
「みんな、こんにちは! あたし、がんこ。みんなにきいてほしいことがあるんだ。じつはちょっと前(まえ)に、ざわざわ森でオコ・リンボ火山がふんかしたの。すごい音がして、石がとんできたり、火山ばいがふってきたり。あんなことがざわざわ森でおきるなんておもってなかったから、すっごくびっくりしたんだ」。そこへ、「みんな~」とランププがやってきました。「オコ・リンボ火山がふんかして、とてもびっくりしたよね。じつは、みんながすむ日本には、ふんかをするかもしれない火山が100こいじょうあるんだよ!」といったので、「えーっ! そんなに?」。がんこちゃんはびっくり。

「日本でいちばんたかい山、富士山(ふじさん)も、じつは火山なんだよ。だからみんなにとっても、火山のふんかはいつおきてもおかしくないことなんだ」とランププ。「そうなんだ…。じゃあ、あたしが火山のふんかでけいけんしたことを、みんなにもしってもらおう。そしてみんなも、もしものときにどうこうどうすればいいか、いっしょにかんがえてみてね」とがんこちゃん。がんこちゃんがけいけんした、火山のふんか。今回(こんかい)は、富士山をれいにかんがえてみましょう。富士山をしらべてみると、火山がふんかしたとき、どうやってにげて、どうすればいのちをまもれるのか、ヒントをつかむことができます。

「いってきまーす!」。がんこちゃんがあそびに出かけました。「じゃ、ぼくたちもいってくるね」とお父さんがお母さんにいいます。「オコ・リンボ火山までとおいけど、だいじょうぶ?」とお母さん。「だいじょうぶ。この“空とぶつぼ”で、ひとっとびでごじゃるよ」と仙(せん)ちゃん先生がいいました。「もうすぐ、けっこんきねん日だから、きみのすきなリンボーワイスの花をとってくるよ、ハニー」とお父さん。「まぁ、ダーリン♪リンボーワイス!」とよろこぶお母さん。「ホンジャラ、ホエホエ、しゅっぱーつ!」。お父さんと仙ちゃん先生は、空とぶつぼにのってとんでいきました。

がんこちゃんたちがサッカーをしてあそんでいると、とつぜん大きな音がしました。「な、なんだ?」。「見て! オコ・リンボ火山が!」。山からもくもくとくろいけむりがふきあがっています。ドーナツぬまからとびだしたカッパさんがさけびました。「オコ・リンボ火山が、ふんかしたっちゃー!」。「えぇっ、ふんかー!?」。くろいけむりはどんどん大きくなります。「ぼく、なんだかこわいから、おうちにかえろうかなぁ」とチョビくん。でもケロちゃんとバンバンは、「とおいからだいじょうぶ」といいます。「たしかにとおいけど、ここにいてもだいじょうぶなのかな。うーん…」とかんがえこむがんこちゃん。

「このままあそぶ? それともおうちにかえる? オコ・リンボ火山はすごくとおいから、あそんでいてもへいきじゃないかなぁ。でも、かえったほうがいいのかなぁ」となやむがんこちゃん。「うーん…。やっぱり、もっとあそびたい!」。すると、「ダメ!」というこえがしました。「おうちにかえろう、がんこちゃん」。それは…、「ランププだよ。チョビくん、ケロちゃん、バンバン」。ランププでした。「おいらたちのこと、しってるのか?」とびっくりするバンバン。「ぽわぽわ。ランププ、ずーっとまえからしってるよ」。「えーっ?」。「あのけむりがこっちにくるまえに、おうちにかえろう」とランププがいいました。

オコ・リンボ火山の火口からは、けむりだけでなく、大きな石もとびだしてきます。「あわわわ…」。オコ・リンボ火山にのぼるとちゅうだったお父さんと仙ちゃん先生は、大あわて。「あたまをまもって、いわにかくれるでごじゃるーっ」。お父さんは、リュックであたまをまもって、ききいっぱつ! なんとか二人は大きないわのかげにかくれました。でも気がつくと、空とぶつぼがこなごなにわれていました。もう、空をとんでかえることができません。くろいけむりはますます大きくなり、あたりにひろがっていきます。

