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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01ドイツ赴任を終えて帰国する主人公
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「げに東(ひんがし)に帰る今の我は、西に航(こう)せし昔の我ならず、…我と我が心さへ変はりやすきをも悟り得たり。」――日本に帰る今の私は、ヨーロッパに出発したころの昔の私とは違う。自分の心が変わりやすく、頼りにならないことを思い知らされたのだ。小説『舞姫』は、主人公の太田豊太郎が船で日本へと向かう場面から始まります。5年間のドイツ赴任を終えた若き官僚の豊太郎は、自分を変えてしまった出来事について書き記していきます。

scene 02エリート官僚としての洋行
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明治時代、近代化を急ぐ政府は、西洋の進んだ社会制度や文化を吸収するため、優秀な人材を海外に派遣しました。豊太郎もその一人です。彼は、親の期待通りに勉強に励み、エリート官僚となりました。赴任先は、ドイツの首都ベルリン。当時のベルリンは世界有数の近代都市でした。豊太郎は将来の出世を夢見て、ドイツの官僚制度を調べる職務に励みます。

scene 03明治の文豪、森鴎外
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この小説の作者は明治の文豪、森鴎外です。主人公の豊太郎は、森鴎外自身がモデルだといわれています。森鴎外も、22歳ときから4年間、軍医として最新の衛生学を学ぶため、ドイツに留学していました。この体験をもとに書かれたのが『舞姫』です。発表されたのは明治23年、森鴎外にとって初めての小説でした。

scene 04自由で主体的な精神への目覚め
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ドイツに赴任して3年後、豊太郎に転機が訪れます。当時、豊太郎は法律を学ぶために大学に通っていました。日本とは違うその自由な校風に触れるうちに、自分の生き方に疑問を抱き始めます。「ただ所動的、器械的の人物になりて自ら悟らざりしが」。親や国の期待に応えるためだけに生きてきた、自分は受身な人間であったと豊太郎は悟ったのです。

scene 05美しい踊り子との出会い
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そんなある日の夕暮れ、豊太郎は、教会の前で泣いている一人の少女に出会います。「我が足音に驚かされて顧みた面(おもて)、余に詩人の筆なければこれを写すべくもあらず。」――私の足音に驚いて振り向いたその美しい顔立ちは、詩人の才能がない私には伝えるすべがない。少女の名前はエリス。貧しい彼女は、父親の葬儀を出すお金がなく、途方にくれていました。豊太郎はその費用を工面します。彼女は劇場で働く踊り子でした。豊太郎はエリスの純真さに魅かれ、しばしば逢うようになります。

scene 06留学生仲間の勝手なうわさ
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エリート官僚と貧しい踊り子。二人の交際のうわさはたちまち留学生仲間に広がり、誤解を生みます。「彼らは速了(そくりょう)にも、余をもつて色を舞姫の群れに漁(ぎょ)するものとしたり。我ら二人の間にはまだ痴がい(ちがい)なる歓楽のみ存じたりしを。」――彼らは私が踊り子たちを相手にする遊び人だと早合点してしまった。二人のあいだには、清純な愛しかなかったのに。やがて、そんなうわさ話が豊太郎を追い詰めます。踊り子に会うため公務をおろそかにしている、その噂を真に受けた上司によって、職を解かれてしまいます。

scene 07貧しいながらも幸せに満ちた日々
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失意の豊太郎を支えたのは、エリスの愛情でした。二人は一緒に暮らし始めます。「エリスと余とはいつよりとはなしに、あるかなきかの収入を合はせて、憂きが中にも楽しき月日を送りぬ」。友人の紹介で新聞記者として働き始めた豊太郎は、エリスと、貧しいながらも幸せに満ちた月日を送ります。やがてエリスは新たな命を身ごもります。エリスと子どもを抱え、これからどうすればいいのか、豊太郎は見通しの立たない自分の将来と向き合うことになります。

scene 08軽率な約束
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そんなとき、親友のエリート官僚、相沢健吉が、ベルリンに大臣と共にやってきます。豊太郎の才能を惜しむ相沢は、大臣のために働くよう勧めます。そして、大臣の信用を得るためにはエリスと別れるべきだと強く言います。豊太郎は思わず相沢の提案に従ってしまいます。「我が弱き心には思ひ定めん由なかりしが、しばらく友の言に従ひて、この情縁を断たんと約しき。」――私の弱い心では決断できないが、とりあえずは友の提案に従って、エリスと別れる約束をした。この軽率な一言が、後に大きな悲劇を招くのです。

scene 09不安、葛藤、後悔、自責
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豊太郎はエリスと別れる決心のつかないまま、大臣のために働き始めます。その働きが認められ、ついに大臣から一緒に帰国するよう促されます。「もしこの手にしもすがらずば、本国をも失ひ、名誉を引き返さん道をも絶ち、身はこの広漠たる欧州大都の人の海に葬られんかと思ふ念、心頭を衝いて起これり。」――この機会を逃せば、国や名誉を失ったままベルリンの街に埋もれてしまう。不安に襲われた豊太郎は、帰国を大臣に約束してしまいます。エリスを裏切った自分の弱い心を責め続ける豊太郎。雪の街をさまよううちに意識を失います。

scene 10心に残る悔やみきれない思い
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「豊太郎が帰国する」。そうエリスに伝えたのは、見舞いに訪れた相沢でした。それを聞いたエリスは叫びます。「我が豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺きたまひしか」――愛する豊太郎さん、これほどまでに私をだましていたなんて。信じきっていた豊太郎に裏切られたエリス。その心は打ち砕かれ、二度ともとには戻りません。心を失ったエリスとお腹の子どもをベルリンに残したまま、豊太郎は帰国の途につきます。悔やみきれない思いが胸に刻まれたのです。

10min.ボックス  現代文
舞姫(森鴎外)
漱石と並ぶ文豪の代表作。主人公は、母親、国、恋愛など様々な価値観に引き裂かれ、人生の目的を見失う。時代背景を解説し、独特の文語文で書かれた物語を整理する。

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