ケンタの通う靄田第一小学校のとなりの学校です。

scene 02ケンタの学校は有名人がいない
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次の朝、ケンタとアヤが学校に向かっていると、「きのうの『おかえり先輩』の宮園選手(せんしゅ)、かっこよかったよな。さすが、オレたちの先輩だよな」と話す男子たちが前からやってきました。ケンタに気がつき、「お、ケンタじゃん」と声をかけてきた男子が、「きのう、『おかえり先輩』見た? あれ? そういえば、第一小ってだれかいたっけ、有名人?」とじまん気に言います。そして、「じゃあな。また塾(じゅく)で会おうぜ」と、何も言えないケンタとアヤをおいて行ってしまいました。

scene 03くやしそうなケンタ
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「宮園選手(せんしゅ)って第二小出身だったんだね」。「いいなぁ、全国区で流れるって。第二小の子、うらやましい」。ケンタたちの教室でも女子がそう話しています。「第二小の前で写真とってく人、いるんだってさ」とアヤ。「第二小が有名なんじゃなくて、宮園選手が有名なだけだろ」とおもしろくなさそうなケンタ。「負けおしみ」と言うアヤに、「アヤちゃんはくやしくないの?」とケンタ。「学校っていうか、わたしが有名になりたい」とアヤが言いました。なんだかくやしそうなケンタ。アヤはそんなケンタが気になります。

scene 04ケンタが花だんで小判を見つけた!
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ケンタとアヤが花だんで作業をしています。「ぼくたちの学校も有名になんないかな」とつぶやくケンタ。「むりだね。だって小さいし、芸能(げいのう)人いないし、何もないもん」とアヤ。「つまんねえ学校!」とケンタがスコップを土にさすと、「ガキン」と土の中の何かにぶつかりました。ほりだしてみると、半分かけた小判(こばん)のようなものが出てきました。「そういえば死んだじいちゃんに聞いたことがある。この小学校がある場所って江戸時代はお城(しろ)だったって。お城って、たからものとかいっぱいおいてるんだよね」とケンタ。「埋蔵金(まいぞうきん)ってやつ? じゃあ、まさか…」。「学校の下には、埋蔵金がねむってる!? すごい!」。

scene 05埋蔵金が出たら有名人に勝てる
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そこへ、「なんだなんだ、もりあがってるな」と先生がやってきました。「あ、先生。あの…」と小判(こばん)を見せようとするケンタ。するとアヤは、「すごい大きな虫がいたんですよ」とごまかしました。「なんで先生に言わなかったの?」とケンタが聞くと、「こういうのはうちらが広めたほうが、『お手がら小学生!』ってなるじゃん」とアヤ。「なるほど」。「埋蔵金が出たら有名人に勝てるかもだね」。「ぜったい勝てるよ。でも、どうやって?」とケンタ。するとアヤが、「SNSで広めるのは?」と言いました。「SNSで注目を集めると、テレビ局の人から連絡(れんらく)が来たりするんだって。お姉ちゃんに相談してみようよ」。

scene 06SNSで埋蔵金のうわさを広めよう
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「これ、本当に埋蔵金?」。じっと小判(こばん)を見ていた姉のヒトミが言いました。「だって見てよ、このかがやき。小学校のある場所は、昔お城(しろ)だったんだよね、ケンタ?」とアヤ。「うん。だって、じいちゃんが言ってたし」とケンタ。どうも気乗りしない様子のヒトミですが、「お姉ちゃん、おねがい!」とアヤに言われ、「しょうがないな」とスマホで小判をさつえいしてSNSに上げてくれました。「これ、ホントだったらやばいね」とヒトミ。「これでうちの学校、めちゃくちゃ有名になるよ」とよろこぶケンタ。すると、さっそくSNSに返事が。「すごーい!」。次々とどく反応(はんのう)によろこぶケンタとアヤ。

