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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 0120年ぶりの帰郷
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小説『故郷』は、主人公「わたし」が、20年ぶりにふるさとを訪れるところから始まります。物語の舞台となるのは中国東南部の町、紹興(しょうこう)。北京からおよそ1500km離れた町です。都会で出世したエリートである「わたし」は、母が住む実家を売り払うためにふるさとに帰ってきました。20年ぶりに目にした町はさびれ、人々の暮らしも貧しいままでした。思い描いていたふるさととはかけ離れたその姿に、「わたし」は愕然(がくぜん)とします。

scene 02懐かしい名前
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沈んだ気持ちのまま実家に足を踏み入れた「わたし」を、年老いた母が迎え入れます。そのとき、「ルントウ」という懐かしい名前を耳にします。すると突然「わたし」の脳裏に不思議な場面が浮かびます。金色の満月の下、見渡す限りの海辺の砂地にスイカが植えられていて、その真ん中に少年が刺叉(さすまた)を手に立っている。少年は一匹の「チャー」を突こうとするが、「チャー」は身をかわして逃げてしまう。この少年がルントウでした。

scene 03少年時代の夢のような思い出
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ルントウと「わたし」が出会ったのは、およそ30年前。実家の正月行事を手伝いに来たのがきっかけでした。裕福な家のおぼっちゃんだった「わたし」と、農民の子ルントウ。年の近い二人は身分の差を越えてすぐにうちとけ、なかよくなりました。ルントウは、世間知らずの「わたし」に未知の世界を見せてくれました。ルントウとの夢のような時間は、あっという間に過ぎます。その後、二人が顔を合わせることはありませんでした。

scene 04記憶と現実のあいだでゆれる思い
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この小説の作者は、魯迅(ろじん)。中国近代文学の父と呼ばれています。文学の力で民衆の自立をうながし、国を変えようと考えた作家です。魯迅は、中国で長く続いてきた封建制度を鋭く批判する作品を数多く発表しました。小説『故郷』の舞台となった紹興は、作者魯迅のふるさとでもあります。紹興には、魯迅が生まれた家や通った学校が今でも残っています。記憶の中のふるさとと、現実のふるさと。二つのふるさとのあいだでゆれる主人公の複雑な思いは、魯迅自身の気持ちでもあります。

scene 05故郷での再会…
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思い出にひたる「わたし」のもとに、ルントウが訪ねてきました。30年ぶりのルントウの姿にとまどいながらも、懐かしさに胸がいっぱいになった「わたし」は昔と同じように声をかけます。続いていろいろな思い出があとからあとから、口から出かかりました。しかし、何かでせき止められたように、思いは頭の中をかけめぐるだけで、口からは出ませんでした。ルントウの顔にも喜びと寂しさの色が現れて何かを言おうとしますが、やはり声にはならず、最後に彼はうやうやしい態度に変わってこう言います。「だんな様!…」。

scene 06変わらない古い社会への無念
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魯迅が『故郷』を書いたのは、1921年、39歳のときです。その10年前の1911年、中国では辛亥(しんがい)革命が起こり、古い体制が倒れました。魯迅は、これで社会が変わる、と期待に胸をふくらませます。しかし、貧しさや、今の暮らしを変えようとしない人々の心など、社会が抱える問題はいっこうに変わりません。こうした無念さが、この物語には込められています。

scene 07かつてのわたしたちのように
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現実の厳しさを目の当たりにして絶望する「わたし」。しかしそのころ、主人公の甥ホンルと、ルントウの子シュイションが身分の差を超えて遊んでいました。かつての「わたし」とルントウと同じように。

scene 08かすかな希望
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いよいよ故郷を離れるそのとき、「わたし」の心に浮かんだのは、何も変わらない現実の重さと、それを変えるかもしれない、かすかな、本当にかすかな希望でした。「わたし」と一緒に船で故郷を離れていく甥のホンルが、「伯父さん、僕たち、いつ帰ってくるの。」とききました。シュイションが「家へ遊びに来い」と言ってくれたというホンル。じっと考え込むホンルの姿に、「わたし」も、「わたし」の母も、はっと胸をつかれたのでした。

10min.ボックス  現代文
故郷(魯迅)
人々が故郷に抱く郷愁は万国共通。しかし、この作品が描く望郷の念は、ひときわ強い。なぜだろう。19世紀の中国という社会背景や、作品のテキストから考える。

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