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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01戦争をつづった二人の詩人
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今から60年あまり前、日本は、アジア各地で戦闘を繰り広げていました。その太平洋戦争の時代を振り返り、詩につづった、二人の詩人がいます。一人は、茨木(いばらぎ)のり子。「わたしが一番きれいだったとき/わたしの頭はからっぽで/わたしの心はかたくなで/手足ばかりが栗色に光った」。もう一人は、原民喜(はら・たみき)です。「アノ日 トツゼン/空ニ マヒアガツタ/竜巻ノナカノ火箭(カセン)/ミドリイロノ空ニ樹ハトビチツタ」。

scene 02戦争さなかの青春時代
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力強くしなやかな感性で共感を呼んできた詩人、茨木のり子は、10代後半の日々を、太平洋戦争のさなかに過ごしました。軍国主義教育を一身に受けた、いわゆる軍国少女でした。戦争に勝つためには身も心も捧げなければいけない、そんな空気に国じゅうが染まっていました。茨木のり子も、学校の勉強を中断し、同級生とともに海軍の薬品工場で働きました。空襲の恐怖や空腹との闘い。工場が爆撃され、命を落とした友人もいました。そんな時代と自分自身の姿を、30代になってから書いた、8連からなる詩です。

scene 03「わたしが一番きれいだったとき」
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「わたしが一番きれいだったとき/街々はがらがら崩れていって/とんでもないところから/青空なんかが見えたりした//わたしが一番きれいだったとき/まわりの人達が沢山死んだ/工場で 海で 名もない島で/わたしはおしゃれのきっかけを落してしまった//わたしが一番きれいだったとき/だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった/男たちは挙手の礼しか知らなくて/きれいな眼差だけを残し皆発っていった//わたしが一番きれいだったとき/わたしの頭はからっぽで/わたしの心はかたくなで/手足ばかりが栗色に光った」。

scene 04時代の空気との違和感
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1945年8月15日、日本は無条件降伏します。国のために歯を食いしばった日々は、突如(とつじょ)、終わりを告げました。軍国主義は手のひらを返したように否定され、自由で民主的な新しい価値観が一気に流れ込みました。次第にずれていく“時代の空気”と、“自分自身の心”。茨木のり子は、自分が失ったものは何だったのか、じっと見据えました。詩「わたしが一番きれいだったとき」は、このように続きます。

scene 05“だから決めた できれば長生きすることに”
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「わたしが一番きれいだったとき/わたしの国は戦争で負けた/そんな馬鹿なことってあるものか/ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた//わたしが一番きれいだったとき/ラジオからはジャズが溢れた/禁煙を破ったときのようにくらくらしながら/わたしは異国の甘い音楽をむさぼった//わたしが一番きれいだったとき/わたしはとてもふしあわせ/わたしはとてもとんちんかん/わたしはめっぽうさびしかった//だから決めた できれば長生きすることに/年とってから凄く美しい絵を描いた/フランスのルオー爺さんのように/ね」。

scene 06妻の死と向き合っていた詩人
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繊細な心で、生と死を見つめ、小説や詩につづった、原民喜。40歳になる直前、太平洋戦争最後の一年間は、深い絶望の中に生きていました。「彼にとつて、一つの生涯は既に終つたといつてよかつた。妻の臨終(りんじゅう)を見た彼には自分の臨終をも同時に見とどけたやうなものだつた」。自伝的な小説『美しき死の岸に』につづられた、当時の民喜の思いです。だれよりも自分の作品を理解してくれた最愛の妻、貞恵(さだえ)に病気で先立たれ、民喜は、自らも死を思いつめていました。

scene 07原爆との遭遇
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そんな民喜を襲ったのが、広島に投下された原子爆弾でした。35万人が暮らす都市は、一瞬のうちに破壊されました。広島の家族のもとに身を寄せていた民喜は、廃墟(はいきょ)と化した町をさまよい歩き、無数の死に直面します。この光景を描いたのが、九つの詩からなる「原爆小景」です。カタカナの文字で、被爆の光景を、克明に、冷徹に切り取っています。

scene 08“コレガ人間ナノデス”
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「コレガ人間ナノデス/原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ/肉体ガ恐ロシク膨脹(ボウチョウ)シ/男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル//コレガ コレガ人間ナノデス/人間ノ顔ナノデス」〔「コレガ人間ナノデス」より〕。「焼ケタ樹木ハ マダ/マダ痙攣(ケイレン)ノアトヲトドメ/空ヲ ヒツカカウトシテヰル/アノ日 トツゼン/空ニ マヒアガツタ/竜巻ノナカノ火箭(カセン)/ミドリイロノ空ニ樹ハトビチツタ」〔「焼ケタ樹木ハ」より〕。

scene 09“死んだ人たちの嘆きのためだけに生きよ”
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妻に先立たれ、絶望していた自分が、被爆してもなお生きのびたという事実に、民喜は愕然(がくぜん)とします。広島で見たことを書き残そう、さらに深い絶望に耐えながら、もうしばらく生き続けようと、民喜は心に決めます。「自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ」〔『鎮魂歌』より〕。

scene 10「永遠のみどり」
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凄惨(せいさん)な光景を、生々しく描いた「原爆小景」。九つの詩の最後。不意に文字がひらがなに変わり、詩人の目線は未来へと転じます。「ヒロシマのデルタに/若葉うづまけ//死と焔(ほのほ)の記憶に/よき祈よ こもれ//とはのみどりを/とはのみどりを//ヒロシマのデルタに/青葉したたれ」〔「永遠のみどり」〕。

10min.ボックス  現代文
戦争と平和の詩
戦争と言う体験は、文学の世界でもさまざまな作品を生んだ。原民喜や茨木のり子の詩を中心に紹介し、時代や歴史の矛盾を見すえた文学者の眼差しを探る。

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