チャプターあらすじを読む
オープニング
ないようを読む

(オープニングタイトル)

scene 01日々の記録や思いが綴られた「日記」
ないようを読む

日々の記録、日記。そこには、日常の何気ない出来事、喜びや悲しみ、そして、自分との対話が綴られます。有名な文学者や芸術家たちも、多くの日記を残しています。その人自身の生々しい感情や、人生の折々の葛藤など、作品とはまた違う一面を垣間見ることができます。

scene 02洋画家、岸田劉生の日記
ないようを読む

大正から昭和初期にかけて活躍した岸田劉生。日本を代表する洋画家です。その代表作「麗子微笑」。写実的でありながら、神秘的な味わいのあるこの作品は、国の重要文化財にもなっています。中学時代から絵画を学んだ劉生は、1912年、21歳のとき、本格的に画家としてデビューします。そんななか劉生は、自分自身を見つめ、心の片隅にある不安とそれを振り払おうとする言葉を、日記に綴りました。

scene 03虚栄心、そして心の中の不安
ないようを読む

「自分の虚栄心は他人に対して、自分は偉い人間だぞと云ひたがつている、それから、自分は世間的に名のひろまつた、つまり有名な人間だぞと曰(い)ひたがつている。…自分は、自信を失ふ事が多いのである。自分はよく、こんな事では駄目だ、すつかり、改めて、一切はぢめからやりなほして、まつ向からわきめもふらずに突き進まなきや駄目だぞと思ふ」。

scene 04自分を励ます言葉
ないようを読む

劉生は、世に認められたいという虚栄心と、実際の自分とのギャップにあえいでいたのです。そして、日記には、そんな自分を励ます言葉が書かれています。「醒めよ、吾が冷き理性、醒めよ、吾が、強き意力、常に爾(なんじ)を欺(あざむ)きて、眠らせんとする、卑屈なる吾を鞭打て、…吾は弱し、されど、吾は、吾自ら進まざる可らず 醒めよ! 常に醒めよ!」。そこには、自らと闘う、若き芸術家の姿があります。

scene 05石川啄木の日記
ないようを読む

明治時代の詩人であり、歌人としても知られる石川啄木。自分自身の暮らしに根ざした、情感豊かな短歌を数多く残しました。「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」。啄木の代表作『一握(いちあく)の砂』にある一首です。啄木はその作品を高く評価されながら、家族の面倒をみるために借金を重ね、その生活は苦しいものでした。そして、27歳という若さで亡くなります。そんな啄木にも、胸をときめかせた幸せな時がありました。結婚、そして子どもの誕生です。

scene 06妻への思いと、生まれくる子への期待
ないようを読む

明治39年12月、啄木は20歳、結婚2年目です。故郷岩手県渋民村で代用教員として働いていました。啄木は、出産のため盛岡で入院して離れて暮らす妻節子が恋しくてたまりません。「二十六日夜 せつ子よ、予は御身を思ひ、過ぎ来し方を思ふて、今夜只一人、闃(げき)たる雪の夜の燈火の下、目が痛む程泣いた。せつ子よ、実に御身が恋しい。…せつ子よ、御身から生れる我が子は果して男であらうか。男なら『行雄』と名付けよう。若(も)し女だつたら、嘗(かつ)て御身の云ひ出した『京子』といふのが、当然その子の名となるのだのに」。

scene 07娘誕生の喜び 
ないようを読む

この日記の3日後、無事に女の子が誕生します。「三十日 朝電報来る イマブジオミナヲウム 予はこの電報を握って臥床の中より踊り起きぬ。あゝ盛岡なるせつ子、こひしきせつ子が、無事女の児-可愛き京子を生み落したるなり。予が『若きお父さん』となりたるなり。…天地に充つるは愛なり。予は此日の心地を、いかなる語を以ても表はす事能はず」。

scene 08樋口一葉の日記
ないようを読む

明治を代表する作家、樋口一葉。女性ならではの視点と巧みな文章力で、数々の名作を残しました。当時、女性は社会的立場が低く、文学の世界でも女性が作家を目指すこと自体、珍しいことでした。そんななか、一葉は作品を書き続け、22歳のときに代表作『たけくらべ』を発表します。これは、遊郭(ゆうかく)に生きる女性の悲哀を細やかに描いたものでした。この作品が絶賛されたことを、一葉は友人の作家たちから聞きます。

scene 09作品の評価への不信感
ないようを読む

「二子(にし)来訪。…『今宵(こよひ)は君がもてなしをうけばやとてまうで來つる也。』」――二人の友人が訪ねてきた。「今宵は君にご馳走してもらおうと思って来たんだ」という。その友人は、当時の文壇で最も影響力のあった文豪の一人、森鴎外が一葉を称賛している文章を見せます。それはまさに、文壇でお墨付きを得たに等しいことでした。友人たちは羨ましがりました。しかし、一葉が抱いた感想は冷ややかなものでした。

scene 10時代と心を映し出す「日記」
ないようを読む

「たゞ女子(をなご)なりといふを喜びて、もの珍しさに集(つど)ふ成けり。…たゞうまし、上手なりといふ計(ばかり)。その外にはいふ詞(ことば)なきか、いふべき疵(きず)を見出さぬか。いとあやしき事ども也。」――ただ書いたのが女性だということだけを珍しがっている。うまいとか上手だとかいうばかりで、悪いところを指摘しないのは信用できない。世の中に対する、一葉の強い不信感がうかがえます。書く人の生きた時代を映し出し、深い思いが綴られた日記。時を超えて、さまざまなことを語りかけてきます。

10min.ボックス  現代文
日記
日々の出来事や、人に言えない思いが記す日記。そこに綴られるのは、自分自身と向き合う言葉だ。近代の文学者の日記を中心に読む。

クリップ

教材きょうざい資料しりょう

教材・資料(先生向け)

配信はいしんリスト

今年度こんねんど放送ほうそう

その放送ほうそう