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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01トロッコにあこがれる少年
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「トロッコ」とは、工事現場などで使われてきた箱型の貨車です。土工、つまり工事現場で働く人たちが、手で押したりして資材を運ぶのに使われました。主人公の良平は、トロッコにあこがれている少年です。来る日も来る日も工事現場にやってきては、作業の様子をながめていました。そんなある日、チャンスが訪れます。工事現場にだれもいなかったのです。良平と仲間の二人は、おそるおそるトロッコを押し始めます。三人の力がそろうと、トロッコはごろりと車輪を回し、動き出しました。

scene 02新しい時代の象徴
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良平が暮らしていたのは、神奈川県の湯河原です。当時は山あいの小さな村でした。そこに明治40年、小田原と熱海を結ぶ鉄道が開通し、蒸気機関車が走るようになります。良平が見ていたのは、そのときの工事の様子です。明治時代を通して、日本のいたるところで鉄道の建設が進められていました。近代化にともない、各地に広がる鉄道網。その工事現場で活躍するトロッコは、新しい時代の象徴だったのです。

scene 03良平に訪れたチャンス
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良平が初めてトロッコに触れてから十日あまり。いつもの工事現場に、見慣れない若い二人の作業員がトロッコを押しながらやってきました。駆け寄り、手伝いを申し出る良平を、快く受け入れてくれる二人。良平は張り切ってトロッコを押しながら、二人と一緒に山に向かって坂道を登っていきました。

scene 04至福の時
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良平は、「もう押さなくともいい」と、いつ言われるかと内心気がかりでなりませんでしたが、二人は黙々と押し続けます。良平はこらえきれずにたずねます。「いつまでも押していていい?」。すると二人は「いいとも」と言ってくれました。「優しい人たちだ」と良平は思います。トロッコを押しながら見る景色は、ふだんとはまったく違って見えました。あこがれのトロッコに乗り、次々と流れていく、見たこともない風景。大人の世界を垣間(かいま)見ている爽快感(そうかいかん)が良平を満たします。

scene 05作者、芥川龍之介
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この小説の作者は、芥川龍之介。大正時代を中心に活躍した作家です。人間や世間を見つめる冷静な視点と、格調高い文章で読者を魅了(みりょう)してきました。『鼻』、『羅生門』、『地獄変』など多くの作品を残しています。『トロッコ』を発表したのは30歳のときでした。すでに作家としての地位を確立していた芥川は、出版社で働く知人の話を元に、ひと晩で書き上げたといいます。芥川はこの作品で、あこがれと現実のはざまでゆれる少年の心をたくみに描き出しています。

scene 06現実に突き落とされる良平
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良平の夢のような時間は、あっけなく終わりを迎えます。トロッコを押す三人の前に開ける寒々とした海。良平は、遠くまで来すぎたことに気付き、愕然(がくぜん)とします。帰り道が気になる良平ですが、二人はトロッコをさらに遠くへ遠くへと進めていきます。もう日が暮れるかというそのとき、土工たちは、「われはもう帰んな。おれたちは今日は向こう泊まりだから」と無造作に言いました。遅くなると家で心配するだろうと言われ、良平は一瞬、あっけにとられます。

scene 07恐怖、そして孤独
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たったひとりの帰り道。道のりは、はるか彼方(かなた)です。じゃまなぞうりや羽織(はおり)を次々と脱ぎ捨て、良平は走ります。迫る夕闇(ゆうやみ)のなか、行きと同じ景色がまったく違って見えます。恐怖、そして孤独が良平に襲いかかります。村に帰りつくころには、もう家々には明るい電灯の光が灯っていました。そして、自分の家の門口(かどぐち)へ駆け込んだとき、抑えきれずに「わっ」と大声で泣き出さずにはいられなかったのでした。

10min.ボックス  現代文
トロッコ (芥川龍之介)
大人扱いされたときの無邪気な喜びと、保護を失ったときの恐怖感。誰にも思い当たる子ども時代独特の感覚を、巧みな人物描写や心象風景に注目して読み取る。

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