「えーっ! お父さん、オコ・リンボ火山にいったの!?」。おうちにかえってお父さんのことをきいたがんこちゃんはびっくり! 「あ、でも、仙ちゃん先生といっしょだから、きっとだいじょうぶでしょ」とお母さん。するとそのとき、「おねえたーん、おそと! おそと!」とがんぺーちゃんのこえがしました。まどからそとをのぞいたがんこちゃん、「えーっ! そとがはいいろになってる!」とびっくり。空からはいがふってきて、あたりいちめんにつもっていたのです。がんぺーちゃんは、「おすなあそび、する~」とよろこんでいますが、「そとで? そとに出てもだいじょうぶなのかなぁ…」とかんがえるがんこちゃん。

「そとに出る? うちにいる? ちょっとだけ出るならだいじょうぶかな。でも、そとはくらいし、あぶないかなぁ。うーん…」となやむがんこちゃん。「ちょっとだけなら、いっか!」といいました。「あーい♪」とよろこぶがんぺーちゃん。すると、「ダメ! 二人とも、これを見て」とランププがあらわれて、くびかざりを見せます。あかるくひかりはじめたくびかざりにうつしだされたのは…。「これがあのすなの正体(しょうたい)、火山ばい。火山がふんかしたらとんでくる、小さなガラスや石のつぶだよ。目に入ったり、すいこんだりすると、とってもきけんなんだ」とランププ。「えーっ!?」。

おうちのまえにラッパーがはしってきました。「あいたたた~!」。目がまっかです。「♪目がゴロゴロ、いたいYO! 手でこすっちゃダメだYO! す~ぐ水であらうんだYO~! ひぃ~!」。はしっていくラッパー。どうやら目に火山ばいが入ってしまったようです。「火山ばいはすごく小さいから、まどのすきまからも入ってきちゃうんだ。そんなときは、ぬれたタオルをおいてね。中に入りにくくなるよ」とランププ。「あとね、火山ばいのこわさはこれだけじゃないの。せいかつにひつような“あれ”がつかえなくなるかもしれないんだ」といいます。「えぇ? “あれ”ってなんだろう?」とがんこちゃん。

「ふぅ。やっとふんかがおさまったようですね。これからどうしましょう?」。がんこちゃんのお父さんが、いわかげから出てきました。「もうすぐ日もくれそうじゃし、つぼがなくてはのぅ、とほほ…」。すると、「おや? あれはなんだ? なにかながれてくるぞ」とお父さん。オコ・リンボ火山の火口からまっかなドロドロしたものがながれ出ています。「ほえっ! あれは“溶岩流(ようがんりゅう)”でごじゃる」。「ヨウガンリュウ?」。「スピードはゆっくりじゃが、いえをもやすくらいあついでごじゃる。のみこまれたら、おだぶつでごじゃるよ~!」。「ひえええ!」。あわててにげだす二人。そのころ、ドーナツぬまも火山ばいでよごれていました…。

「水が火山ばいでよごれてつかえないの!」。お母さんが見せたよごれた水に、がんこちゃんはびっくり。「ランププがいってた“あれ”って、水のことだったんだ」と気がつきます。「ひなんじょの“みちしるべのおか”なら水があるかもね」とお母さんがかけだしていきます。ところがそとに出たお母さんは、火山ばいですべってドシーン! ころんでしまいます。「火山ばいがつもったみちは、とってもすべりやすいんだよ」とランププ。そこで…。「シャキーン!」。ゴーグル、マスク、ぼうしをつけたがんこちゃんが水をくみにいくことに。そとに出たがんこちゃんは、すべらないように、「そーっと、そーっと」。

みちしるべのおかにみんながあつまっています。「ふしぎですねぇ。みちしるべのおかだけは火山ばいがつもってないなんて」とヒポ先生。「うちは、やねの上にはいがつもって、おもみでやねがおちたんだよ」。「うちのちかくでは、山の上からどろやはいがバーッとながれてきて…」。大人たちがはなしているところへがんこちゃんがやってきました。「ねえ先生、ここにもきれいな水はないの?」。それで気がついたように、「そうそう! 水もよごれてつかえなくなりましたよねぇ」とヒポ先生がいいます。「どうしよう、ランププ~」とがんこちゃん。「こまったねぇ…」。ランププもこまっています。

そのとき、「みんな、しずまるっちゃ!」とカッパさんが大きないわの上に立っていいました。「このいわの下に、せんぞだいだいまもってきた地下水(ちかすい)がねむってるっちゃ。いまこそそれをほりだすっちゃよ!」。そういうと、あたまのおさらをグルグルまわしはじめました。「う~、みなぎる、みなぎるっちゃ~! カッパパワー!」。すると大きないわがわれ、中から水がふきだしたのです。「わぁ~!」。「よかったね、ランププ!」とがんこちゃん。ところが、「あれ? あれれ? ランププ…?」。ランププはいなくなっていました。そして、ランプの木のみがピカピカひかりはじめました。「ん?」。

