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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01思春期の子どもを描いた『たけくらべ』
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今から100年以上前、明治時代に書かれた小説『たけくらべ』。思春期にさしかかった子どもを描いた物語です。主人公の名前は、美登利(みどり)。14歳の娘です。「大黒屋の美登利とて、生国(せうこく)は紀州、言葉のいさゝか訛(なま)れるも可愛(かわゆ)く、第一は切れ離れよき気象を喜ばぬ人なし」――大黒屋に住む美登利という娘、生まれは和歌山県で、言葉に訛があるのもかわいらしく、さっぱりとした気性が誰からも愛されていました。

scene 02遊女になる運命の少女、美登利
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美登利は子どもなのにお金をたくさん持っていて、20人の友だちみんなにゴムまりを買ってあげたり、なじみのお店に売れ残ったおもちゃを買い占めたりと、豪快な買い物のエピソードには事欠きませんでした。美登利が住んでいたのは、東京下町の吉原。この一帯は「遊郭(ゆうかく)」と呼ばれ、遊女(ゆうじょ)という、お客とともに一夜を過ごしたりする女性たちがいました。その多くは、借金の形(かた)として連れてこられたのです。美登利の姉は、売れっ子の遊女でした。そして美登利も、いずれは同じ遊女になる運命でした。

scene 03実際に吉原を見ていた作者、樋口一葉
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『たけくらべ』の作者は、 樋口一葉(ひぐち・いちよう)。女性ならではの視点でいくつもの名作を残し、24歳という若さで亡くなりました。一葉は、21歳からおよそ一年間、吉原の裏町で駄菓子屋を営んでいました。遊郭という特殊な世界、吉原。そこで垣間見た子どもたちの姿を描いたのです。

scene 04美登利の淡い恋
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物語は、美登利の心に芽生えた異性へのほのかな好意を繊細に描いていきます。相手は、同じ学校に通う1歳年上の藤本信如(しんにょ)。寺の息子で、まじめな優等生でした。運動会の日、木の根につまづいた信如。偶然居合わせた美登利はハンカチを差し出します。ところが同級生たちは、「坊主のくせに女と話をしておかしい。美登利さんは藤本のかみさんになるのだろう」などと二人をはやし立てます。真面目な信如はうわさになることを嫌い、あえて美登利に邪険な態度を取るようになります。そんな信如の気持ちを美登利は知る由もありません。

scene 05雨の日のできごと
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ある雨の日のこと。美登利は家の前で、下駄の鼻緒が切れて途方に暮れている信如を見かけます。真っ赤になって立ちつくす美登利。しかし、相変わらず信如は美登利を無視します。「ゑゝ例(いつも)の通りの心根。…何を憎んでそのやうに無情(つれなき)そぶりは見せらるゝ。言ひたい事は此方(こなた)にあるを、余りな人」――ああ、またいつものいじわる。どうしてこんな冷たい態度をとるのか、あんまりだ。

scene 06素直になれない二人
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切ない思いがこみ上げる美登利。何も言わずに、鼻緒を直すための布を投げ出し、その場を去りました。「信如は今ぞ淋(さび)しう見かへれば、紅入(べにい)り友仙(ゆうぜん)の雨にぬれて、紅葉(もみじ)の形(かた)のうるはしきが我が足ちかく散(ちり)ぼひたる、」――さびしく振り返った信如の目に映ったのは、雨にぬれた、もみじの模様の赤い友禅染めの布でした。美登利の残した、赤いはぎれ。しかし、信如はかたくなに拾おうとしませんでした。

scene 07子ども時代の終わり
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美登利の子ども時代は、突然終わりを告げます。鷲(おおとり)神社の祭りの日、美登利は髪形を島田髪に変えました。これは、吉原では遊女になる準備が始まるということです。しかし美登利は、自分の身に起きた変化が受け入れられず、経験したことのない感情に襲われます。「次第次第に心細き思ひ、すべて昨日の美登利の身に覚えなかりし思ひをまうけて、物の恥かしさ言ふばかりなく…」。大人になんかなりたくない…、美登利は泣き続けました。この日から美登利は人が変ったようにおとなしくなり、家にこもりがちになりました。

scene 08厳しい大人の世界へ
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一葉は、遊郭・吉原という特殊な舞台を用意しながら、子どもがやがて向き合うことになる現実を伝えます。身分や地位、経済力によって人々を分け隔てる、大人社会の一面です。美登利を待ち受けているのは、華やかでありながら自由な恋愛さえ許されない、縛られた人生です。拒否することのできない現実。その中で美登利は、無垢(むく)な子ども時代のかけがえのなさを思い出すのです。

scene 09投げ入れられた水仙の花
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物語の締めくくり。一葉は、二人のはかない関係にもう一つのエピソードを書き加えました。ある日、美登利の家に水仙の造花が投げ入れられます。「誰れの仕業(しわざ)と知るよしなけれど、美登利は何ゆゑとなく懷かしき思ひにて、違(ちが)ひ棚の一輪ざしに入れて、淋しく清き姿をめでけるが、」――美登利はなぜだか懐かしい感じがして、その水仙を飾り、さびしげで清らかな姿を眺めました。あとから伝え聞いたところでは、その翌日は、吉原から離れた仏教学校に信如が入学する日だったのです。

10min.ボックス  現代文
たけくらべ(樋口一葉)
日本最初の職業女流作家による、短編小説。少女の切ない初恋が、清純な文体でつづられている。遊郭と言う地域、当時の女性観などを解説し、この作品の世界を紐解く。

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