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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』
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噂話や昔話など、主に口伝えで人々に広まった話を「説話」といいます。平安時代から鎌倉時代にかけて、こうした説話を記録・編集した作品「説話集」が多く登場しました。代表的なのが、平安時代に作られた『今昔物語集』。1000以上もの説話が収められた日本最大の説話集です。もう一つ代表的なのが、鎌倉時代に作られた『宇治拾遺物語』です。こうした説話集には、仏の教えを説く話や、鬼や生霊が登場する怖い話、あるいは笑い話などが収められ、当時の人々の考え方や暮らしぶりをうかがうことができます。 。

scene 02したたかな貴族の話
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平安時代の貴族のユーモラスな一面を描いた話です。「今は昔、阿蘇のなにがしといふ史(さくわん)ありけり。丈短(たけひき)なりけれども、魂(たましい)はいみじき盗人(ぬすびと)にてぞありける」――昔、阿蘇のなにがしという史(さかん)がいました。史とは宮中で文書を扱う役職のことです。身分はそれほど高くありません。この貴族は、背丈は低く、見栄えはしませんが、大変なしたたかものでした。

scene 03盗賊に襲われた男は…
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ある日、この史(さかん)は宮中での仕事のため、帰りが遅くなります。当時の都には治安の悪い場所があり、夜になると盗賊が出現しました。史は牛車(ぎっしゃ)に乗り込むと、着物を脱いで敷物の下にしまいこみます。しばらく進むと、盗賊が現れ、牛車は取り囲まれてしまいます。盗賊たちが牛車の簾(すだれ)を上げると、そこには裸の男が座っていました。「盗人、『あさまし』と思ひて、『こはいかに』と問へば、」――盗賊は唖然(あぜん)としながら、「これは一体どうしたのだ?」と問うと…。

scene 04盗賊の裏をかいた男
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「史、『東(ひむがし)の大宮にて、かくのごとくなりつる。君達(きんだち)寄り来たりて、己(おのれ)が装束をばみな召しつ』と笏(しゃく)を取りて、よき人に物申すようにかしこまりて答へければ、」――史(さかん)は「東の大宮大路で、みなさまのような方々がいらっしゃいまして、私の衣装を召し上げてしまいました」と丁寧に答えます。「盗人笑ひて捨てて去(い)にけり」――それを聞いた盗賊たちは、笑いながら去っていきました。史は盗賊たちの出現を予想して、その裏をかいたのです。

scene 05人々の関心を集めていた武士
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説話には、人々の興味や関心が反映されています。平安時代の半ば、都の人々の関心を集めていたものの一つが武士です。治安の悪いこの時代、武士は、貴族たちに用心棒として雇われ始めていました。この説話に出てくる武士の名は平致経(たいらのむねつね)です。ある日、貴族の屋敷を訪ねていた明尊(みょうぞん)という僧が、深夜、お寺に戻ることになります。そこで急遽(きゅうきょ)、致経が警護役として呼ばれます。警護に当たるのは致経と共の者の二人だけ。明尊は、人数の少なさに頼りなさを感じます。

scene 06夜道に現れた男たちは…
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「七八町ばかり行く程に、黒ばみたる物の弓箭(きうぜん)を帯せる、向ひ様(ざま)に歩み来たれば、僧都(そうず)これを見て、恐れて思ふ程に、この者共致経を見て突居(ついゐ)たり」――屋敷を出て、800mほど進むと、弓を持った黒ずくめの男が二人、歩みよってきました。恐れる明尊。しかし、二人は致経を見て平伏(へいふく)します。二人は致経の部下でした。

scene 07統率のとれた武士の動き
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さらに進むと、また道の脇から二人の男が現れ、無言のまま警護に加わります。「一町あまり一町ばかり行(ゆ)きて、二人づ、打副(うちそ)ひければ川原出(い)ではてなるに三十余人(よにん)になりけり」――その後も、100mほど行くごとに二人ずつ加わり、都を離れるころには、警護の武士は30人あまりになっていました。明尊の警護のために、致経はあらかじめ部下を配置していたのです。その用意周到さと統率のとれた動きに明尊は驚きます。「奇異のする者かな」――なんとも不思議なことをする男だ。都に武士が現れ始めたころの話です。

scene 08何気ない日常の出来事のおかしさ
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説話には日常の何気ない出来事を描いた話もあります。この話の舞台は、お寺です。当時、お寺には児(ちご)と呼ばれる、行儀見習いなどのために預けられた子どもがいました。ある日の夕暮れ、一人の児は、僧たちが「ぼた餅を作ろう」と言うのを耳にします。「ぼた餅を食べたい」。けれど、いつまでも起きていては、出来上がりを待っているようで、はしたない。そこで、部屋の隅で寝たふりをしました。すると一人の僧が、「もしもし、目を覚ましなさい」と声をかけてくれます。

scene 09呼ばれるのを待っていた子どもは…
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「うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞ思ふとて、いま一声呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、」――児(ちご)は、うれしく思いつつも、一度で返事をすればいかにも待ちかねていたようだ、もう一度呼ばれてから返事をしようと寝たふりを続けますが…。「や、な起こしたてまつりそ。をさなき人は、寝入りたまひにけり」――いやいや、起こしなさるな。幼い人は眠ってしまわれたのだ、という声がします。

scene 10貴族や庶民の生き生きとした営み
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「困った、もう一度声をかけてほしい」と思いながら、児(ちご)は寝たふりを続けます。そのうちに僧たちは、ぼた餅をおいしそうに食べ始めます。食べたい。でも起きられない。「無期(むご)ののちに『えい』といらへたりければ、」――我慢できなくなった児は、起こされてからだいぶ経っているのに「はい」と返事をしてしまいます。「僧たち笑ふこと限りなし」――児の間の悪い返事に、僧たちはいつまでも笑っていました。説話には、貴族から庶民まで、さまざまな人々が登場し、生き生きとした営みが描き出されています。

10min.ボックス  古文・漢文
説話
今でも親しまれている昔話。「今昔物語集」や「宇治拾遺物語集」。それらは、何話かを紹介し、王朝文学とは違う、庶民が登場し、庶民に親しまれた昔話のルーツをたどる。

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