チャプターあらすじを読む
オープニング
ないようを読む

(オープニングタイトル)

scene 01日本文学史上、最高の傑作
ないようを読む

日本文学史上、最高の傑作といわれる『源氏物語』。華やかな王朝を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた、五十四帖(じょう)に及ぶ長編です。「いづれの御時にか、女御(にょうご)、更衣(こうい)あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際(きわ)にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」――どの帝(みかど)の時代でしたか、宮廷で仕える大勢の女性の中に、さほど身分が高くはないのに、特別帝に愛されている方がいらっしゃいました。

scene 02帝に愛された女性とその御子
ないようを読む

物語の舞台となったのは、平安時代の中期。帝には何人もの妻がいました。その中で、帝の寵愛(ちょうあい)を一身に受けていたのが、桐壺の更衣(きりつぼのこうい)と呼ばれる女性です。帝とこの女性とのあいだに生まれたのが、物語の主人公、光源氏(ひかるげんじ)でした。「前(さき)の世にも御契りや深かりけむ、世になくきよらなる玉の男御子(をのこみこ)さへ生まれたまひぬ」――前世からの御縁が深かったのか、この世のものとは思えないほど美しい、玉のような皇子がお生まれになりました。

scene 03宮廷の女性たちの厳しい序列
ないようを読む

当時、宮廷の女性たちのあいだには厳しい序列がありました。帝の正式な妻は「中宮(ちゅうぐう)」。中宮に続く身分の高い女性は「女御(にょうご)」。桐壺は、それより低い「更衣(こうい)」でした。そのため、桐壺の更衣はほかの女性たちから激しい嫉妬(しっと)と嫌がらせを受け、心労のあまりこの世を去ります。このとき源氏は、わずか三歳でした。

scene 04亡き母とうり二つの女性
ないようを読む

ある日、父である帝のもとに新しい妻がやってきます。桐壺の更衣とうり二つの、藤壺の宮でした。「母御息所(みやすどころ)も、影だにおぼえたまはぬを、『いとよう似たまへり』と典侍(ないしのすけ)の聞こえけるを、若き御心地にいとあはれと思ひきこえたまひて、常に参らまほしく、なづさひ見たてまつらばやとおぼえたまふ」――亡くなった母の面影さえ覚えていないのに、「よく似ていらっしゃいます」と典侍が申し上げていたので、幼心にも心を打たれ、いつもおそばにいて姿を拝見していたいと思わずにはいられません。

scene 05許されぬ恋
ないようを読む

亡き母の面影を重ね、藤壺を慕う幼い思いは、源氏が成長するにつれ、しだいに恋へと変わっていきました。しかしその恋は、藤壺が源氏の子を身ごもるという最悪の結果をもたらします。生まれた男の子は、源氏の父、帝の子として育てられました。

scene 06 貴族社会の人々を生き生きと描いた紫式部
ないようを読む

この物語の作者は、紫式部。一条天皇の中宮、彰子(しょうし)につかえていた教養豊かな女性です。紫式部は、自分自身が実際に見たり聞いたりしたことをもとに、源氏物語を書きました。物語には、階級社会という現実にもがき苦しみながらも、自分らしく生きようとする人々が数多く登場します。紫式部は、その一人ひとりをていねいに描き分けていきました。

scene 07 源氏の心を捉えた無邪気な紫の上
ないようを読む

その一人、紫の上。源氏がだれよりも心を許し、深く愛した女性です。初めて出会ったのは、紫の上が十歳の頃。源氏は、この幼い女の子の姿があの藤壺とあまりに似ているのに驚きます。「白き衣(きぬ)、山吹などの萎えたる着て走り来たる女子(おむなご)、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生(お)ひ先見えてうつくしげなる容貌(かたち)なり。髪は扇をひろげたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。『雀の子を犬君(いぬき)が逃がしつる、伏籠(ふせご)の中(うち)に籠めたりつるものを』」。

scene 08第一の妻の座をおびやかす女性の出現 
ないようを読む

柔らかな着物、揺れる髪、こすって真っ赤になった顔。「雀の子を犬君が逃がしてしまったの」と訴える紫の上の無邪気な姿が、源氏の心を捉えます。源氏はこの少女を引き取り、自らの手で育てました。やがて美しく成長した紫の上は、源氏の最も大切な妻となります。それから十七年。一人の女性が、紫の上の地位をおびやかします。源氏が、若くて身分の高い女性、女三の宮を、正妻として迎え入れたのです。紫の上は、一人眠れぬ夜を過ごします。

scene 09紫の上の眠れぬ夜
ないようを読む

「風うち吹きたる夜のけはひ冷(ひや)やかにて、ふとも寝入られたまはぬを、近くさぶらふ人々あやしとや聞かむと、うちも身じろぎたまはぬも、なほいと苦しげなり。夜深(よぶか)き鶏(とり)の声の聞こえたるもののあはれなり」――風が吹く夜、冷え冷えとして少しも寝つかれません。近くにいる女房達から様子が変だと思われないよう、身じろぎ一つしないでいらっしゃいます。夜深く、鶏の声が聞こえるのも、しみじみと無性に悲しく思えます。

scene 10運命の皮肉
ないようを読む

その後、女三の宮は男の子を生みます。しかしこの子は、密かに関係を持った別の男の子どもでした。源氏は、運命の皮肉なめぐり合わせに慄然(りつぜん)とします。「故院の上も、かく、御心には知ろしめしてや、知らず顔をつくらせたまひけむ、思へば、その世のことこそは、いと恐ろしくあるまじき過ちなりけれ、と近き例(ためし)を思すにぞ、恋の山路はえもどくまじき御心まじりける」――かつて、父の帝も同じように、実は知っていて知らぬふりをしていたのではないか、まったく恐ろしい過ちだったと、自身の過去を振り返るのでした。

scene 11壮大な人間絵巻
ないようを読む

その後、物語は源氏から次の世代へと引き継がれていきます。めぐる因果(いんが)。からみ合う運命の糸。壮大な王朝物語に描かれた、人と人とが織り成す人間模様は、千年たった今も、色あせることはありません。

10min.ボックス  古文・漢文
源氏物語(紫式部)
前半、桐壺や若紫に焦点を絞って紹介する。光源氏の美意識や行動様式、満たされない心を理解できるように、平安時代の宮中の人間関係、恋愛観などを解説する。

クリップ

教材きょうざい資料しりょう

教材・資料(先生向け)

配信はいしんリスト

今年度こんねんど放送ほうそう

その放送ほうそう