あれから何日(なんにち)かたって、空がはれてきました。みんながランプの木のまわりをそうじしています。「へっほ、へっほ…」。がんこちゃんとおかあさんが、おけをかついで水をくみにきました。するとそのとき、「うわぁ、なんだ、あれ?」とバンバンが空をゆびさしました。「えぇっ! なんかきた!」とチョビくん。「わぁっ、たべもの!?」とみんなびっくり。大きなわた毛(げ)が、バスケットに入れたたべものをはこんできたのです。ランプの木のみがピカピカひかっています。「あぁ、ランプの木が、たすけをよぶあいずをおくってくれていたんですねぇ。えぇ、えぇ」と校長先生がいいました。

がんこちゃんは、ランプの木にちかづいて、「ランププ、ありがとう」といいました。「うふふ」とランププがわらったようです。そのとき、とおくのほうから、「がんこちゃーん!」とお父さんのこえがしました。空を見ると、お父さんと仙ちゃん先生がわた毛(げ)にのってとんできました。「お父さん! 仙ちゃん先生!」。「ただいま~!」。お父さんの手には、リンボーワイスの花たばがにぎられています。「おかえり~!」。「ダーリン!」とお母さん。みんなも、「よかったね~!」、「おかえり~!」と口々にいったのでした。

日本でいちばんたかい山、富士山も、じつは火山。さいごにふんかしたのは、300年ほど前(まえ)。これからいつふんかしてもおかしくないといわれています。山の上の大きなあなは、火口とよばれるふんかのあと。富士山はこれまでなんどもふんかをくりかえしてきたのです。いったい、どんなふんかがおきたのでしょう。富士山のふもとにひろがる大きな森、『青木ヶ原(あおきがはら)の樹海(じゅかい)』。ここは、およそ1200年前、ふんかしたときにながれ出たとけた岩(いわ)、「溶岩(ようがん)」でいちめんおおわれていました。

森の中をあるいてみると…。小さなあな、すきまがある石は、すべて火口からながれ出た溶岩(ようがん)です。じめんの溶岩をしらべると、あるほうこうにながれたことがわかります。青木ヶ原の樹海(じゅかい)は、溶岩の上にできた森なのです。そしてじつは、樹海の下にも、溶岩がながれたあとがのこされています。じめんがくぼんだところには…。おや? あながあいています。中に入ってみると大きなくうどうが。たかさは10mあります。この中をあつあつの溶岩がながれていったのです。いちどのふんかでこんな大きなくうどうができるほどの溶岩。「ぽわぽわ。ランププだよ。溶岩って、すごい力があるんだね」。

ランププが、溶岩(ようがん)のえいぞうを見ています。「わぁっ。あつそう! これがほんものの溶岩。火口からドロドロッとながれ出るんだ」。ここで、ランププからクイズです。「この溶岩は、いったいなにがとけたものでしょうか?」。こたえは…、「石! 石がとけるなんて、びっくりだよね」。石がアイスクリームみたいにとけるなんて、本当(ほんとう)でしょうか。じっけんでしらべてみましょう。石を1000℃ちかくまでねっすると…。色(いろ)がかわって、ドロドロにとけました。このあつくとけた石が火口からながれ出すと、川の水のようにとおくまでながれていく。これが、溶岩流(ようがんりゅう)です。

「富士山のふもとにひろがる青木ヶ原。富士山のひみつがもっとかくれているんだよ」とランププ。とくべつなほうほうで地形(ちけい)だけをうかびあがらせた「赤色立体地図(せきしょくりったいちず)」。この地図をよく見ると…、「ほら、あなぼこがいっぱい。これはみんな、火口なんだ!」。ランププが富士山のてっぺんにやってきました。「この大きなくぼみを見て。富士山でいちばん大きい火口だよ」。その火口からふもとにむかっても、火口がたくさんあります。「しらべてみたら、富士山はこれまで、かぞえきれないほどふんかしたことがわかったんだ」。

くりかえしおきたふんかは、富士山からはなれたばしょにまでえいきょうしていました。さきほどの立体地図(りったいちず)。「この地図で見ると、溶岩(ようがん)がながれたあとがはっきり見えるよ。たくさんながれ出た溶岩は、なんと、みずうみの形(かたち)までかえてしまったんだ」。富士山のふもとにある精進湖(しょうじこ)。じつはもともと一つの大きなみずうみでした。ところがたいりょうの溶岩がながれこみ、二つにわかれてできたのです。このように、富士山はふんかをするたびに、まわりの地形(ちけい)を大きくかえてきました。富士山は、いまも生きています。いつふんかがおきてもおかしくないのです。

