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オープニング
ないようを読む

(オープニングタイトル)

scene 01「先生」との出会い
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「私はその人を常に先生と呼んでいた。だから此所(ここ)でもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚(はばか)る遠慮というよりも、その方が私に取って自然だからである。私はその人の記憶を呼び起こすごとに、すぐ『先生』といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である」。明治時代の終わり。学生の「私」は、どこか陰のある男性と知り合います。「私」が「先生」と呼ぶその人は、奥さんと二人暮らし。帝国大学を卒業した、当時数少ないエリートでした。しかし、仕事をせず、親が残した遺産で生活していました。

scene 02先生の近づきがたさ
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「私は最初から先生には近づきがたい不思議があるように思っていた。それでいて、どうしても近づかなければいられないという感じが、何処(どこ)かに強く働いた。人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事の出来ない人、――これが先生であった」。

scene 03明治の文豪夏目漱石
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この小説『こころ』の作者は、夏目漱石。明治時代に活躍した文豪です。この作品は、亡くなる2年前、47歳の時に書いたものです。人間の心の奥深くに迫ったこの小説は、近代文学を代表する傑作として、多くの人々に読まれ続けています。

scene 04謎めいた言葉の数々
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『こころ』は、上・中・下に分かれ、上と中は、学生だった「私」が語り手となって回想するという形で書かれています。先生は「私」に、謎めいた言葉の数々を投げかけてきました。それは、先生の過去に何か深刻な出来事があったことをうかがわせるものでした。「私は世間に向って働き掛ける資格のない男だから仕方がありません」。「恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」。「平生はみんな善人なんです、少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです」。

scene 05謎をめぐる問答
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一体何があったのか、話してほしいと詰め寄る「私」に、先生はこんな言葉を返します。「私は死ぬ前にたった一人で好(い)いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか」。「あなたははらの底から真面目ですか」。

scene 06明かされる先生の心の闇
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先生が抱えていた、深い闇。その正体が、ついに明かされます。小説の後半は、先生が「私」に宛てた遺書という体裁で書かれています。「私は暗い人生の影を遠慮なくあなたの頭の上に投げかけて上(あげ)ます。しかし恐れては不可(いけま)せん。暗いものを凝(じっ)と見詰めて、その中から貴方の参考になるものを御攫(おつか)みなさい」。

scene 07先生の学生時代
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先生は学生時代、下宿していた家のお嬢さんにひそかな恋心を抱いていました。そこに、もう一人の男性が登場したことから、悲劇が始まります。先生の友人、Kです。親の期待に背いたために、仕送りを絶たれ、経済的にも肉体的にも限界まで無理を重ねていました。見かねた先生は、Kを強引に誘って、自分の下宿に一緒に住まわせていました。まじめで努力家のKを、先生は尊敬していました。そんなある日、Kが先生に、衝撃的な告白をします。

scene 08友情と恋愛の葛藤
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「彼の重々しい口から、彼の御嬢さんに対する切ない恋を打ち明けられた時の私を想像して見て下さい。その時の私は恐ろしさの塊(かたま)りといいましょうか、または苦しさの塊りといいましょうか、何しろ一つの塊りでした」。友情と恋愛の板ばさみになった先生は、策略を巡らせます。日頃、高い理想を掲げて生きていたKは、恋愛はそれを妨げるものだと言って軽蔑していました。先生はそんなKに対し、矛盾を突きつけます。

scene 09友人を追い詰める先生
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「私は先(ま)ず『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』といい放ちました。これは二人で房州を旅行している際、Kが私に向かって使った言葉です。私は彼の使った通りを、彼と同じような口調で、再び彼に投げ返したのです。私はその一言(いちごん)でKの前に横たわる恋の行手(ゆくて)を塞(ふさ)ごうとしたのです」。

scene 10友人の自殺
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さらに先生は、先手を打って下宿の奥さんと話し、お嬢さんとの結婚を決めてしまいます。Kは、奥さんからそのことを知らされました。その二日後の晩、Kは、頸動脈を切って自ら命を絶ちました。「私の眼は彼の室(へや)の中を一目見るや否や、あたかも硝子(ガラス)で作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立(ぼうだち)に立竦(たちすく)みました。もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫ぬいて、一瞬間に私の前に横(よこた)わる全生涯を物凄(ものすご)く照らしました」。

scene 11若者に託した望み
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先生は、Kとのあいだの出来事をだれにも話さないまま、その後の年月を重ねてきました。自分自身すら信じることができなくなった先生は、心を閉ざし、深い孤独に陥ってゆきました。しかし、死を選ぶ間際、一人の若者を信じてみようと望みを託したのでした。「私は何千万といる日本人のうちで、ただ貴方だけに、私の過去を物語りたいのです。あなたは真面目だから。あなたは真面目に人生そのものから生きた教訓を得たいといったから」。

10min.ボックス  現代文
こころ(夏目漱石)
文豪漱石の代表作。謎ときめいた展開と複雑で繊細な心理描写で読者を引きつける。明治時代の思想的な変革を解説し、小説の中でせめぎあう様々な価値観を読み取ってゆく。

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