scene 07SNSで広まっていく埋蔵金のうわさ
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次の日。大急ぎで学校へ走っていくケンタ。教室に着くとすぐに、「ね、どうだった?」とアヤにたずねました。「埋蔵金のやつ、ちょっとずつ広がっていってるみたい。お姉ちゃんにチェックしてもらってる」とアヤ。「よかったぁ」とケンタ。するとクラスの子が、「な、うちの学校の花だんの下に埋蔵金がねむってるってうわさ、知ってる?。「わたしもお兄ちゃんから聞いた。SNSで広まってるんでしょ?」と話しているのが聞こえました。うれしそうなケンタとアヤ。

scene 08「埋蔵金なんて話は聞いたこともない」というコメント
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「お姉ちゃん、どう、反響(はんきょう)?」。家に帰ってきたアヤがヒトミに聞きました。「すごいよ、ほら」。ヒトミのスマホにはいろいろなところからコメントが来ていました。すると、「うん?」とヒトミがコメントの一つに目を止めました。『埋蔵金なんて話、聞いたこともありません。そもそも靄野城があった場所は、小学校から5キロはなれた場所ですし、お城(しろ)の下だとしても、埋蔵金があるとはかぎりません』とあります。コメントを送ってきたのは、郷土(きょうど)の歴史(れきし)にくわしい大学教授(きょうじゅ)でした。顔を見合わせる二人。

scene 09本にはお城のことなど書いてなくて…
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次の日、「ねえ、本当にお城(しろ)だったんだよね、この小学校。埋蔵金があるって本当だよね?」とケンタに聞くアヤは、SNSのコメントのことを話しました。二人は図書室で郷土史(きょうどし)を調べます。「ここだ!」。『大正2年、もとは田畑だった盆地(ぼんち)に靄田尋常(じんじょう)小学校が設立され…』。「ねえ、お城のことなんて一つも書いてないじゃん。言いだしたのケンタだよね」とつめよるアヤ。「え? 姉ちゃんにSNSで広めてもらおうって言ったの、アヤちゃんじゃん」とケンタ。「ケンタがお城の話したからじゃん!」。「だって、おじいちゃんが言ってたんだもん」。「でも書いてないじゃん!」。

scene 10小判はニセモノ!? でも、学校には…
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「だ、だいじょうぶだよ。お城(しろ)の跡地(あとち)じゃなくても、現(げん)にこれが」と小判(こばん)を取り出すケンタ。ところが表面がくすんでいます。つめでこすってみると、下からプラスチックが…。「それ…ただの金メッキ…」。「うそだろ…」。そのとき、急に外がさわがしくなりました。まどから外を見ておどろく二人。大勢の人が学校に向かって走って集まってきています。「埋蔵金だって! 埋蔵金!」。大人も子どもも、みんなシャベルやスコップで花だんや地面をほりかえしています。「埋蔵金って本当なんですか?」。テレビ局の人たちもつめかけて先生をとりかこんでいました。たいへんなさわぎに青くなる二人。

scene 11学校を有名にしたかっただけなのに…
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そのとき、遠くからヒトミがアヤにさけびました。「アヤー! わたしのSNSあれてんだけど!」。「ケンタ、どうしよう」。「ぼくたちやばいことしちゃったのかな…」。「ケンタが埋蔵金だなんて言うからだよ」。「お姉ちゃんに言ったの、アヤちゃんじゃん」。「だって、有名にしたかったんだもん」。「ぼくだって…」。立ちつくす二人。みんなは「埋蔵金、埋蔵金」と言いながらそこらじゅうをほりかえしています。こまっている先生たち。どうすればよかったのか、ケンタとアヤの心は、モヤモヤ…。

もやモ屋
埋蔵金(まいぞうきん)はどこ?【善悪の判断、自律、自由と責任】
小5の健太とあやは、学校で金色の小判のようなものを見つける。埋蔵金ではないかと思った2人は、学校を有名にしようと、あやの姉のSNSを使って噂を広めるが…