山梨県(やまなしけん)富士吉田市(ふじよしだし)は、富士山がいつふんかしてもにげられるように、日ごろからひなんのじゅんびをしています。溶岩(ようがん)できけんになるばしょなどをしめした地図(ちず)、「ハザードマップ」もその一つです。火山の研究者(けんきゅうしゃ)があたらしくつくっているハザードマップ。富士山のまわりのきいろい点(てん)のうちがわは、火口ができるかのうせいのあるはんいです。たとえば、五つの火口から溶岩がながれ出たばあいのようすを見てみましょう。ふんかから時間(じかん)がたつと、そのぶん溶岩はながれ下るので、溶岩におおわれるはんいはひろがっていきます。

そのはんいには、人々がくらす町もふくまれます。どのくらいのはやさで溶岩(ようがん)が市街地(しがいち)までたっするのかはかってみると…。富士吉田市の場合、早ければ、ふんかからおよそ2時間(じかん)で、火口から2.5キロメートルはなれた市街地までとどいてしまいます。静岡県(しずおかけん)富士宮市(ふじのみやし)でも、ふんかから2時間ほどで、市街地までとどいてしまいます。溶岩は、たかいところからひくいところへながれます。そのため、ながれるほうこうのよこへむかってにげるといいのです。

「溶岩流(ようがんりゅう)は、人があるくはやさよりもおそいんだ。だから、どこから、どんなふうに溶岩がながれてくるかしっていれば、ちゃんとにげることができるんだよ。がんこちゃんのお父さんもにげていたよね。みんなも、ハザードマップをかならず見てみてね。にげるときにどのあたりがきけんか、チェックしておくことがたいせつだよ」とランププがいいます。

ふんかしたときに気をつけることは、溶岩流(ようがんりゅう)だけではありません。富士山の南東(なんとう)のしゃめんにある大きな火口は、江戸時代(えどじだい)におきたふんかでできました。そのときのようすをえがいた絵(え)がのこされています。そのふんかでは、よそうもつかないばしょにまでえいきょうがおよびました。それが…。

「みんな、オコ・リンボ火山がふんかしたときがんこちゃんたちにおきたこと、おぼえているかな。空からふってきたのは、火山ばい。たいせつなぬまの水がよごれてしまってたいへんだったよね。火山ばいの正体(しょうたい)は、ガラスなどのこまかいつぶ。すいこむとたいへんだから、マスクなどで口やはなをおおってね。火山ばいがつもるとすべりやすくなるよ。がんこちゃんのお母さんも、すべってころんでいたよね。みんなもちゅういしてね!」。

火山ばいがどのようにひろがるか、じっけんでしらべてみましょう。じっけんそうちのホースの先からえきたいを入れると、水中につくった火山のもけいの火口から、けむりのようにふき上がります。この中にふくまれるのが、火山ばい。ふんかのいきおいで空たかくまでふき上がり、それからよこへひろがります。さらに風(かぜ)がふくと、とおくまでとばされます。

もしも300年前(まえ)とおなじふんかがおきると、西(にし)からふく風(かぜ)にのって、火山ばいはどんどんとおくまではこばれていきます。とおくはこばれた火山ばいは、富士山からおよそ100キロメートルはなれた東京でも数(すう)センチから10センチくらいつもります。でんしゃがとまったり、車がはしれなくなったりするおそれがあります。これからふんかのかのうせいがある富士山。わたしたちは、ふん石(せき)や溶岩(ようがん)、火山ばいのきけんをしっかりとしることがたいせつなのです。

「みんな、どうだった? ふんかがおきるとどんなことがおきるか、わかったかな?」とがんこちゃん。「もしもふんかがおきたとしても、どんなことがおきるのかわかっていれば、あわてずにこうどうすることができるよね」とランププ。「そうだよね。じぶんのいのちをまもれるようにしなくちゃね」。「みんなも、今日(きょう)、ここでしったことを、おうちの人にもおしえてほしいな。そして、ふだんからどんなじゅんびをしておけばいいか、ほんとうにふんかがおきたらどんなふうにこうどうすればいいか、はなしあってみてね」とランププがいいました。「それじゃ、またあおうね!」。「ばいば~い」。