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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01わが国初の歌物語
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「むかし、男ありけり」。この有名な書き出しで始まる『伊勢物語』は、125段から成る、わが国初の歌物語です。今から1000年以上前、平安時代初期に生まれたといわれています。物語を貫くテーマは「愛」。純粋な愛、許されない愛、親子の愛…。さまざまな形の「愛」が描かれています。

scene 02おさななじみとの純粋な愛
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おさななじみの男と女。家の近くの井戸のまわりでいつも一緒に遊んでいた二人は、大きくなるにつれ、互いを意識しあうようになります。「男はこの女をこそ得(え)めと思ふ、女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。つひに本意(ほい)のごとくあひにけり」。男はこの女を妻にしたいと思い、女はこの男を夫にと思っていました。そのため、女は親がすすめるほかの男との結婚は承知しません。そしてとうとう二人は、結婚することができました。

scene 03激しく一途な愛
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激しい、一途(いちず)な愛も描かれます。「男」は、長年恋い焦がれてきた身分の高い女性を、ある夜、やっとの思いで連れ去ります。「夜もふけにければ、鬼ある所ともしらで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる倉に、女をば奥におし入れて、…」――雷が鳴り、雨もひどく降ってきたので、男は鬼がすむところとも知らず、誰もいない倉の奥に女を隠しました。

scene 04一途な愛の悲しい結末
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「はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。『あなや』といひけれど、神鳴るさわぎに、え聞かざりけりけり」――早く夜があけないかと思いながら戸口で見張っていた男。しかし鬼は、あっという間に女を一口に食べていたのです。女の悲鳴は、雷の音で聞こえませんでした。

scene 05 母親への細やかな情愛
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家族への情愛も描かれます。宮廷に仕える「男」は、母と離れて暮らしていました。忙しくてなかなか会いに行けない母から便りがきます。「老いぬればさらぬ別れのありといへば いよいよ見まくほしき君かな」――私は年を取りました。死の別れが迫っていると思うと、おまえに会いたいという気持ちがいよいよ募ります。男は涙を流してこう返しました。「世の中にさらぬ別れのなくもがな 千代もといのる人の子のため」――この世に、死という避けられない別れなどなければいいのに。親には千年も生きて欲しいと祈るのが子どもなのだから。

scene 06主人公のモデル、在原業平
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『伊勢物語』は、和歌を中心に、それにまつわる言い伝えなどをまとめた歌物語です。物語の「男」のモデルとされるのが、平安時代初期に活躍した歌人、在原業平(ありわらのなりひら)です。当時の記録には、容姿端麗(ようしたんれい)、美貌(びぼう)の皇族で、性格は自由奔放、恋愛を詠む和歌に秀でていると記されています。業平が詠んだ有名な歌。「月やあらぬ 春やむかしの春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして」――月は昔の月ではないのだろうか、春は昔の春ではないのだろうか、私だけはもとのままなのに…あの人はもういない。

scene 07歌が詠まれた背景
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『伊勢物語』では、この歌が詠まれた状況が詳しく語られます。「むかし、東(ひんがし)の五条に、大后(おほきさい)の宮おはしましける西の対(たい)に、すむ人ありけり」――昔、東の京の五条に高貴な女性が住んでいました。「それを本意(ほい)にはあらで、心ざしふかかりける人、ゆきとぶらひけるを、正月(むつき)の十日ばかりのほどに、ほかにかくれにけり」――「男」はその女性に思いを寄せ、足しげく通っていましたが、一月十日ごろ、女性の姿は消えてしまいました。

scene 08身分の違う女性への消えぬ思い
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この「西の対に住む人」とされるのが藤原高子(ふじわらのたかいこ)。のちに清和天皇の后となる貴族の娘です。当然、「男」との恋愛が許されるはずはなく、男の手の届かない所に隠されてしまいました。男は、憂鬱な気持ちのまま、日々を過ごしていました。時がすぎ、次の年の一月、梅の花咲くころ、男は思い出の場所を訪れます。しかし目の前に広がる風景は、去年とはまったく違って見えました。男は決して戻ることのない、憧れの女性との日々を思い出します。「月やあらぬ 春やむかしの春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして」。

scene 09都に残してきた人を思う歌
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その後、男は京を離れ、友人たちと旅に出ます。旅の半ば、一行が休憩した沢のほとりには、かきつばたが美しく咲いていました。「それを見て、ある人のいはく、『かきつばた、といふ五文字を句のかみにすゑて、旅の心をよめ』といひければ、よめる」。「かきつばた」という五文字を句の頭に置いて、旅の思いを詠むのです。そこで男が詠んだ歌。「から衣(ころも) きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞ思ふ」――唐衣は着ているうちになじんでくる。私にはなれ親しんだ妻が京にいるので、旅のつらさがしみじみ感じられる。

scene 10時代を超えて読みつがれる物語
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恋多き男を主人公として、さまざまな物語を展開する『伊勢物語』のスタイルは、『源氏物語』や『好色一代男』など、のちの文学にも大きな影響を与えました。さまざまな愛の物語を通して、人間の普遍的な、相手を思う気持ちや心の揺れにせまった『伊勢物語』。時代を超えて、多くの人に読みつがれています。

10min.ボックス  古文・漢文
伊勢物語
10世紀に成立した初めての歌物語。在原業平をモデルに、事実と虚構を織り交ぜた一代記風。歌物語と言うユニークな構成と、きめ細かい心理描写を読む。
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平安時代歌人和歌在原業平

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