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scene 01ドラマを一人で演じる「落語」
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日本の古典芸能(こてんげいのう)の一つ、落語。落語とは、わかりやすく言うと、演劇(えんげき)やテレビのドラマを一人で演(えん)じてしまうようなものです。今日は、『寿限無(じゅげむ)』というおなじみのおはなしです。…かわいい男の子が生まれ、七日たつのでそろそろ名前を考えようとする八五郎とおかみさん。でも、子どもの名前をつけたことがないので、どんな名前がいいかわかりません。そこで、物知りなお寺の和尚(おしょう)さんに名づけ親になってもらうことにしました。

scene 02寿限無
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さっそく八五郎は和尚(おしょう)さんをたずねます。おめでたい、長生きするようないい名前を考えてもらいたいと言われた和尚さん、「では、経文(きょうもん)の中に『寿限無』というのがあるがどうじゃ」と言いました。「寿限無」とは、「寿(ことぶき)限(かぎ)り無(な)し」、つまり「おめでたいことがずっとつづく。死ぬことがない」という意味です。よろこんだ八五郎が「まだほかにありませんか」と言うと、和尚さんは「五劫(ごこう)のすり切れ」というのがあると言いました。

scene 03五劫のすり切れ
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「天女が三千年に一度、天から下界におりてきて、衣(ころも)で大きな岩をひらりとなでる。三千年に一度またおりてきて、ひらり。三千年に一度、ひらり。そしてこの岩がすりきれてなくなってしまうのを一劫(いっこう)という。五劫だからその5倍。何千、何億(おく)、何兆(ちょう)年とはてしなくつづくところがおめでたい」と和尚(おしょう)さん。「いいね。めでたいね。まだほかにありますか」とよろこぶ八五郎。すると和尚さん、「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)」というのがあると言います。

scene 04海砂利水魚の 水行末、雲来末、風来末…
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「海砂利は海の砂(すな)、水魚は海の魚。とってもとってもとりつくせないというところが、はてしがなくておめでたい」。よろこんだ八五郎に「まだほかにありますか」と聞かれ、「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)。水の行く末(すえ)、雲の行く末、風の行く末。どこまでおっかけてもはてしがないところがおめでたい」。まだほかにあるかと聞かれ、「食う寝(ね)るところに住むところ」。これは人間が生きていく上で必要(ひつような)なもの。まだほかにと聞かれ、「やぶらこうじのぶらこうじ」。

scene 05やぶらこうじのぶらこうじ
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「やぶらこうじという木があってな。春、若葉(わかば)を生じ、夏、花がさき、秋に赤き実をそえて、冬に霜(しも)をもしのぐという、まことにおめでたい木だな」。まだほかにと聞かれ、「昔の中国にパイポという国があった。そこにシューリンガンという王様とグーリンダイというおきさき様がいて、二人のあいだにポンポコピーとポンポコナーというおひめ様が生まれ、みんな長生きをしたとつたえられる。そしてもう一つ。“長く久(ひさ)しい命”と書いて長久命(ちょうきゅうめい)、“長く助ける”と書いて長助などがすきな名前だな」と言いました。

scene 06「おめでたいんだからみんなつけちゃえ」
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すっかり気に入った八五郎、名前を全部紙に書いてもらいます。「寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の 水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」。このなかから一つ気に入った名前をつけなさいと言われた八五郎ですが、「全部おめでたいんだからもったいない。みんなつけちゃえ」ということで、世にも長い名前が生まれました。

scene 07仕草で物語をイメージさせる
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落語は江戸時代の中ごろに始まり、庶民(しょみん)に親しまれてきた話芸(わげい)です。落語家は、声の調子や表情(ひょうじょう)だけで何人もの登場人物を演(えん)じ分けます。また、かんたんな道具と仕草だけで、観客(かんきゃく)に物語をイメージさせます。たとえば、「ざる蕎麦(そば)をすする」、「刀をぬく」、「やきいもを食べる」…。扇子(せんす)や手ぬぐいを道具に見立てた仕草で、本当にざる蕎麦をすすったりやきいもを食べたりしているような場面をイメージさせてくれます。

scene 08近所の子どもにこぶをこしらえて…
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こうして、名前がよかったのか、八五郎の息子はすくすくと育ちました。小学校に上がると元気いっぱい、近所の子どもとけんかして相手に大きなこぶをこしらえたり…。「うわーん、おばちゃん。おばちゃんとこの、寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の 水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助が、あたいの頭ぶってこんな大きなこぶこしらえた」と近所の子。

scene 09「うちの寿限無 寿限無…が」
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「あらまあ、ごめんなさいね。うちの、寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の 水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助が、金ちゃんの頭ぶって大きなこぶこしらえちゃったの。ちょいとお前さん、聞いた? うちの、寿限無 寿限無 五劫のすり切れ……ポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助がね、金ちゃんの頭ぶって大きなこぶこしらえたんですって」。

scene 10あんまり名前が長いから
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「なんだって。うちの、寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の 水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助が、金ぼうの頭ぶって大きなこぶこしらえたって?」。おばあさんも出てきて、「なにかい、うちの孫の、寿限無 寿限無…」と大さわぎ。ところが金ちゃんの頭を見た八五郎、「なんだい、こぶなんかどこにもねえじゃねえか」。すると金ちゃん、「あんまり名前が長いから、こぶが引っこんじゃった」。

おはなしのくにクラシック
落語「じゅげむ」
落語の名作を落語家による実演で紹介。江戸の庶民の暮らしや、一人で何役も演じ分ける表現方法など、楽しむためのポイントを学ぶ。

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