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オープニング
ないようを読む

(オープニングタイトル)

scene 01中国の古い話から生まれた言葉「故事成語」
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中国に伝わる古い話が元になって生まれた言葉、故事成語。日々の暮らしの中に、深く根付いている言葉です。「矛盾(むじゅん)」。これもその一つです。中国の古い書物に書かれた逸話(いつわ)に由来する故事成語です。今から二千数百年前の中国にあった楚(そ)という国での話です。

scene 02矛盾(1):商人の売り物自慢
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ある商人が、戦さで使う盾(たて)と矛(ほこ)を売っていました。商人は自分の売り物を自慢します。「わが盾の堅きこと、よくとほすものなし。」――私の盾の堅いことといったら、突き通せるものはないほどだ。しかし一方で、商人はこうも言います。「わが矛の利(と)きこと、物においてとほさざるなし。」――私の矛の鋭いことといったら、突き通さないものはないほどだ。

scene 03矛盾(2):合わなかったつじつま
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そこで、ある人が尋ねます。「子(し)の矛をもつて、子の盾をとほさばいかん。」――あなたの矛であなたの盾を突き通したらどうなりますか。何でも突き通す矛と、突き通すことのできないという盾。この問いに商人は答えることができませんでした。この話から、「矛盾」と書いて「むじゅん」と読み、「つじつまが合わない」という意味で使われるようになりました。

scene 04虎の威を借る(1):虎にとらわれた狐
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「虎の威(い)を借る」。中国の歴史書にある逸話から生まれた言葉です。ある時、虎が狐をとらえ、食べようとしました。狐は虎にこう言います。「子(し)、敢(あへ)て我を食(くら)ふこと無かれ。天帝、我をして百獣に長たらしむ。」――私を食べてはなりません。天帝が私をすべての動物の長に任命したのです。「子、我をもって信ならずとなさば、吾(われ)、子がために先行せん。」――もし私が信じられないと言うのなら、あなたの前を歩いて見せましょう。

scene 05虎の威を借る(2):逃げ出した動物たち
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狐は虎に、私が歩くと動物はみな恐れて逃げ出すはずだ、うしろについて確かめてみなさいと言ったのです。すると、狐の言ったとおり、歩いていく狐の前から動物たちは逃げだしました。しかし本当は、狐のうしろにいる虎を恐れてのことでした。この話から、強い者の威光をかさにきて威張ることを、「虎の威を借る」と言うようになりました。

scene 06中国の書物を読むための工夫
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何千年もの歴史を持ち、豊かな文化を育んだ中国。昔から日本は、政治、哲学、文学など、幅広い分野にわたって影響を受けてきました。多くの情報が、書物を通じて日本にもたらされました。こうした文書を読むために、日本人はさまざまな工夫を凝らしました。先ほどの狐の言葉をもとに見てみましょう。

scene 07日本語への読み替え
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まず、一つひとつの漢字を日本語読みにします。「子(し)無(なかれ)敢(あへて)食(くらふこと)我(われを)也」。しかしこのままでは文章になっていません。中国語と日本語では文法が違うからです。そこで、「一」「二」「レ」などの記号を使い、意味が通じるように順番を入れ替えます。するとこうなります。「子(し)敢(あへ)て我(われ)を食(くら)ふこと無(な)かれ」。こうやって日本語に読み替えていく方法を「訓読(くんどく)」といい、送り仮名や読む順番を示す記号などを「訓点(くんてん)」といいます。

scene 08身近になっていった故事成語
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訓点のルーツを伝える資料があります。光の角度を変えてその資料をよく見ると、余白に引っかいたような跡があります。これが、訓点のルーツと考えられています。さまざまな創意工夫を重ねることで、中国語で書かれた文章が読めるようになったのです。さらに江戸時代になると出版技術が発達し、多くの人々が中国の古典に親しめるようになりました。故事成語は、人々にその由来となる話が広がることで、身近な言葉として使われるようになっていったのです。

scene 09杞憂:無意味な心配
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「杞国(きこく)に、人の天地崩墜(ほうつゐ)して身寄る所なきを憂へて寝食を廃する者あり。」――杞(き)という国に、天地が崩れ落ちたらどうしようと、心配で寝ることも食べることもできなくなってしまった人がいました。この話に出てくる国の名前「杞」と、心配するという意味の「憂(うれう)」という字から、故事成語ができました。「杞憂(きゆう)」。あれこれと、無意味な心配をするという意味です。

scene 10蛇足:余計なこと
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蛇の絵を描く競争の逸話。真っ先に描き上げた男が得意になって足まで描き始めます。「吾(われ)よく之(これ)が足を為(な)さん。」――私は足を描くことだってできますよ。ところが、そのあいだに別の男が蛇を描き上げてこう言います。「蛇はもとより足無し。」――蛇にはそもそも足などないだろう。結局、最初の男は勝利を逃してしまいました。こうして生まれたのが、「蛇足」と書いて「だそく」と読む故事成語。余計な事をして台無しにしてしまうという意味です。故事成語には、短い言葉の中に深い洞察がこめられています。

10min.ボックス  古文・漢文
漢文(1)故事成語
中国の歴史や説話を由来とし、日常的な言葉に根付いている故事成語。初めて漢文に触れる生徒を対象に、普段意識しない言葉のルーツに目をむけ、漢文の世界へ誘う。
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